トランプ政権最大の懸念・・・IT技術流出によって崩れつつある米中の軍事バランス。 | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

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香港を拠点に活動する個人投資家であり、自称「投資戦略予報士」Mr.Gがお伝えする海外投資の生情報。
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昨年の大事件のひとつである、「カルロスゴーン逮捕事件」の背後にも同氏の技術スパイ疑惑の背景を示唆したが、あらゆる分野で中国への先端技術の流出が止まらない。

 

小説的な勝手な妄想では、ゴーン氏が技術スパイであった場合に流出させていた技術は、リチウムイオンバッテリーの製造に関わるものだったのではないか。

軍事用のドローンを動かすにあたって、今のところ高性能なリチウムイオンバッテリーの技術は不可欠だ。

いずれにしても米国の世界における軍事覇権に影響のある何かだろう。

 

それにしても最近の中国のIT、AI技術の進歩には驚かされる。

 

我々が実際に経験できる事例としては、最近ではよく日本でも報道されている数億台の監視カメラが中国中に設置されていることだろう。

 

数年の間に、5億台以上の監視カメラが設置されると言われている。

 

この監視カメラの台数だけでも驚かされるが、社会主義国だからこそ可能な国民のプライバシーを完全に無視した管理体制と、高度な画像分析技術によって、中国人だけでなく、中国に入国する全ての人間の指紋データと顔認証データーがその人間のプロフィールと共に巨大なデータベースに蓄積されており、中国入国と同時に顔認証で認識される人物がどこで何をしているか全てが管理可能なものとなっている。

 

昨年末に米国LAに出張する機会があったが、その時に感じた印象は、なぜか“LAが中国に似てきた”というものであった。

 

要は、アメリカがよく行く中国と似た雰囲気に感じられるという不思議な現象に囚われた訳だが、LAが中国に似てくるということは中国人が多くなったことはともかく、実際にはあり得ないことだ。

 

これは逆に、米国の社会システムをこの20年間パクリ続けた中国の米国化が思った以上に進んでいることを意味するのではないかと思う。

 

以前に、携帯電話とインターネット網が中国で普及した速度の速さについてお話ししたことがあるが、スマホの普及もしかり、WeiboやWechatというSNSの普及速度、社会問題にもなったmobikeなどシェアバイクや、中国版Uberの滴滴出行(DiDi)などシェアリングエコノミーとその決済方法としてAlipayやWechatPayのような電子通貨決済の普及など、管理サイドの国家にとって有益なインフラの普及速度はどの先進国よりも遥かに速い。

 

国家体制の違いといってしまえばそれまでだが、民主主義先進国に蔓延っている、複数の利権や、政権を維持するためのプライバシーの保護という観点の見せかけのモラルが邪魔をして、中国のように急激な社会システムのIT管理化を推進することも、開発途上の技術やシステムをパクってトライアンドエラーで積極的に活用していくことも難しい。

 

その結果、中国の、特にIT技術は想像を超える速度で革新を迎えているが、そのことが米国にとって軍事バランスに致命的な影響を与えうる脅威となってしまった。

 

年明け7日にも、台湾の内政部(内政省)刑事局が、半導体製造に使う特殊な化学品の技術を中国企業に漏洩した営業秘密法違反の疑いで、化学品世界大手のドイツ企業、BASFの台湾法人の技術者ら6人を逮捕したと発表したが、これも単に知財侵害という損害賠償で終わる事件ではなく、おそらく半導体チップを中国で製造する上で非常に重要な技術が漏洩していたことに問題の根本があると思われる。

 

世界一の「製造強国」を目指す中国は、海外からの供給に依存する半導体の国産化を重要課題としているのは間違いない。

 

昨年から関わっている仮想通貨(電子通貨)のマイニングに関しても、中国ではその気になれば中央銀行公認の電子通貨をどの先進国よりも速く取り入れ、人民に普及させ、そのマイニングを政府が行うことも可能だ。

表向きは現行の仮想通貨の取引やICO、マイニングを規制しているが、現実は、マイニングマシンの製造・開発は殆ど中国で行われているし、マイニング自体もその中国のマイニングマシンメーカーが主体で行われている。

 

