◆早春譜



しらうおや子のちんちんのたよりなさ/悠





寒明けの水うごきだす二月尽

ふてふや春のしぐれを濡れて来る

長男はゐづこにありや春の雪

死を賭して蝶逆走す春一番

家々の眠り揺さぶり春一番

ママチャリの春一番を突進す

いかがはしき事も佳きかな春日和

あぜ道のでつけえ野糞春うらら

縄のれんくぐればそこも春日和

春日和なれどどこかに忌中札



◆早春


白魚/しらうお/しらうを
初春
 

しらお/しろお/王余魚
銀魚/白魚網/白魚舟
白魚汲む/白魚火


早春の訪れを告げ
る、姿も味も極め
て繊細な小魚。近
海魚であるが一、
二月頃に川へ上が
るころが旬。和歌
よりも、江戸俳諧
好みな季題である。
素魚(しろうお)は、
読み方も違うが、
ハゼ科の別種なの
で混同のないよう
にしたい。


白魚やさながら動く水の色
来山「きさらぎ」
白魚や目までしら魚目は黒魚
鬼貫「大悟物狂」
藻にすだく白魚や取らば消えぬべき
芭蕉「東日記」
曙や白魚白きこと一寸
芭蕉「野ざらし紀行」
白魚をふるひ寄せたる四つ手かな
其角「続猿蓑」
美しや春は白魚かいわり菜
白雄「白雄句集」
しらうをに有明月のうるみかな
大江丸「俳懺悔」
白魚の小さき顔をもてりけり
原石鼎「花影」
~きごさいより。




◆芭蕉の言葉


俳諧は吟呻の間の楽しみなり。
これを紙に写す時は、反古(紙屑)に同じ。


俳諧はあれやこれやとひねくっているうちが楽しみで、一句成ればあとは反古同然。




白魚で一句どうぞ。