明日は平日ですし……
少し早いですが、お届けさせて頂きます(*-ω人)
 
 
 
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
 
 
 
「最上くん……本当にいいんだね?」
 
 
「はい……社長……。」
 
 
「分かった……それならこの話、先方にも受けると伝えるからな。」
 
 
そう社長から言われたのが今年の秋口頃……。
 
きっとあの頃の私はまだ思い詰めた表情だったと思う……。
 
社長が本気で私を心配して下さっていたと、後にセバス……じゃなかった、ルトさんから聞いた。
 
 
でもいいの。
もう……決めたから……。
 
 
実際に会ってみると、彼はとても地味な人に思えた。
それは仕方ないわよね……。
私も何だかんだで芸歴9年目……。
普段目にする方々はそれはそれは華やかで……。
所謂 "一般人" と呼ばれる初対面な方とこんなにも沢山の時間を共有することなんて最近はもうなかったから……。
 
でもそんな地味な彼が、 "カメレオン女優" なんて異名のついた私の本来の素うどんな姿のキョーコで居させてくれる、貴重な存在になるのにそんなに時間はかからなかった……。
3回目のデートで申し込まれたのは、結婚の二文字……。
でもこの先、一生を考えてみると、きっと間違いないと思うの、この彼となら…………。
 
 
社長から頂いた大切な見合い話。
 
明日、私は彼に返事をするーーー
 
 
 
それでも……
それでもどうしても最後に……
あの人の顔が見たくて……。
 
 
 
私は今、このスクランブル交差点に掲げられた大型ビジョンに交互に映し出される二人の男性の映像を見上げているーーー。
 
 
一人は、さらさらの黒髪に切れ長の黒い瞳がシャープな、芸能界ー抱かれたい男をとうの昔に殿堂入りを果たした男性、敦賀蓮ーーー。
 
もう一人は、輝く金色の髪にエメラルドグリーンの瞳が麗しい、その出生をカミングアウトされ本国での活躍を始めた元俳優敦賀蓮こと久遠ヒズリーーー。
 
 
敦賀さんがずっと専属モデルをされているブランド、アルマンディの最新CMは、そんな二人で一人なあの人の対になった二つのCM。
 
CM公開当初は大きな話題をさらったが、公開から2ヶ月が過ぎた今となってはすっかりと人々の目に馴染み、今日のようなクリスマスイブという特別な夜に至っては、私以外にこのモニターを見上げる者はいない……。
 
 
「はぁ…………。」
 
 
吐く息が白い。
 
あの人と初めて……
それもたった一度だけ結ばれた夜も同じだったーーー。
 
そう。たった一度。
 
それからあの人とは今まで一度たりとも会ってはいない。
 
 
だから、もう……いいの。
 
 
心を決めた私は、家路に着くため踵を返した。
 
その時ーーー
 
 
 
ふわり…………
 
 
 
暖かな何かに包み込まれた。
 
 
「酷いな……君は……。」
 
 
その懐かしい香りと、今でもはっきりと耳に残る優しい低音ボイスに、私の心臓はドクンッと大きく跳ね上がった……。
 
 
「な……にが……ですか……?」
 
 
「俺は、別れたつもりなんてなかったけど?」
 
 
その言葉に一瞬でカッと血が昇る。
 
 
「……なに……を仰っているのか……」
 
 
「そうだろうね?
君は、俺からの一切の連絡を受け取らなかったんだから」
 
 
「だって……それはっ……!」
 
 
「それは?」
 
 
思わず振り仰いでしまったと同時に重なり合ってしまった視線。
 
 
吸い込まれそうなエメラルドグリーンの瞳にハッとなった私は、思いっきり逸らしてしまった……。
 
 
「それは……だって……コーン……」
 
 
「うん、黙っていてごめんね?」
 
 
「…………。」
 
 
「俺は、20歳の誕生日にやっと手に入れた君を、離すつもりなんてさらさらなかったよ?」
 
 
「でも……連絡を下さらなかったのは、敦賀さんの方…………」
 
 
「うん、それは本当にごめん……。
まさか、たまたま行ったアメリカでの撮影で、昔の知り合いに会ってから正体がバレて……トントン拍子に向こうで仕事が舞い込むなんて思ってもみなかったから……」
 
