昔はよく 無理矢理涙を流していた
その当時の一番得られやすいモチベーションだったのだろう

私はこれだけ悔しいんだと体に思い知らせ
底力を沸き上がらせるために
何度も何度も思い出した
何度も何度も自分を罵った
何度も何度も「もし…だったなら」と

もう過ぎ去ってしまった
もう手に入らないものを
見たくないものを見る痛みによって
私は私を動かしていた

だからだろうか
成し遂げたことは少なからずあるはずなのに
物事に区切りがついたところにあったものは
達成感や 喜びや 満足感ではなく
安堵感だった


ひとつ逃げ仰せた
そう ほっと胸を撫で下ろし
いやまだ他に
思い出して片付けなければならない痛みが
残っているじゃないかと頭を上げる

そういう類の痛みを失った今
腹への力の入れ方が
まだよくわからない

痛くないから元気 というのは
病気じゃないから健康
とは言えないことと同じだろう

何が喜びかわからないわけじゃないはずだ
ただ手にする喜びの足元に
影として常にくっついている
得られないことからの痛みが
それへの恐怖が頭をもたげ
尻込みしているだけなのだろう