…反射的にやってしまった。
右手が痛む。壁から生えている仮面……のようなものを殴りつけていた。

ひ・・き・・か・・え・・せ・・!

やっべ、破損してしまったか?
試しに、申し訳程度に少し引き返すと、壁から声はしなかった。何なんだ……?壊れたのか?
何かの仮面……、どんな仕掛けなんだろうと近寄ってみると、

ひきかえせ!

って言われる。静かな最深部なだけに、喧しい。まぁ言われるままにしたら、トイレに辿り着けないですからね。我慢の限界ですよ。アタマにきた。
殴りつけた仮面から一つ離れた仮面には、ブーツの爪先を食わしてしまっていた。二度目の、破壊行為。ああ、やってしまった。怪物や魔物が騒ぎを聞き付けて寄ってくるかもしれないのに、考えナシだったな。

・・・謝ろう。

「ー」

曲がり角。曲がるなり

ひきかえせ!

「ヤだね!」

ひきかえせ!

「…ごくろーさん」

こんなやり取りで色々なものを紛らわせてました。……が、本当に引き返した方がいいのかも、という気持ちにもなってくる。一応、仮面より低い位地で屈んで通過したり、這ってみたりもしたが、仮面の仕掛け、秀逸。

ひきかえせ!

「……」

進む足取りが、重い。

「ー」

木製のドア。手袋越しに触れた。
遂に、到達した!僕はランシール地方の、へそ愛好者の巡礼地で、











特に何も考えずに、ドアをノック。応答・・・無し。ドア、オープン。
中をちらっと見た。壁際。

ひきかえ・・・

や っ ぱ り な

罠。…というほどでもないビックリ仕掛けだ。でも慌てて入らなくてよかった。蛇口から一回こぼしたので、もうリミット/ブレイクは、できないので。閉めたドアに寄り掛かる。槍を立て掛けながら、ドア部に札のようなものが見えた。アレ?さっきは無かったぞ?


*えいぎょうじかん*

AM9:00~PM5:00

       ****

かろうじて見えた。なあに?これぇ?
そもそも、今、何時かワカリマセン。さっさと済ませよう。



*しばらくそのままでお待ち下さい*



仮面と睨み合いながらの、用足し。やっぱり

ひきかえせ!

って言われたけど、今引き返したら、大変なことになるから、ここの配置は間違っていると思う。

トイレ外の槍が倒れたのか、物音がした。やや右上にぶら下がっている鎖を引き下げた。水洗だ。



続く