 
「でも……それが、敦賀さんの夢……だったんですよね?社長から少し聞きました……。」
 
 
「そうだね……。
日本でも報道されパニックになってると耳に挟んだ時には既に向こうでの仕事が忙しすぎて、落ち着いたら君にちゃんと話そうと思いながら、思いの外時間がかかってしまったことは本当に申し訳ないと思ってる。
でも……」
 
 
「でも……?」
 
 
「やっと連絡の取れるタイミングが出来たと思ったら、番号から何から全て変えてしまって連絡を閉ざしたのは、君の方だろう……?」
 
 
「それは……」
 
 
「それは?」
 
 
「だって……その時にはもう敦賀さ……コ、コーンには彼女さんが……っ」
 
 
「あぁ……あれね……。
あれは……元カノだよ……。こっちに来る前の……。
向こうで再会したと思ったら、彼女が勝手にマスコミにリークしたんだ……。」
 
 
「じゃあ…………」
 
 
「もちろん何もないよ。」
 
 
「………………。」
 
 
私は、なんて取り返しのつかないことをしてしまったのだろうと、その時初めて後悔の念が押し寄せた……。
 
 
「全く、社長もきちんと最上さんに伝えておいてくれればいいものを……」
 
 
社長……
そうだ、お見合い……
明日、返事……
 
 
「私…………」
 
 
「聞いたよ。お見合い……したんだって?」
 
 
「は…………い…………」
 
 
「本当に酷いな、君は……
 
許さないよ?俺から離れるなんて……」
 
 
「そ……んな…………っ」
 
 
困惑した私が、これ以上思い付かない言い訳を探しながら敦賀さんへと視線を見上げたその時ーーー
 
両頬を大きな掌に包み込まれ、そっと優しく重ねられた唇ーーー
 
ずっと、ずっと求めていた一晩きりだったその感触ーーー
 
 
幸せだった20歳の誕生日を思い出した私は、自然と涙が溢れ出した。
 
 
遊びだったんだと必死に言い聞かせた。
子どもの頃から嘘つきだったんだからと納得した。
彼はとてもとてもお似合いな色白金髪美人さんと幸せになったのだと思い込んだ。
だから私も…………
 
 
「酷い……です……っ」
 
 
ボロボロと道の往来で子どものように泣きじゃくる私を黒のロングコートで包み隠しながら抱き締めてくれるその温もりに、コートの中でより強く感じる懐かしい彼の匂いに、私の中の冷えた心にようやく暖かい何かが巡り始めたような不思議な感覚がした。
 
 
「酷いっ……コーン……」
 
 
「ごめん、キョーコちゃん……」
 
 
すると敦賀さんとコーンを映し出していた大型ビジョンから、12時を報せる鐘が鳴り響いた。
 
行き交う人々が足を止め、その鐘の音に耳を澄ます。
 
私も目線をビジョンへ向け、私の25歳の誕生日が来たことを知る。
 
 
「キョーコ……」
 
 
敦賀さんに呼ばれ目線を戻すと、その手にはクイーンローザ様と同じくらいの大きな薔薇が……。
ただ、その色は……
 
 
「青……?」
 
 
「そう。青い薔薇にはね、不可能とされていた青が開発に成功したことから、神の祝福や奇跡っていう花言葉があるんだ。」
 
 
「奇跡……」
 
 
「誕生日、おめでとう。」
 
 
「あ…りが……っ!?」
 
 
青い薔薇を受け取ろうと伸ばした左手を掴まれたかと思うと、一瞬にしてはめられた薬指のリング……
 
 
「結婚しよう、キョーコ。」
 
 
やっぱり……酷い人……
この人には、私はいつまで経っても敵わない。
 
 
 
