ベーシックインカム(BI)も減税もインフレを加速させる危険がある | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

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香港を拠点に活動する個人投資家であり、自称「投資戦略予報士」Mr.Gがお伝えする海外投資の生情報。
ねだるな勝ち取れ、さすれば与えられん!

 

日本政府(日銀)の金融緩和政策は、ゼロ金利やマイナス金利の継続というところにフォーカスされがちだが、現実には市中にお金をジャブジャブとばらまくことによって経済を回復させ、適度なインフレと賃上げに繋げて消費を拡大させ経済を健全な形で成長させていくことにある。

 

なので、方向性としてはベーシックインカムの導入もその延長線上にあると言える。

 

ベーシックインカム(BI)とは、「政府がすべての国民に対して、生活に必要な最低限の収入を無条件に支給する制度」であり、それがもし実現するとすれば国民にとっては魅力的に映ることは間違いないだろう。

 

しかし、そう短絡的な話ではない。

「木を見て森を見ず」というか、それでは木どころか葉っぱしか見ていない。

 

3年前にまだ安倍さんが生きていた頃、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて行われた景気刺激策としての「一律10万円給付(特別定額給付金)」というものがあったが、国民1人に対し10万円を給付するためには12兆8803億円が必要で、そのすべてが国債によってまかなわれた。

 

最近はあまり議論されなくなったMMTだが、未だに「自国通貨建てで国債を発行する限り、政府が財政破綻(デフォルト)することはない」という意見はいまだ根強い。

 

これが正しいのであれば、ベーシックインカムの導入は悪くないのではないか?とも思えるが、インフレが想像以上に世界中で加速してきた今、もういちど冷静になって考えてみると、世界と比べればまだインフレもそんなに進んでおらず、賃金の上昇にも繋がっていないこの日本で、ベーシックインカムを導入したらどうなるかを考えてみたところ、現実的ではないどころか、それを引き金にハイパーインフレを引き起こしかねないことに気がついた。

ベーシックインカムや減税といったバラマキは、結果としてインフレをさらに加速させるからだ。

 

ベーシックインカムのようなバラマキ政策となると、どうしてもその財源の話に終始してしまいがちだが、仮にMMTが成り立つとして、財源問題を無視しても、バラマキ政策がインフレを加速させるという側面からみると、決して打ってはならない悪手であることがわかる。

 

仮に、平均して30万円くらいの給付が毎月あれば生活できるとして、30万円が政府からベーシックインカムとして配布されるとしよう。

 

そうすると、今まで30万円の収入を得るために働いていたひとの多くはその仕事を辞めてしまう。

 

企業側からすると、今までと同じ給与では誰も働いてくれなくなる。

 

ただでさえ、特に低い賃金で働かされる人材は不足しているのに、だれもそのような仕事はしなくなる。

 

それでもAIが全ての仕事をこなしてくれるわけではなので、誰かがその仕事をしなければ経済が回らなくなり、企業はやむなく賃金を上げざるを得なくなる。

 

その為にはまず、提供している商品やサービスの値上げをしなければならなくなる。

 

結果として、今まで30万円で暮らせたひとが、30万円では暮らせなくなり、60万円が必要であれば30万円分の仕事をしなければならなくなる。

 

もし、物価が倍になって賃金が倍になったとしたら、半分の仕事量で生きていけるが、物価が倍になっても賃金は倍にはならない。いいところ、物価上昇の20~30%程度しか増えない。

企業としては、サービスや商品の価格を上げることが先だが、値上げ=利益増となる保障は無く、利益が増えなければ賃上げは難しい。

 

そうなると、ベーシックインカムを増やせば増やすほど、働く人が減り、物価が上がり、ベーシックインカムだけでは生きて行けなくなるという悪循環に陥りかねない。

 

結果、円安も更に進むことになるだろう。

 

過度なインフレ=物価高は、賃金の上昇を伴わない場合には資本主義経済を簡単に破綻させる。

 

その観点からもベーシックインカム的なバラマキもしくは(消費税などの)減税を、平等に全ての国民に対して行うということはそもそもできない。

 

所得制限があるとはいえ、コロナ給付金や、子育て支援金のようなものも、生活保護のレベルを超えるものを永続的に提供するのであれば、同様に低賃金でも真面目に働くひとを駆逐し、インフレを加速させる結果となる。

 

生活インフラを担う「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる医療従事者や、介護士・保育士・宅配配達人・小売店勤務・交通機関の運転手など、暮らしを成り立たせるために必要な人たちの多くは、今まで公的な援助から切り捨てられ、厳しい経済状況で働かざるを得なかった。

 

今や、自衛隊や警察官、消防隊員といった我々の生活の安全を担う公務員もある意味エッセンシャルワーカーと言えるだろう。

 

そういった、エッセンシャルワーカーの給与を公的な資金を導入してでも上げていくことは、バラマキ以前に優先されるようには思われる。

 

政権を維持するための票取りを目的とした、国民全体に対するゴマすり政策ではなく、ピンポイントなエッセンシャルワーカー向け支援策が求められる。

 

そうでなければ、我々の日々の生活を支えるインフラを担っている人材が不足し、電気ガス水道をはじめ、医療、食料、交通などの価格が益々上がることとなる。

 

ガソリン価格高騰に直面して、政府がすぐに補助金を決定しているのは、それだけ危険性が高いからだろう。

 

例えば、以前から私が提唱している、自衛隊の民営化案がいい例かもしれないが、国債の代わりに自衛隊株を発行してそれを日銀が買えば、増税しなくても防衛費を捻出できるのではないだろうか?

 

まあ、MMT的な考えに変わりはないが、特定の国の特定の業種におけるインフラ支援に限定されたMMTは、比較的ハイパーインフレのリスクが低いという説を聞いたことがある。

 

AIの進歩によって、人間は労働から解放され、ベーシックインカムで生きていける夢の世界を思い描いてみたが、世の中はそう甘くはないようだ。

 

まずは国家間の戦争や紛争に生身の人間が兵士として駆り出され、民間人が犠牲になることを、AIに回避してもらう事ができなければ、AIが人間を労働から解放することなど到底無理だろう。

 

むしろ、AIによって生身の人間はより過酷な労働を強いられる時代が訪れるのかもしれない。