蓮は徐に仰向けへと姿勢を変えた。
 
 
「これ……。
 気づいてたんだろう?」
 
 
「なっ///」
 
 
蓮はキョーコの手を握るとそれを……
 
 
「あのっ///」
 
 
ばっと慌てて手を振り払うキョーコ。
 
 
「あ、ごめんなさ……
 えっと!でも、そのっ!!
 研修でも……こういったことがあるという話は……一応……その……ですのでっ///」
 
 
「プッ、ククク」
 
 
「~~!!?///」
 
 
「……可愛いね、キョーコちゃん。」
 
 
「なっ!!///」
 
 
からかわれた!といった様子で、憤慨するキョーコ。
 
 
「ごめんごめん。
 ちょっと心配だったのは本当。
 大丈夫なのかな?って、男性客相手にするの……。」
 
 
「もう///
 いつも言ってるじゃないですか!うちは馴染みのおじいちゃん達ばかりなんですよ?
 それに按摩ばかりなので、服だって脱がないですし、言うなれば肩揉みと肩たたきですよ。」
 
 
「そうだったね……。
 うん、知ってる。」
 
 
「知っててからかうなんて酷いです///
 
 ただでさえ今日は……」
 
 
急に落ち込んだ様子を見せ、俯いたキョーコ。
 
 
「今日?どうかしたの?」
 
 
「いえっ、なんでもっ……」
 
 
「なんでもなくないだろう?
 いつもはお客の話を聞く立場だろうから、俺のときくらい、君の話を聞かせて?」
 
 
優しい蓮の言葉に、キョーコは少し悩んだが口を開いた。
 
 
「今日……不動産会社の人が来て……」
 
 
「え……っ」
 
 
「それで……その……ここの土地を買収するって話を……」
 
 
「その不動産会社の人ってどんな人……っ?」
 
 
「どんな……というと……
 その……
 葉巻をくわえた、とてもガラの悪そうな……」
 
 
「っ!!」
 
 
「……?もしかしてご存知なんですか?」
 
 
「あ……いや……。
 それで?」
 
 
「それで……ここの駅周辺の再開発がどうので、ここを五千万でどうだって……」
 
 
「五千万……?」
 
 
「今月中に結論を出して欲しいって言われまして……
 でも、そんな……急にっ……」
 
 
「そうなんだ……。」
 
 
深刻な話に蓮は言葉を失った……。
 
 
かのようにキョーコには見えただろう。
 
 
だが、実際はーーー
 
 
 
 
「社長、どういうことですか?」
 
 
「おう、なんだ蓮。ノックもせずに……」
 
 
「何だじゃないですよ。
 あのマッサージ店の担当は俺でしょう!?」
 
 
「その担当のお前が何も動いてないからだろう。」
 
 
「うぐっ……」
 
 
蓮はぐうの音も出なかった。
 
蓮の勤める不動産会社は所謂地上げ屋の類。
ただ、キョーコには何も話していない。
 
 
「仕事もせずに女にうつつを抜かすたぁ、お前らしくねぇな。」
 
 
「っ……
 そんなんじゃ……ありませんよ……」
 
 
「お前、鏡見てから言えよ……。
 そんな見たこともねぇ乙女面して否定されてもな……。
 
 ふぅーーー
 なぁに、悪い話じゃねぇだろうよ、五千万ありゃ他の土地でまたいくらでも店も出せる。
 とりあえず、この件は俺が直々に話進めるから、お前はもうあの店から手を引け。」
 
 
「そんなっ!!
 もう少しだけ待ってください!!
 
 俺が……きちんと話を着けますから……。」
 
 
「……ったく、しょうがねぇな。
 
 今月いっぱいだぞ。」
 
 
「ありがとうございます。」
 
 
 
 
カランコロン……
 
 
「えっ!?治一郎さんの定食屋さんも……?」
 
 
「あぁ、参ったべよー。
 ばーさんショックで寝込んじまってな……。」
 
 
「そんな……っ。
 
 あ、敦賀さん!」
 
 
「やぁ……。」
 
 
「…………っ!?
 おんめぇ!!最初に話しに来た地上げ屋だな!?
 おめぇもあのヤ○ザのグルだろう!?」
 
 
「っ!!いや、その……」
 
 
「……敦賀……さんも……?」
 
 
「間違いねーべ。
 ばーさんがイケメンが来たつって喜んでたけんどな、駅周辺の再開発のパンフレット置いてっただろ!
 俺はすれ違っただけだったけど、間違いねーべよ。」
 
 
「そ……んな……」
 
 
キョーコは膝から崩れ落ちた。
 
 
「違うんだ!いや……違わないけど……
 俺は……っ」
 
 
「……て下さい……」
 
 
「え……」
 
 
「帰って……下さい……」
 
 
「キョーコちゃん……」
 
 
「そうだー!帰れー!こんの悪魔めー!!」
 
 
「分かりました……。
 
 キョーコちゃん……また今度……きちんと話しに来るから……。」
 
 
カラン……コロン……
 
 
蓮はキョーコの店を後にしたーーー



 

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過度な期待をして下さった方へ……♡

お付き合い頂けるアメンバーさまはこちらもどうぞ(*´艸`*)(笑)
※本編とは関係ありません。読まなくても続きと繋がります!