大昔(かれこれ7~8年は経つでしょうか)に書いて当時のHPにアップした記事です。



スケールの練習というものは 子供にとって いや、大人にとっても 退屈でしょうがないものでしょう。
ピアノを習って 半年、さぁ慣れてきたから スケールでもはじめましょう・・・というのでは急に難しくしかもつまらない練習をさせられるようで 面白くありません。怒りさえわくかもしれません。
そういう事にならないように 習いたての始めの始めから スケールの練習を取り入れて "特別な事"ではなく "当たり前の事"にしてしまいましょう。

まず 始めにやるのは 5指のスケール。(わたくしは ベイビースケールと呼んでいます。)
まず 「ど」の位置をみつける練習をしたら 早速 C Majorから。
右手の1の指を真ん中の「ど」に置いて お隣の鍵盤をお隣の指で、お指がもうなくなってしまうまで進んでいきましょう。
もう6本目のお指がない、とわかったら 逆戻りしていきます。初日から5本の指全てを使ってみて子供たちはご機嫌です。
最初は1オクターブ高い(低い)「ど」から 自分も弾いて見本を示します。簡単にできるようだったらすぐに
「じゃぁ、今度は○○ちゃん ひとりでやってみよう」と言って やらせてみます。
その次は 「どれみふぁそふぁみれど」を歌いながら 指くぐりなしの C Majorのポジションを覚えてしまいます。
すらすら 歌いながら 弾けるようになったら 左手も。左手もできるようになったら両手で。もちろん 両手で弾ける、なんて快挙を成し遂げた子には 惜しみなく賞賛をあびせます。
C Majorが完璧になったら G Major・・・にいかずに すぐに C minorに入ります。
「真ん中のお指は 白い鍵盤を(小さい子だったら "白いみ")を押さえてたね。今度は黒くしてみよう!」
と言って 黒鍵を弾かせます。万が一"黒いみ"のつもりで F♯などを押してしまう子がいても「どうして そんな遠くまで行くの!」などと しからずに E♭に優しく導きます。
どっちが ハッピーで どっちがサッドだった?と聞いて ここでも万が一 Majorがサッドだったなどと言う子がいても叱らずに Majorを弾きながら 「どれみふぁそふぁみれど」を心底ハッピーそうに、minorを弾きながら泣きそうな顔で 「どれみ♭ふぁそふぁみれど」を歌って上げます。これで間違える子がいたらそれは教える側の表現不足でしょう。
最初は ノートや楽譜の余白に ひらがな/カタカナ、その子が読みやすい字で「どれみ♭ふぁそふぁみ♭れど」を書いて上げます。(音符で読むのは 普通のスケールに入った後)
C→D→E→F→G→A→B(H)と順番に進んでいき、すべてのMajor/minorを歌いながら弾けるようになったら 「ベイビー」は卒業。

さて、これから本命の 2オクターブのスケール。(わたくしは 大人のスケールと呼んでいます)
片手ずつ、両手で、コントラリーモーションで、トニックから始まる半音階を片手ずつ。このレヴェルでやる練習は以上です。
順番は 調号なしの C Majorからはじめ、平行調の A minorはちょっと後回しにして次はG Majorには入ります。♯3つのA Majorが終わったところでA minorをはじめます。旋律的短音階をやるかどうかは 生徒の様子を見て決めます。理論に明るい割と学年が上の子は 同時進行です。
わたくしの場合、♯系が 4つ・E Majorまですすんだところで ♭系のFMajorに入ります。
おおまかな順番は
CM・GM・DM・AM・Am・EM・Em・Dm・Cm・Gm(指使いが一緒なので)・FM・Fm・BM・Bm・B♭M・B♭m・E♭M・・・
まぁ、この辺りになると ほとんどの子が拒否反応なしに スケールを弾きこなします。

もちろん最初は片手ずつ。今度は見本は示さずに 楽譜を鉛筆か何かの先で ポイントして上げながら 指使いを生徒たち本人に確かめさせます。必要だったら指番号を言いながら弾かせます。
鍵盤をどうしても見てしまう子がいたら 使っていない楽譜で手元を隠してしまいます。手をみないで弾けたら
「すっご~い!!××君は おてて見なくてもひけるねぇ!」といっておだてます。
ほぼ全調が終わったら 最後の段階に入ります。

今までの2オクターブを 4オクターブに延ばします。(わたくしは ピアニストスケールと呼んでいます)
今までの拍の数え方 8分音符2つで1拍、というのをやめて、16分音符4つを1拍に数えてテンポは上がらなくとも(今までより ずっとゆっくり数えて上げる)テンポ感をあげましょう。
このレヴェルで追加されるのは、半音階の両手、Ⅰのアルペッジオです。
アルペッジオは 最初は 3連符を1拍として「どみそ|どみそ|どみそ・・・・」と4オクターブを4/4で弾きます。すらすらになったら 16分音符4つを1拍として「どみそど|みそどみ|そどみそ・・・」と4オクターブを3/4で弾きます。
1週間に1調、右手・左手・両手・コントラリー(2オクターブ)/半音階の右手・左手・両手/アルペッジオのルート・1st・2ndインバージョンを 右手・左手・両手で弾きます。
余力があれば Ⅴ7のアルペッジオ もっとやりたければ(やらせたければ 減7も)をしてもよいでしょう。さらに余力があれば 3度・6度離れのスケールや オクターブも追加します。

全部ができるようになっても 練習はやめません。
全調終わったら また C Majorに戻って 何度も何度も練習しましょう。
上行のときにクレッシェンド、下行のときにディミニュエンド。その逆。ffで。ppで。

いろいろなダイナミクスでもやります。

mfでよいのでスタッカートもやります。


スケールに終わりはありません。

テクニックの向上を目指しているのではなく、第一の目的は「常識的な指使い」の習得にあります。

均等に粒のそろった音で弾けることも必要不可欠です。