密やかな想い番外編~メリークリスマス&ハッピーバースデー(2)~ | ななちのブログ

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このブログは、スキップビート好きの非公式2次小説作成SS中心です。作品については、あくまで個人の趣味で作成しています。
馬車馬のごとく働く社会人ですので、更新スピードは亀ですが、よろしければお読みください☆

―――いいよ。君が立ち止ってしまったら、俺が君を捕まえるために走るから。…だから、安心して俺を好きになって?―――



 本当は、彼に言われるまでもなかった。もう、心は囚われていたから。認めてしまっていた想いは、「言うか」「言わないか」の違いくらいしかなかった。



「…ふふふっ、正直なご回答、ありがとうございます。」

「あっ…でも、あの…。私、本当に誰ともお付き合いはしていないんですっ!!今の私は、まだまだ新人のタレントですしっ!!本当に…恋なんて、そんなものに現を抜かしていちゃダメだからっ!!」

「そうですか…。京子さんは、本当にまじめな方ですね。好感持てちゃうなぁ。」

「あっ…。あの。そ、そうですか?……えへへっ、嬉しいですっ……!!」



 昔から、あまり同性に好かれることってなかったから、面と向かって好意を示されると照れくさい。嬉しくてにやけてしまう顔を抑えることができなかった。



「??…あの?」

「あ、ご、ごめんなさい!!思わずっ!!」



 ニマニマときっとしまりのない顔をしていたと思う私の頭を、「よしよし」と…撫でてくれる、お姉さん。その記者らしくない…というか、不思議な行動に思わず問いかけると、相手は真っ赤になりながら慌てて私の頭上から手をひっこめた。



「はぁ~~~。…京子さん、世の男どもの甘言なんかに惑わされちゃだめですよ?」

「へっ?」

「男はケダモノですから。むやみに笑顔を振りまかないっ!頭からパクッといかれますからね!?」



 「いいですねっ!?」と強い調子で言われて「はいっ!!」と思わず返事をしてしまった。



「…それじゃあ、今は仕事が恋人ってことですね?」

「あ、いえ。仕事は恋人じゃないです。…私を作って行く上で、とっても大事なものだから。」



 役者の仕事を『恋人』と表現するのは相応しくない。私は『私自身』を作るためにこの道を歩んでいるから。…険しい道のりを歩み、時に転び、迷い、立ち止ったその先にある高みを、私は目指して生きて行くから。



「私、この世界に入って、初めて自分で自分を作っていく喜びを知ったんです。…今まで、誰かのために頑張ってきたことはあったけれど、自分自身のために自分を磨くことはなかったから。今、こうして自分を作っていこうとしていることに、誇りを持っています。」



 そして、歩む先の高みの上で。微笑む人を、想う。



「役者の仕事は、私の全てです。……恋人なんかじゃ、ありません。」

「…そうですか。それは失礼しました。」



 仕事を通して『最上キョーコ』を作る私を。必死にもがく私を、たくさんの人が見守ってくれている。全ては、この業界の扉を叩いてから作り出された人間関係。辛いこともあるけれど、居心地のいいこの場所は、全部この仕事が与えてくれたもの。



「…あ、すみません。生意気なことを言って……。」

「いいえ。…今日、この日に京子さんに会えてよかったです。」

「え?」

「明日は、18歳の誕生日なんですってね。おめでとうございます。…また来年、同じ日に18歳最後のあなたに会いたいわ。きっと、今以上に素敵な女性で、女優さんで…タレントさんに、なっているんでしょうね?」



 にっこりと笑うと、女性は椅子から立ち上がった。



「お時間いただきまして、ありがとうございました。有意義な時間だったわ。…よければ、またお会いしましょう?」

「……。はい。」



 そっと差し出された手を握る。



「ふふふっ、来年にはあなたの隣に、素敵な男性がいたりしてね?」

「っ!?それはないですっ!!絶対ないですっ!!私なんて、まだまだなんですからっ!!」



 からかうような口調で言われた言葉に即刻否定した。



「あら?そうですか?」

「はいっ!!そうですっ!!」

「クスクス…じゃあ、そういうことにしておきますね。京子さん。今日はありがとうございました。」

「…はい。こちらこそ、ありがとうございました。」



 色々と思うところはあるけれど…なんだか、私も17歳の自分の最後の仕事がこのインタビューでよかったかな?って思ってしまう。

 それほど、この女性記者さんとお話できたことが嬉しかった。







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