短夜(みじかよ)三夏
【関連季語】
明易
【解説】
短い夏の夜をいう。春分の日から昼の時間が長くなり夜の時間は夏至にいたって、もっとも短くなる。その短さ、はかなさを惜しむ気持ちを重ねて夏の夜を呼んだのが短夜という季語である。
【例句】


短夜や朝日にあまる鶏の声
千代女「真蹟俳句帳」

短夜や来ると寝に行くうき勤め
太祗「太祗句選後篇」

みじか夜や枕にちかき銀屏風
蕪村「蕪村句集」

短夜や夢も現も同じこと
高浜虚子「七百五十句」

短夜の雨ぱらぱらと百合畑
長谷川櫂「天球」
~きごさい~


短夜の夜の間に咲るぼたん哉 蕪村遺稿 夏

短夜の香をなつかしみひと夜茎 高井几董

短夜の溺れて辭海深きこと 中原道夫

短夜や死海が滅びゆく話 高野ムツオ 蟲の王

短夜や枕の下に壇の浦 百合山羽公

短夜や乳ぜり啼く児を須可捨焉乎 竹下しづの女

短夜や梁にかたむく山の月 原 石鼎

短夜の重たき夜具や飛騨泊り 伊藤柏翠

短夜の看とり給ふも縁かな 石橋秀野

短夜の机に並ぶ女かな 射場 秀太郎

短夜や芦間流るゝ蟹の泡 与謝蕪村

短夜の水ひびきゐる駒ヶ岳 飯田龍太

短夜の夢に極彩色の鳥 片山由美子

短夜の渕瀬をなして母子眠る 鈴木修一

短夜のまだ黒き髪いただきます(遺髪) 野澤節子 『八朶集』

短夜を生きて在るごと添寝する 野澤節子 『八朶集』

短夜の雲の帯より驟雨かな 野澤節子 『未明音』

短夜の亀が水中に目をひらく 田川飛旅子 『花文字』




《悠 三句》

短夜の更にみぢかき自粛の夜

短夜の小(ち》さきシャボン玉ひとつ

短夜やなすび畠のねずみ鳴き




語録
芭蕉

耳をもて俳諧を聞くべからず
目をもて俳諧を見るべし。



俳句は観念論抽象性を避け、《言いたい事を》物に返還して、目に見えるように詠め。



短夜で一句どうぞ。