夜明け・・・何気に目を覚ますと彼が起きていた。

腕枕の心地良さに『にゃあ(笑)』

布団をかけなおそうと彼が『ほら』

ありがと・・・ん?・・・え?

声が出ている!?

二人で顔を見合わせる。

『ほ・・・本当だ・・・・・・・・声が戻ってる』

昨夜・・・寝る間際まで筆談で話していた。

彼の叫び声、泣き声から・・・喋れないのは演技ではなかったと確信できる。

・・・いつもの穏やかな彼の声。

『本当にアナタってば私がいないと駄目なんだから(涙)』



その後・・・彼に聞いた話。

喋れなくなって・・・彼はキヨちゃん(仮名)から声を出せと責められていたらしい。

暫く経って・・・いきなり『山口にでも行って来れば?』と言われたらしい。

自分から別れを告げ約束も守れなかった自分。私を放置し、心配して電話をかけてきた私に『アナタには関係ない』と言い切った母親・・・。

そんな俺に今更どうしろと憤ったらしい・・・。

でも・・・声は出ない。

ジレンマの中・・・私がやってきた。いつもと変わらない顔で。


『山口においで。片道分置いていくから』

・・・彼にそう告げた。