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カゼルタ4~春の旅行~

の続き。


とりあえず駐車場に戻ることにした。

海外旅行中、まだ2日目だし、初めての地だし、

ホッコリ落ち着ける場所はない。

落ち着ける場所といったら「車」内だけだ。


車に戻ると時刻は午後3時近く。

そこから壮絶な戦いがはじまった。


私は経験したことないからうまく描写できないのだけど、

相方は車内でシートを倒し、痛みにのたうちまわっている。

助手席に座り、背中をさすったり、たたいたりししながら、

「それ、胃痛というか、胃痙攣とかじゃないと思う」

とささやいた。これは胃弱体質の私の意見。


実は、相方は、20歳のころから「腎結石」で苦しんだ経験ありの人。

ここ7~8年は幸いに無かったのだが・・・。

どうやら、今回の痛みの激しさ、結石っぽい。

でもその確証はない。

「腎結石だったら数時間我慢すればなんとかなる」

と本人は言ってるけど、本当にそうなのかはわからない。


あー、どうしよう。こんな苦しんでたら運転どころじゃないし、

悪い病気かもー。何とかしないと死んじゃうかもー。

私、イタリア語会話を習ってたとはいえ、救急車呼んで病状を医者

に説明できるほどしゃべれないよー。

しかもここはリゾート地だよ、ローマみたいな都会じゃないしなー。


隣で苦しんでいる人がいるというのに、

持ってきた電子辞書で「結石」とか「腎臓」とかの単語を調べ、

焦って一人で会話を練習してる私なのであった。


あと気がかりなのは、幸い救急車を呼ばずに済んだとしても、

私はここ断崖絶壁の上の町ラヴェッロから、カゼルタのホテルまで

運転する自信がないということ。

一応プーリアでは運転経験あるんだけど、こんなジグザグ道路は

無理、無理、無理。しかも車は当然マニュアルだし。

あと下に下りれても、ナポリ界隈の高速道路の怖さといったら!

(東京の首都高に比べたら大したことないらしいけど・・・)


結局、二人で「腎結石に違いない」という結論に達した。

そこで、車から降りて、車脇で二人でピョンピョンピョンピョン。

腎結石、今までの経験では腎臓から膀胱までの細い管で石が

詰まっているのが痛みの原因というのが分かっていた。

だからとにかく石を膀胱に落とすしかないのだ!


ぴょんぴょんぴょんぴょん、ぴょんぴょんぴょんぴょん。


観光地の駐車場で怪しい東洋人が必死の形相で弾んでいる姿、

きっと他の人々を怖がらせたにちがいない。


午後5時過ぎ、相方はかろうじて回復の兆しが出てきた。

なんとか運転できると言い出したのだ。

その後、山を降り、アマルフィを過ぎ、高速に戻り、なんとかカゼルタ

に向かうことができた。


途中、何度高速道路の路肩で休んだことか。

何度、もうダメだ、帰れないと思ったことか。


私が幾度と無く「運転、代わろうか?」と聞いたのだけど、相方は、

私の運転よりも苦しみの中で自分が運転したほうがまだマシ、

と思って最後に気力を振り絞ったらしい。


気が遠くなるくらい時間が経過した後、

やっとホテルに到着。よかったー、バンザイ!


カゼルタ王宮正面


↑カゼルタの王宮の正面方向の道路。


この日、夕飯も食べずに相方はバファリンを飲んで早々に就寝。


私はというと、昨晩と同じくホテル向かいの店でピッツァを買ってきて

夕飯にすることにした。

でもこのピッツァを買うのも決死の覚悟が必要なのだ。

だってホテルの前は尋常じゃない交通量の道路。

ピッツァを買うにはこの道路を横断しなくちゃならないのだ。

私は信号機が無いところを渡るのはすっごく苦手。

ピッツァごときの買物で長時間費やしたのは言うまでもない。


~後日談~

翌日は相方はケロっとしてて、無事春のプーリアを満喫できた。

帰国後あちこち検査したけど、結局悪いとこ無し。

たぶん、前日の山盛りほうれん草のシュウ酸のせいで

結石ができたんだと思う。

朝のベーコンの脂もよくなかったかな。

心残りは、屈指のリゾート地に行ったにもかかわらず、

ほとんど写真が無いこと。ラヴェッロなんて1枚も無い。

でもたぶんこの地を再度訪れることは無いかも。

私にはプーリアの青い海と空のほうが格段に

素晴らしく思えたから~。