ブリュッセル | suzyのふしぎの国

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「あら?ジャポネ」の著者スージーが 短編小説を連載します。

ブリュッセルの泥棒市



「それは こういう事なんだね。 つまり、ムッシューの盗まれたジャケットがここに売られている。

しかし、店主は 8日前に 誰とも知らぬ人が持ち込んで それを買い取ったという訳だ。」

ポリスは 額に汗をにじませながら まだ息をぜいぜいと吐きながら でっぷりと太ったお腹を突き出して 
まるで裁判官にでもなったような口調で言った。


「ですから 旦那 私が盗んだ訳ではないのですよ」

さっきの居丈高な態度とは打って変わって 店主は困ったという表情を作りながら揉み手して言った。

蚤の市の露店主ともなると 陰で何をやっているか分からない連中との付き合いもあり、

もちろん盗品と知っていながら 引き受ける事もあるだろう。

しかしながら 彼も 一筋縄ではいかない。自分の身を守るすべも心得ている。

「旦那 私もね こちらさんには 気の毒だと思っているんですよ。。。」

などと、しらじらしくポリスには 愛想の良い いかにも人情溢れる良識人を装っている。


勇太郎の方は 怒りが収まらない。

「何言ってやがるんだい! 俺の盗まれたジャケットを 売ってる てめえが怪しい!

旦那あ~ こいつに 吐かせてやってくださいよ! 

いったい 誰が盗んでここにもってきたのか。。。。」

唾を飛ばし、こぶしに力を入れ 肩で息しながら 精一杯勇太郎は訴えた。



コウスケは 今度はそろそろと にじり寄って 成り行きに興味深々である。

マサもスージーも ポリスはきっと 公正な立場から 勇太郎の味方をするだろうと 思っていた。


ところが、

「じゃあ ムッシュー どうしてもこのジャケットが欲しければ 買いなさい」

ポリスは さも なんでもない というような 落ち着いた口調で こう言った


勇太郎も、マサも、スージーも  わが耳を疑った。。。。

「はああ~??! な、なんで。。なんで俺が 自分のジャケット 買わなくちゃいけないんですかあ?」

まったく おかしな話だと 勇太郎は怒りを超えて 情けなくなった。

「ええ~!?? それって 変じゃないですかあ~。。。。}

スージーも 納得いかない。。のだった。




つづく