先日書いた症例勉強の答えですが、早速お二人の方からご解答をいただきました。


お一人は国家試験勉強中の学生さんで、見事に正解です。


もうお一人は初期研修2年目がもうすぐ終わる方で、「普通の高齢者」と


お答えいただきました。そのセンス、好きです。私と同じニオイがします。




で、正解のほうですが、残念ながら普通の高齢者ではありませんでした。

(私も、最初は普通の高齢者で片付けようと思っていたのですが)


甲状腺機能亢進症でした。


恥ずかしながら、それまでは「眼球突出」しか覚えていませんでした。


その後、勉強したことを少々。


鑑別診断としては、無痛性甲状腺炎があります。


当初、とにかく甲状腺が疑わしいな、ということでTSH,フリーT3、フリーT4だけを


オーダーしたのですが、後々調べてみるとそれだけでは無痛性甲状腺炎との


鑑別が難しい、ということが判明してしまいました。


ということで、追加として抗TSH受容体抗体をオーダー。これが陽性なのを確認して


やっとバセドウ病だということが確認できました。





症状として有名なのは「眼球突出」ですね。


何かのテキストで半端なく突出している写真を見たことがありますので、


先入観で「眼球突出必発」くらいのイメージを持っていました。


ですが、眼球突出の頻度はそれほど高くなく


(何割かを既に忘れてしまったところに、興味のなさが現れていますが)


喫煙者には比較的頻度の高い所見のようです。


あとは、体重減少、発汗、食欲亢進、イライラ、頻脈などですかね。


血液検査でひっかかる項目としては、総コレステロール低値と、ALP高値です。


ALPに関しては、肝臓由来ではなく、骨由来だったと思います(ALP3ですかね)



で、治療方法としては3種類。アメリカなかではヨード治療がメインになっているようですが、


日本でのファーストチョイスは手軽さからか、抗甲状腺薬の内服からのようです。


あとは、外科的手術もあるようです。



採用したのは比較的手軽な内服治療でした。内服薬には大きく2種類あって


MMIとPTUがあります。どちらも怖い副作用として、無顆粒球症がありますが、


PTUのほうが副作用の確率が少し高いため、MMIのうちメルカゾール内服を開始しました。



一般的にはメルカゾール1日6錠から開始するのですが、フリーT4が5以下のときは


3錠から開始するようです。そのほうが、やはり副作用の確率が低くなる、とのこと。


(これは2006年のガイドラインで確認したものですが)



その他の副作用として肝機能障害、蕁麻疹、悪心・嘔吐などがありますが


いずれも内服開始から3ヶ月以内のかなり早い時期に出現するものがほとんど。


ということで、内服開始後は2週間に1度のペースで白血球分画や肝機能を調べます。


で、1ヶ月に一度のペースで、甲状腺ホルモン関係を調べ、治療効果を確認します。





その後の経過ですが、甲状腺機能亢進症の治療はかなり長期に及ぶため、


内服薬を中止する目処がたたないうちに、転院されてしまいました。