こんにちは。宮下です。井上さんからスクラムについて書けと言われたので、僕が日ごろスクラムについて思っていることを書きたいと思います。偏見に満ちているので、そこは許してください。


 ところで、僕が初めて試合に出たのが、一年生の9月21日、サークルリーグ初戦の対近大ドルフィンズ戦でした。その試合は雨の中の試合で、10-72で負けた試合ですが、井上さんのトライと僕が相手のハンドオフでひっくり返されたことが強く印象に残っています。ちなみに、5番で出ていました。その後、5試合ほどロックとして出ていました。今では信じられないかもしれませんが、当時のラグビー部は慢性的な人数不足で両ロックが僕と沢辺のときや僕と当時すでに引退されていたイチローさんというFBの方ということが多々ありました。

 その後、7試合目の11月30日の和医大戦、いつものようにロックで出る予定だったのですが、当時HOをしておられたいのさんが突然熱で試合に来れなくなり急遽僕が1番をやることになりました。もちろんのこと、スクラムで組み負けるわけですが、当時の和医大の2m近くある3番の方が非常にやさしい方で、僕がスクラムの中でうめき声をあげると、押すのをやめてくださり、事なきを得ました。

 
その年の西医体直前、ご存知の方も多いと思いますが、当時3番をやっていたきむさんをよりフィールドプレーで活躍してもらうため、スクラムの負担を減らすために5番にコンバートし、僕が3番をやることになりました。西医体初戦の京大戦、僕のトイメンは馨ちゃんと同級生の灘ラグ出身で、PRで兵庫選抜にも選ばれたことのある浜井くんでした。今は京大のキャプテンでSHをやってるようですが。僕は初3番ということもあり、その人に見事にやられてしまいました。試合後、浜井君は駿台での同級生であった今村に「阪大の3番なにあれ、プププ。」と言っていたようです。それ以来、今村からは「阪大の3番」と馬鹿にされています。


 自分の話をしましたが、一列未経験者、特にBKの人にとって、スクラムとはよくわからない存在だと思いますし、おそらくやりたくないポジションNo.1がPRだと思います。というわけで、今から、世界のスクラム、日本のスクラム、医学部のスクラムと阪医歯スクラムについて僕の偏見を書いていきます。ちなみに、歴史を知りたい人はWikipediaを見ていただければ詳しく書いています。


◇世界のスクラム
 現在世界最強のスクラムを組む国としては、AllBlacksとFranceでしょう。しかし、この2国のスクラムの方針は大きく違います。低さと速さを徹底的に追求し、がっちりまっすぐに組み合うAllBlacksに対して、もちろん低さ速さもありますが、engage後、1番3番が左右に揺さぶり、相手を崩していくFrance。実際に、試合を見てましょう。
 W杯でオールブラックスとフランスは2度対戦しています。最初に戦った予選ではフランスは1度しかコラプシングの反則を取られていないのに対し、ニュージーランドは3回同じ反則を取られています。コラプシングとは、スクラムを故意に崩す行為をさします。この試合ではオールブラックスの三番、23歳のO・Franksがフランスの一番、32歳のジャン・パティスト・プクスに首を取られ組み込まれていました。つまり、狡猾なフランスにニュージーランドはやられてしまったわけです、
 ちなみに、ラグマガのW杯特集編のベスト15にこのふたりはそれぞれ1番、3番で選ばれています。
 さて、続いては決勝戦。もちろん、NZがこのまま黙ってやられるわけがなく、対策を考えてきました。一方フランスも2番3番によりベテランの選手を入れることでスクラム勝負に出るわけです。
 オールブラックスの考えてきた対策は何か?それはシンプルでした。ただ純粋にヒット勝負に出たのです。相手より低く構え、当たり勝つ。当たり勝てば、フランスのフロントの技や力を封じ込めることができるからです。
 この方針にフランスはスクラムでの反則を繰り返し、前半および後半の前半、NZはスクラムで優位に立ちます。しかし、フランスも試合中にスクラムを改善し、後半の後半ではフランスが優位に立ちます。しかし、NZは結局、崩れることなく、踏みとどまり、8-7で勝つわけです。スクラムの勝利といっていいかもしれません。
 どちらのスクラムがいいか、それは専門家でもわかれると思いますが、この試合では、相手のスクラムを研究し尽くしたAllBlacksの勝利でしょう。このW杯では今まで以上にスクラムの重要性が増したことが確認された大会でした。
 海外のチームでは多くのスクラムに関する理論が提唱されています。一列二列のパックの角度、強度、位置、クラウチの姿勢、ポジショニング、engage後の押しの方向、さらにはフランカーの足の位置にも理論があるそうです。正直言って、そのレベルは読んでも理解できませんでしたし、うちのチームに適用することは難しいでしょう。

