ブリュッセル大渋滞 No5 | suzyのふしぎの国

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「あら?ジャポネ」の著者スージーが 短編小説を連載します。

ブリュッセル大渋滞 No5



「逃げるんだ! とにかく この場から離れろ!」

モハメッドの言葉に マサもコウスケも 耳を疑った。

「逃げて どうするんだよ~ ナンバープレートから 車の所有者は わかってしまうだろ」

コウスケの言葉に マサもうなずいた。

「今から 引き返して 謝ろう!」

すると、モハメッドは ガンと 言い放った。

「あやまって すむ もんだいじゃないだろう!! 

大変な罰金だぜ! 俺達には 払いきれないぐらいのな。。」



それから 3人は なんとか別の道まで歩き そこからチンチン電車に乗って 青山登龍まで帰った。

夜の営業前 カウンターに座って新聞を読んでいた勇太郎は 3人が血相変えて 飛び込んできた時から

「はは~ん。 何か あるぞ」

と 変な興奮を覚えた。

勇太郎という男は 平穏無事な生活では 飽き足らない。

何か事が起きると ザワザワと血が騒ぎ 妙に愉快になってくる男なのだ。

「なんだ ナンダ! お前ら 何か やってきたな?!」

感が鋭い勇太郎に 隠し事は 到底できない。


マサが 情けない顔をして ぼつぼつと 一部始終を 話して聞かせた。


「この国はな チンチン電車を止めようものなら 莫大な罰金を払わされるんだぞ!」

さすがの勇太郎も しばらくの間 深刻な顔をして 考えた。


すると モハメッドが ボソリ と言った。

「車が 俺達の知らない間に あそこに停められた ってえ事にできないかなあ」


勇太郎の 顔が パアッと輝き いたずら小僧のように ひらめいた。

「そうだ! 盗まれた事にすればいいんだ!」

モハメッドと 勇太郎は 互いの顔を見合わせて うんうん とうなずいた。


「おい! 駐在所に 行くぞ! 

モハメッド お前も一緒に来いよ! お前の方が 口が上手いからなあ」

勇太郎とモハメッドは さっさと連れ立って 近くの駐在所に向かって行った。




マサと コウスケは 唖然として 開いた口がふさがらない とはこの事だと思った。

流石に、勇太郎も モハメッドも 何年も 移民として苦労しただけの事はある。

こういう時の 悪知恵というか 対策というか 

凡人の 考えの及ばぬような 突飛な しかも 有効な 手立てを すぐに打てるとは。。。



「すごいな!  やっぱり ゆうさんは!!」


マサは 勇太郎のような 親分が 大好きだ と思った。



つづく