「女の子だったら、不安なキモチになっちゃう時が、必ずあるはず♪
 衛ちゃんも…、やっぱり乙女心なのよねぇ。……うふふっ♪何だか私、安心しちゃった」

咲耶の何ら変わらない、笑顔……。慌てた衛の受け答えは、しどろもどろになる。

「え。いや、そ、そ、そう……だったの!?」
「心配してたのよ?あ、コレは私だけじゃなくて、みーんなよ?
 タタカイの連続に夢中になって、大事なものを忘れたり、なくしてしまうんじゃないかって……」
「もう……、や、やだなぁ……ボク……そんなにダメダメじゃないよぉっ!」
「ウフフッ♪そうよね。
 私…明日、春歌ちゃんに教わろうかな?」
「え…なに?」
「日舞?」
「うーん、でも……春歌ちゃん、今は、賢者……だよ?」
「…………」
「あ、あれ?」

咲耶の愕然とした表情を、衛はこの時、初めて目の当たりにした。
取り乱すことなく、耐えている咲耶の姿に胸が痛んだ。慰めの言葉が思いつかない。

「ー」

集中力は増していた。
一撃を、食らわせたい。訓練終了の条件。
息を整える。
未だに手応えが無いのは、何も千影より上回るところが無いせいなのだろう。そこは、耐えれた。
千影からの斬撃で、浅手を幾つも負うものの、致命傷となる一撃は、食らっていない。
指南通り、前に押すように仕掛け、また防御し、反撃に備えつつ立ち回れる。
小休止したせいか、千影の動きに遅れをとっていないような気がする。
ヒットアンドアウェイ……問題はスタミナか。
息が乱れる程には、苛烈に攻めないのだが、左撃右撃の波状繰り返し……しかし、千影とのS訓練である。
実戦に近いような気がしていた。
ふわりと隙を見せる千影の、虚々実々の誘いにも容易くは乗らなくなった。それ自体が罠だ。
ならば、こちらから仕掛けたほうが、相手の動きを、どう反撃するかを読めそうだった。反撃の隙も見極められないが…。
受けに回った途端、また呪文を駆使されたら……視界が本格的に、緑がかりそうだ。
勇気も増している。
再開早々に、ナントカ・・・ホトラという呪文で、脳内のもやもやとしたものを吸われていた。
千影曰く、攻撃呪文では無いらしい。

カラダにいい呪文もあるんですね!

呪文が、あににとって代わる存在意義……迷っていた。
死のちらつく淵で、回復呪文を呼び覚ませるのか、攻撃呪文を呼び覚ませるのか。
悔しいが、呪文というものを、是が非でも自分のモノにせねば…。



続く