周りの人間は俺の事を徹底主義者と言う

少し前までは自分でもそうかもしれないと思っていた。

だけど、彼女への想いを自覚してからはそうではなくなった気がする。

幸い、その事に気付いているのは自分だけだ(と信じたい・・・)



今日も彼女との仕事が待っている

2時間ドラマの撮影だ。一応恋愛ドラマと銘打ってあるが

ある事件を解決して、告白して想いが通じて終わる。どちらかというとミステリ系のような気もする。

ありがたい事に主演は俺、相手役には彼女・・・。

『ダーク・ムーン』『BOX-R』と女優としての才能を開花させはじめた中の大抜擢だった。

撮影中でも休憩中でもくるくると変わる表情につい抱き締めたくなる。

その衝動を抑えるのも一苦労だ

犯行に及ばないのは周りに人がいるからだ。

だが・・・今日は待ちのぞん・・・いや、彼女とのキスシーンがある。


「蓮?れ~ん~?」


「なんですか?社さん」


「いや、今日はいつになく考え込んでるな・・・と

 ひょっとして緊張してる?なんてったって今日はキョーコちゃんとのキスシーンだもんな~

 キョーコちゃん初めてなんだろ?キスシーン」


「まぁ・・・そうですね」


「ん?キョーコちゃんのこと?それとも・・・蓮が緊張するわけないよな~?」



社さん・・・瞳をキラキラさせながら俺で遊ぼうとしないでください・・・

つい深い溜息を吐いてしまう



「・・・最上さんのことですよ・・・」


「私がなんですか?おはようございます。敦賀さん、社さん」


「おはよう、キョーコちゃん」


「おはよう・・・どうしたの?顔色が少しわるいよ」


彼女は何時ものように挨拶をしてくるが、どこか元気がないし顔色も悪い

何かあったのか・・・?




「いえ、ただ少し寝不足なだけで・・・」


「寝不足って・・・めずらしいね」


「え、えぇ・・・本を呼んでいたらつい・・・(言えないっ今日のことを考えていたなんて~っ)」



む、何か隠し事をしていますね お嬢さん?



「ふぅ~ん、そうなんだ?(キュラリ)」


「ひっ・・・ほ、本当です。だ、台本を読んでいたんですぅぅぅううっ」


「台本って、今日の?」


「あぅ・・・はい・・・」


「・・・ひょっとして・・・キスするのが・・・嫌だ・・・とか?」


「なっなななななななな、んなにを仰いますか敦賀さんっっ」



あーあ、真っ赤になって・・・

むむむっと目尻に涙を溜めて俺を睨み上げる

そんな表情も可愛いんだよなぁ・・・・・・かなり重症だな・・・


「そうだよね、『できない』なんて言わないよね?」


「も、モチロンでありますぅっ」


「京子ちゃ~ん、メイクメイク~」


「あ・・・はいっ そ、それでは敦賀さん・・・また後で」


「あぁ、また後でね」



「蓮、蓮~!」


「・・・・・・なんですか」


「頼むからその顔やめてくれ!『敦賀 蓮』のイメージがっ!」


「・・・すみません、つい・・・」



どんな顔してたんだ?俺・・・・・・






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