ミュージカル「手紙」
感想 3  (例のごとくオチはありません)

剛志の裁判で 犯行の一部始終が読み上げられる
直貴は中央で 立ったままうなだれて聞いている
だんだん直貴の顔が上がり 目を見開いて
目の前で繰り広げられている光景に釘付けになる
そして ナイフが振り下ろされた時...!
「嘘だ。信じたくない!」というように頭を抱えて屈みこむ直貴。

実際に見たわけでなくても
どれだけ傷ついたことだろう
自分が手をくだしたわけではないけれど
兄と同じ罪を背負ってしまった意識は少なからずあるんじゃないかと思う

だから、怖くて 被害者宅へ謝罪に行けなかったのかと。
ひったくり犯の母親のように 謝って謝って、全面的に犯人を庇う味方になってるのとは違って、剛志と直貴は分身のような関係、運命共同体だったと思うから。

その共同体が引き裂かれて 自分独りで生きていかなければならなくなった
でもそれを自覚できずに まだ「帰るべき兄弟の家」があるかのような幻想を抱いたままの剛志と、その幻想に巻き込まれて負い目を感じる直貴

もうそれぞれの道を一人で歩いて行かなければならないのだと
最後の場面でお互い分かり合えた、と感じられるのが 救い