這うような音……と羽音。
明かりも携えず、近付いてきたのは、大蟹属【じごくのハサミ】&殺人蜂属【ハンターフライ】。
…複数。囲まれた。
尚且つ、至近距離までに近付かれたが、壁面と同系色で、保護色に見え……非常に、見づらい蟹。

*「ニイチャン……。メズラシイ イシ モッテルナ……

肩にとまるハンターフライ。近い近い!…針、刺さるって。蟷螂のような匂いがする。背中越しに何か感触が……。

「ど、どうも…イテッ」
*「イイナア……。コレ……

刺された。痛みで全身が硬直したが、急速に満たされるアドレナリン。やる気かコイツ。低く、屈み込んだ。
先の襲撃で溜まった苛々を、悔しさを、今…どうしようもないものを発散したかった。試したい気持ちもあった。あーイテェ。槍を掴む。

*「おい じゅんれいに きたのか? それとも…… べつの もくてきか?

顔を上げた。蟹からの、殺気。戦いは得策ではない。不利。止めた。

「巡礼っス。自分…修行中のモンで、へそマスター…目指してんス」

キャラ崩壊!

*「ほお……。 めずらしい ヤツ だな……? よろいも つけずに
「センパイ方に、挨拶しとこうと思って、えーと…は、配備先でヨロシクっ!……って」

頭脳フル回転。もう…このキャラで進もう。地下神殿は。

「じゃ急ぎますんで、お先っス!」

逃げ出すように階段を下りた。ホイミスライムは、置いてきた。

「ー」

ととのいません。

地下二階。明かり一つも見えないフロアー。何より、壁にもぶち当たらない。真暗闇で、どこを歩いているのか、見当もつかない。

キャンドルを使い切ったナイト。
迷子のゴエモン。
シュート!

出れません。戻れません。同行者が、ホイミスライムからハンターフライに変わってからは、徘徊している【マミー】に、鉄の槍をぶつけたり刺したりで絡まれ、怒られ、グーで殴られたりで、謝ってばかり。

チャラいキャラを演じるのは疲れますね!

苦しい。何も見えない。闇雲ながら、鉄の槍を先端にし、真っ直ぐ進んでいる積もりだったのだが、あれ?このままじゃ、迷子じゃね?

*「イシ……。イラネエヨナ?
「…?」

石畳を地道に、這ってみようと屈んだところで、肩からの声。返事をしなかった。どっか行けよ。

*「イシガ……ジャマデ メダツ。 ヒカリヲ ミズニ ヤミヲ ミトオセ……。

謎々か、それとも光る石が欲しいのか。



続く