◇日本のスクラム
控えめに言って、日本国内の試合をほとんど見てないので、各大学やチームがどのような方針で組んでいるかは全然知りません。日本代表のスクラムの方針が「低く早く」ってことくらいです。(違ってたらすいません。)
 さて、話は変わりますが、みなさんは畠山健介という方をご存知でしょうか?僕が説明するまでもないと思いますが、早稲田大学出身で現在、サントリーでプレーをしている日本を代表するPRです。当時、早稲田大学とライバル関係にあった関東学院大学ラグビー部監督の春口廣をして「他から選手を一人もらえるなら畠山。彼がひとりいるだけでスクラムが安定する。」と言わしめた名PRです。その彼がフランス戦後、このように言ってます。
 「相手の組んでからの、やり取りがすごかった。自分は低さにこだわってきたけど、バルセラも同じくらい低かった。」
 ジャパンは低さとはやさにこだわってきましたが、それは世界では前提になっているみたいです。ジャパンも今後は新たな武器を見つけないと世界との差はますます開いていくと思います。(ありきたりな結論になってしまいましたが、あんまり知らないんですいません。)
 ちなみに、畠山は現ジャパン監督のエディー・ジョーンズ氏から3番から1番への転向を進められ、現在、挑戦中です。彼曰く1番と3番は「東京と大阪ほど違う」そうです。

◇医歯薬リーグにおけるスクラムと阪大医歯のスクラム
 皆さんもご存じのとおり、医歯薬ラグビーではスクラムは高校生ルールです。つまり、1.5m以上は押せないようになっています。ラグビーマガジンなどを読んでいると、高校生は鬼のようなスクラム練習をしています。しかし、医歯薬ラグビーで試合中、スクラムを本気で押してくるチームは全学の試合にも出ている琉球大学を除けば、ありません。ほとんどのチームは全く押す意思がないですし、1.5m全部押し切ってやろうというチームはありません。それは何ででしょうか。僕なりに理由を考えてみました。
①押してもターンオーバーできない。
②通常ルールでは反則となる行為でも高校生ルールでは組み直しにしかならない。
③全体として押す方針がない、個人の判断で押してる。
④体力温存

 ①については、高校ラグビーでも花園一回戦の東福岡との試合くらいでしかターンオーバーが起きません。かなりの実力差がないと、1.5mではボールを奪取できないのです。
 ②は上とかぶります。W杯の日本対フランス戦で日本が取られたスクラム内での反則のうち半分以上が高校生ルールだと組み直しになります。これは何回でもくみ直しになります。京大全学との試合で僕が何度も押されたにもかかわらずスクラムが組み直しになったのは記憶に新しいかもしれません。
 ③は一列は押してるけど、2列は押してない、その逆もありますし、左は押してるけど、右は押してないということがあります。要するに、チームとしての方針がまとまってないということです。
 ④はそうです。

 そういう事実にもかかわらず、みなさんは阪大のスクラムがいつも押されているじゃないかと反論するかもしれません。というわけで、言い訳を書きたいと思います。あくまで言い訳です。ちなみに、押されているのは僕側で浮田君側が押されていることはあまりありません。
 ①浮田君が押しているので相対的に僕が押されて見える。
 ②僕がサボってる
 ③首を取られている
 ④純粋に僕が弱い。

 ①はよくあります。西医体の初戦、2戦目では浮田が圧倒的に相手の3番を完全に圧倒していました。そもそも、スクラムは3番側のほうがプレッシャーが多いのです。
 ②はすいません。
 ③ですが、意外かもしれませんが、阪大のスクラムは入りはほかのチームよりいいことが多いです。試合をみてみてください。相手より早く真ん中を超えていることが多いです。ではなぜ首を取られるのか。それは組んでいる時間が長いからです。1番のほうが首を取りやすいため、組み時間が長くなればなるほど、徐々に首を取られ姿勢を崩されていくのです。ですから、今村君、もう少し早く球を出してほしいです。
 それと、僕はよく相手との首の位置を変えていますが、ここ半年ほどの僕の組み方として、相手の1番ではなく2番側に首を取りに行き、1番と2番のバインドを外すようにしています。これはうまくいけば、相手を割ることができて、相手スクラムのpush力をなくすことができるのですが、失敗すると、相手スクラムは割れない、首は取られるという状況に陥ります。ですから、今後この組み方の精度はあげていきたいと思っています。
 ④もすいません。

 これは今年に入ってから始めたことなんですが、相手ボールのスクラムのときに僕が足を掻いて相手へプレッシャーを、うまくいけばボールの奪取をするようにしています。ただ、これをするためには、足を片方前に出せないといけないため、姿勢が崩れ、片足で支えているため、押す力も弱くなります。今年に入ってからの試合で、相手ボールスクラムだったのに、なぜか球はこっちにでてきて、僕側がやたら押されているということが一試合に1回以上はあると思いますが、それはこれなんです。ですから、ヤンボールなのに球が出てきたら、できるだけ早くスクラムから出してほしいです。上記の理由で姿勢が完全に崩れていることが多いので。

 以上より、僕が思う阪大の今後のスクラムの方向性
 1.エリア、タイム毎の共通認識(押すのかどうか)
 2.スクラムの理屈に対する全体の理解
 3.僕のメンタルと首の強さ

 長々と書いてきました。最後のほうは僕の言い訳集みたいになってしまいました。基本的に偏見の塊のような人間なので、間違っているところとかおかしいところとかあると思います。なにかスクラムについて聞きたいことがあれば、あるいはこのブログでここはおかしいとかあればぜひ聞いてください。わかる範囲であれば喜んで応えたいと思います。

 それでは、失礼します。関西医歯薬で優勝して、みんなで澤田を胴上げしましょう。