千影の携えた槍の刃も、あにからは遠い。同条件での膠着……では無かった。
あにの鉄の槍は、千影に掴まれている。押されず引かれず、身動きがとれない。一進一退に迷い。
千影の槍を引き寄せられたら……、閃いた無謀な賭け。すり足でにじり寄る。
凝視した。一方的にやられてなるものか。

・・・

あれ…?両手塞がってるのに、どうやって相手の槍を掴むのですか。

・・

もう遅い。ヤバい距離に近付き過ぎた。もう遅い。不動の対手には攻守が鈍る。今回で良く分かりました。しかし、







た。

/転/身/再/起/。兎に角、このまま間合いを詰め、引かれた瞬間を狙って、/鉄/山/靠/か、/残/影/拳/を叩き込むしかないだろう。

「血を流すのが…………怖い……かい?
 ……私達でさえ………………月に一度は、…………それなのに……」

眼を見開いた。そんな…馬鹿なっ。
それを、言うのか。言ってしまうのかよ。

何て事を、囁くんだ!

それを奮起の足しにするには、あに自身への情けなさが混じり過ぎた。ヘビーウェイト。後ろ頭をぶん殴る位、卑怯だ。という思いがあった。
Sが…過ぎるんじゃないか。
だが、そこまで言われたからといって、奮起の試みと勢いを潰させるのか?混乱し、自ら揺らいで、そして?自滅…か。

「……」

馬鹿な。それでも今、貫かなくては越えられそうにない。
何の為の、誰の為の、戦闘訓練なのだ。
混じる情けなさを噛み締めた。
砕けろ、僕よ。
噛み締めて、砕けてしまえ。
掴まれた槍を引き寄せながら、体を反転。左腕からぶつかるように、右足で甲板を蹴り、二度、踏み込んだ。
目の前に千影、さっきと同じ状況。

・・・・
合わせて、動かれた。ちくしょう。

「……なかなか…………いいね」

ヤバい距離だということを忘れた。
右手を掴むように左手を伸ばす。左足で踏み込むと同時に右に振る。腰骨を、支点にした。ふっと気合いを入れて、左に振り返す。

「……!?……今のは、…………いいよ」

じゃあその手を離してくれ。
さも、『体重が……無いんだ…………。』と言わんばかりの手応えの無さ。掴まれているのに、コレは何だかおかしいぞ、弄ばれている…?

「何かの呪文を、僕にやったね?」

どのタイミングでやられた?

「ふふ………気付かれて……しまった…………ようだ……ね。
 防御は……幻、攻撃は……実体。……それを…………」



続く