でも……あなたの言う奇跡なら、信じたい。
 
 
 
 
 
 
翌朝ーーー
 
 
5年ぶりに訪れたマンションの最上階。
 
 
気怠く覚束ない足取りで抜け出したベッドルーム。
お水をコップに一杯入れて何気なく点けたリビングのテレビに、何故だかつい最近に見た覚えのある景色と、これまた見覚えのある金色の髪が映し出されていることに不思議に思いながら、そのテレビへと近づいてみると……
 
 
『元敦賀蓮こと久遠ヒズリ・女優京子とクリスマス婚!!
イブの路上で堂々プロポーズ!!』
 
 
その文字が読めた瞬間、腹の底から出た大声に、目を擦りながら下一枚の姿で現れた敦賀さん、いやコーン。
 
 
はくはくと口を震わせながら、私が指差す方に目を向けたコーンは……
 
 
「あぁ。」
 
 
とだけ頷いて水を飲みに行ってしまった。
 
 
「まだっ……私たち結婚した訳じゃっ!?」
 
 
と慌てる私の前にヒラリと掲げられた一枚の用紙。
 
 
「するよ?今日、ね?」
 
 
無邪気な可愛い笑顔で言うコーン。
 
 
そのまま役所、事務所、緊急記者会見へと怒濤の一日が一段落した頃、ようやく社長と敦賀さんとで仕組んだことだったと認識した私は、新婚早々別居と言い放ち、愚痴と報告を兼ねた念願のパジャマパーティーをモー子さんに開いてもらってなんとか機嫌を直した私は、敦賀蓮こと久遠ヒズリとの新婚生活を始めることとなった。
 
青い薔薇と、コーンの石という二つの青の奇跡と共にーーー。
 
 
 
 
Fin.

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メリークリスマス&キョーコお誕生日おめでとうヽ(*´∀`)ノ♪
 
そして、苺鈴さんリクエストありがとうございました!(*^^*)
・成立前 ・社長経由でキョーコちゃんにお見合い話(承諾する)
 ・蓮さま撮影などで日本に居らず知らない
 ・さぁどうする? みたいな感じのリクエストでも大丈夫でしょうか?(汗)
と頂いていました♡もちろん大丈夫ですっ!
あ!成立前だけ違っちゃってたΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)でもキョコさんはお付き合いしてないと思ってたので!←言い訳w
また、X'mas&キョコ誕とリクエストとを合体させてもらってしまってすみません( ̄▽ ̄;)
なんとなく今年は切ない感じのキョコ誕が書けたらいいなぁ……と漠然と考えていたところにナイスなリクエストでございました(*゚∀゚人゚∀゚*)♪
 
※リクエストは今年の4月受付のもので、現在は締め切らせて頂いております。
 
 
あと、お話に載らなかった裏設定として……
キョコたんのお見合い相手は実は老舗旅館の御曹司。
常連の社長から話が来たほんとにちゃんとしたお見合い話で、将来的にはキョコさんを女将に……との話も出てはいたものの、
実は御曹司には彼女がいて、でも現女将に反対されていての今回の見合い話。
キョーコの所作は気に入ったものの、やはり女優業との兼業、いつ引退してくれるのかも分からない見合い相手に正直悩んでいた。
結果衝撃のお断りで改めて御曹司の彼女をきちんと見直し、無事に結婚……
 
なんていう細かい妄想が……(笑)
だからお断りも大丈夫ですよー!(*ノω・*)ナンテネ
 
 
みなさん、素敵なクリスマスをお過ごし下さいね(*^o^*)/~
 
 
追記:
後付けでごめんなさい(m´・ω・`)m
おまけを書かせて頂きましたので、よろしければこちらから・・・
ただ、くどい!苦手!と思われた方はお引き返しくださいませ。