クラシック & モダニズム -2ページ目

クロッカス


     恋しくて地に香るるやクロッカス

     山上に登りて眺む春サフラン

     青春を喜び咲かすクロッカス

     晴天の下に彩るクロッカス

     フローラが花に変えたりクロッカス

     この地から離れがたしやクロッカス

     クロッカス細き心を匂わせて

     水の中窓辺に光るクロッカス

     クロッカス後ずさりしつ君を見る

     クロッカス摘まないでねと声聞こゆ


二月の風


     美しき枯木の垣根手でなぞり


     道行て春の霙の静けさよ


     残雪の帽子を乗せた山の峰


     外に出で春の光に目覚めをり


     風光る首に纏わるうれしさよ


     少しずつ風やわらかくなりにけり


     大通り次は小路か春歩く


     見渡しつ春の匂いを感じをり


     ただ歩く二月の風と手をつなぎ


     手袋も脱ぎ捨て歩く春日向



 

嘆きの神・・・

人間の蛮行を悲しむのは
人間だけなのであろうか

諸々の神を世に送り出し
それを受け入れた者達は

神に事の真意を問い続け
贖罪の何たるかを尋ねて

今日もまた祈り続けては
神の悲しみの声を聞いた

天の父なる神よ鎮め賜い
怒り悲しみを越えた時に

事の成行きの真なる意味
を心ある者に伝え賜わん

聞く耳を持たず目を閉じ
見ることをしない者達に

貴方の嘆きの声は届かず
今日もまた過ぎ去るのだ

聴けよ、見よ、神と語り
祈りて神意を聴くがよい

神は泣いている誰よりも
洪水のような涙を流して

神の愛を伝え続けている
神の親の愛の何たるかを

誰が誰に誰を通してか等
気付かれず降り注ぐのだ

報復は報復を生み歴史に
刻まれつつ愛を忘れ去る

愛せない者を愛する事は
人間に課せられた神の愛

悲嘆と絶望に追い込まれ
精神の放浪者の己がいる



立春


     立春の風たおやかに青き空


     暖かな春の入り口陽の光


     如月の言葉の響き和の香り


     春来たし重き心に春来たれ


     薄暗い扉の向こう春来たり


     浅き春淡き想いに何処か似て


     冴返る流れる空の雲淡き


     公園の野良猫や鳩春きざす


     公園の日向のベンチ春めいて


     春が来た軽い散歩で掴みをり


アトリエ・・・


     コトコトとケトルの蓋の音聞こゆ
                次にカタカタ我を呼びをり


     珈琲の香り漂ふアトリエに夢は膨らむキャンバスの中


     我が庵ひとり籠りて創作の合間に眠るそこはアトリエ


     悴んだ手に暖かな息を吹く菫は日向我も日向に


     キャンバスに春の花々咲かせたり
                アトリエの壁蝶も飛びかふ