「れ、練習中なもので、僕…」
*「しかたねえやろうだな。よんでやるよ。

頭脳フル回転。

器用に指(?)笛を吹き鳴らす、さ迷う鎧。ふわふわと漂う…クラゲと磯巾着にも見惑うものが視界に、呼び寄せられた。なにこの触手。

*「こいつだ。
「はぁ…。どうも……」
*「じゃあ おれは はいびにもどるからな。しっかりやれよ。

金属がガチャガチャと触れ合う音が、遠ざかってゆく。
汗が噴き出していた。今の姿を千影に見られていたら、きっと『……激しく…………乱れている…………ね』と冷たく言われそうだ。再び息を吐く。暗闇の中。手触りからして、またもや石柱……。囲まれた行き止まりだった。
神殿地下に、良い風は吹かない。

『焦る必要は…………無いんだ…………』

「ー」

*「ホイミ!

*ホイミスライムはホイミをとなえた! あにの HPがかいふくした!

「だから、今はいいのに…って。言葉が通じてない?」

おまけに、こいつの丸い両目がどこを向いてるのか、わからない。キモカワ。
石柱づたいに、早足で外回り。進んだ先の玄室に、明かるみが。やはり。篝火を確認。壁一面に映る篝火は、揺れている。東側にだけ、ぽっかりと回廊が、暗闇がまた待っている。
刹那、冷たい風が吹き付け、鉄仮面がガンガンと鳴る。まるで、石の雨あられを浴びた!どこから?天狗か!?辺りを警戒。ああ、ホイミスライムが、グニャっと萎びてしまった!これは、吹雪?
蝙蝠のように、頭上から舞い降りてきたのは、小悪魔属【ベビーサタン】。

*「ケケケケッ……。 エモノ……。
「何をするんだ!」

鬱陶しい程に、飛翔と旋回を繰り返す。
直ぐさまホイミスライムの触手を掴む。脱兎!長く向き合うことなく、逃げ出す態勢を…、鉄の槍で、払いの牽制くらいは、しておかないと。
舌打ち。
挑発にも、刺激にもならない程度に。
面倒臭いなあ。

*ベビーサタンは イオナズンをとなえた! しかし MPがたりない!

「な?ああっ……、れ?この…悪戯野郎!!」

狙った。手にしているフォークを、叩き落とす。外れてもいい。
売られた喧嘩を、買う勇気は無い。
それでも、前へ。

「ー」

逃げ切る為に、回廊をも、駆けた。左腕に、ホイミスライムを抱えていた。弾力性と流れ出た体液、そして刺さったままの、氷塊の感触があった。
どうしたら。追撃を警戒しつつ、荒々しく呼び掛けた。

「ホイミ!」




続く