マイニングマシンに使われる最新のチップは、台湾から輸入されている。

そして、水冷化に必要な、チップの防水コーティング技術は、iphoneなどスマホの防水技術の転用だと聞いている。

急速に普及した中国国内のスマホの市場もさることながら、その製造も殆どが中国で行われており、それに付随する半導体関連の技術流出は計り知れない。

 

ゴーン事件と並んで、ファーウェイ中国の副会長兼CFO孟晩舟(もうばんしゅう)がカナダで逮捕される事件が昨年末に世間を騒がせ、株式市場にも影響を与えたが、これも米国の安全保障に関わる重大な情報漏洩問題が背景にある。

 

 

「カナダ司法省は5日、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]の孟晩舟(メン・ワンツォウ)最高財務責任者(CFO)をバンクーバーで逮捕したと明らかにした。

米国に身柄が引き渡される可能性がある。

関係筋によると、華為の取締役会副会長の1人で、創業者の任正非氏の娘でもある孟氏の逮捕はイランへの米制裁措置への違反に関連しているという。」 出典:ロイター

 

また、今日の日経電子版のニュースでは、「米国が先端技術の国外流出に幅広く網をかける。」という報道が目に入った。

米国は、安全保障を目的とする「国防制限法」に基づき、人工知能(AI)やロボットなど先端技術に関して輸出と投資の両面で規制を大幅に強める見通しとなったようだ。

 

この規制ターゲットは、将来の技術覇権を狙う中国を念頭に置くが、規制の対象国に線引きはなく、米中両国で取引がある日本企業も対象になるとのこと。日本政府は米政府に情報提供を求める方針だ。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39890530Q9A110C1MM8000/?n_cid=NMAIL007

 

米中の貿易戦争という表看板をもった、軍事バランスを左右する「米中ハイテク戦争」の幕開けなのかもしれない。

 

このことが、今後世界の経済に与えるダメージは大きいと言える。

 

米国の規制強化は「国防権限法」の一部である輸出管理改革法と外国投資リスク審査近代化法に基づく。安全保障上の懸念がある米国からの技術流出を投資と輸出の両面から防ぐのが狙いだ。

 

最大の特徴は、実用化には時間がかかるが有望な技術の種も含めて規制する点にある。

技術革新のスピードが速く、現在の規制が追いついていないとの理由からだ。

米商務省はAIなど14分野を例示し、民間からのパブリックコメントを踏まえ、今春にも最終的に決める。

 

念頭にあるのは中国だ。これまでは中国企業や中国系投資ファンドが米国の新興企業に早めに投資して支配権を握ったり、将来を見越して新技術を中国に持ち出したりすることができた。規制強化でこの穴を封じる。

 

輸出規制は日本企業も広く影響を受ける見通しだ。14分野の技術を中国企業などに移転するような輸出には米当局の許可が必要になる。米国の特許を使って中国で製品開発をするようなケースが対象になりかねない。

 

半導体などでは日本企業と米企業などが特許の使用を認め合う「クロスライセンス」が不可欠となっている。ある半導体メーカー幹部は「多くの半導体は米国の特許がないと作れない」と語る。「安全保障上の理由をどこまで広げて解釈されるか分からない」(電機メーカー幹部)との声も多い。部品のサプライチェーンに影響を及ぼす。

 

AIなどは日本企業も、最先端の研究機関が集まる米国で開発を手掛けている。日本の自動車メーカーが米国の研究所で開発したAIを活用し、中国で自動運転車のサービスを始めようとすると「米国発技術の輸出」にあたるとして規制対象となるリスクがある。

 

18年11月にはLIXILが、米国で事業をするイタリア子会社を中国系企業に売却する際に当局の承認を得られなかった。理由は不明だが、同社は米中摩擦が影響したとみる。こうしたケースが増える恐れがある。

 

米政府は必ずしも米国を主な拠点としていなくても、安全保障を理由に外国企業も法執行の対象とみなす。米国を含む複数の国で事業をする日本企業が中国に輸出したり、事業を売却したりする場合は米国の審査・規制対象となる。

 

新たな規制案は民間からの意見を踏まえた上で最終決定される。規制の詳細設計はこれからで、日本政府の関係者は「米政府の運用次第の面がある」と話す。

 

過度な規制は米国への投資を鈍らせる。意見公募ではIT業界から研究開発への国内投資が滞ることや、規制への対応で企業負担が増すことを懸念する声が出た。 (ワシントン=鳳山太成、辻隆史)