二次予選については、
それぞれの曲紹介の前に、
4人とも演奏した「春と修羅」から。
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二次予選では、
このコンクールのために作曲された「春と修羅」が課題曲となっていて、最も優れた演奏をした者に対し、作曲者本人の審査による「菱沼賞」がおくられる。
「春と修羅」は宮沢賢治の詩がモチーフ。
「自由に、宇宙を感じて」と指示された即興(カデンツァ)の箇所がある。
(即興が苦手な人は、指導教官、師匠に作ってもらうこともある。)
「春と修羅」は架空の曲であったが、映画化が決まったことで、
藤倉大さんが作曲。
「原作の著者恩田陸さんはこの架空の作品の描写を長く詳しく書いており、その表現全てを実際に反映し、なおかつ僕の音楽になっていて、一人一人のピアニストの個性がバッチリ出る曲、と言うものを目指しました。」
とのことです!
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3分11秒ぐらいまでは、
同じ楽譜をもとに弾いていて、
その後から、それぞれのカデンツァ(即興)が始まる。
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高島明石(音大卒・楽器店勤務)の「春と修羅」
約6分
福間洸太朗さんの演奏音源
https://www.youtube.com/watch?v=o6rlg3-6goI
夜の海に打ち寄せる波。
頭上に輝く星。
3分11秒からのカデンツァ(即興)の部分では、
宮沢賢治は波打ち際を歩き続ける。
3分38秒からは、
妹トシの、
「あめゆじゅとてちてけんじゃ」
(雨雪をとってきてちょうだい)
澄み切って美しい声が、繰り返し繰り返し、空の彼方から聞こえてくる。
やがて、声は消えてゆく。
https://www.gentosha.jp/article/14222/
↑「あめゆじゅ・・・」の部分の譜面が載っています。
風間塵の感想
「面白かった。海辺に打ち寄せる波、吹き渡る風、漆黒の宇宙まで見えた。」
アメユジュトテチテケンジャ
驚くべきことに、明石が賢治の詩を取り入れたフレーズまで聞き取っていた。
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マサル・カルロス(優勝候補19歳)の「春と修羅」
音源なし。
本によれば、
「オクターヴでのパッセージと、複雑な和音を駆使した超絶技巧のカデンツァ」
亜夜の感想
「昏(くら)い星々のあいだから射してきた一筋の光。その光のなかに垣間見えた無限の色彩。」
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風間塵(ピアノを持たない少年16歳)の「春と修羅」
約6分
藤田真央さんの演奏音源
https://www.youtube.com/watch?v=ii6eogWjpAg
3分11秒からのカデンツァ(即興)の部分で、
客席が、凍り付いた。
不条理なまでに残虐で、凶暴性を帯びていた。
高島明石の感想
聴いているのがつらい。胸に突き刺さる。
耳障りなトレモロ。執拗な低音部での和音。
甲高い悲鳴、低い地響き、荒れ狂う風。
これまでの塵の演奏とは似ても似つかない、暴力的なカデンツァ。
「修羅」なのだ。
養蜂家の子供だから、自然の驚異を身をもって体験したに違いない。
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栄伝亜夜(かつての天才少女20歳)の「春と修羅」
約6分
河村尚子さんの演奏音源
(Music Premiumのメンバーのみ視聴可能)
https://www.youtube.com/watch?v=i4WgjyyaG44
二次予選の3曲めに組み込んだのですが、なんと!
本番で1曲めと2曲めを弾き終えた時点でも、まだ、カデンツァ(即興)をどうするか決めていなかった!?
いくつか候補は考えて練習してはいたが、
「自由に宇宙を感じて」
という楽譜の指示もあるし、本番の雰囲気で弾くつもりなのでした。
奏(亜夜の友人)の感想
すべてを包みこむような、母なる大地。
青い草原がさあっと広がっていくような。
さっきの、風間塵の「修羅」に対する、返歌。
自然が繰り返す殺戮や暴力に対して、それらを受け止め飲み込んでしまう大地を描いている。
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次は、二次予選のそれぞれの曲紹介です。
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