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平和公園の中央広場から、
その外れにある芝遊園へ向かって
二人は歩いていた。


軽やかだった佐知の足取りが突然止まった。


「殺してやる。誰にしよう!誰に…。」


先ほどまでの悪意とは、
比べ得べきこともない、
激烈な殺意が佐知の体を貫いた。


「怖い」


思わず呟く。


「どうしたの?」


正史が怪訝そうに佐知の顔を覗き込んだ。

【話してしまいたい】

【でも、信じてくれる筈がない…。】


決心が付かずにいる佐知の背中を正史が押した。


「聞こえるんだろ?心の声」


【!!!!】


「なぜ…?」


驚愕と安堵の入り混じった感情が佐知の目に浮かんだ。


「同じ様な人を知っていたんだ。」

過去形。

佐知の中で何か引っかかるものがあった。

それが何か考えている時間が今はない。


「あの人、人を殺そうとしてる。」


ここ数ヶ月、
この平和公園で
何人もの女性が殺害される事件が起こっている。


その犯人がそこにいる。

佐知がそう感じたのも無理はない。


「分かった。ちょっと待ってて。」


正史が携帯で警察へ通報した。

「…ええ、そうです。殺すって呟きながら歩いてました。…
ええ…」


話の途中で警官が駆け付けた。


「あっ、あの人です。」


正史が警官に指差した。


「ちょっと、君…」


警官が声を掛けるや否や、
男は脱兎の如く逃げ出した。


「こら、待て!」


警官が男を追った。


「行こう」


正史は佐知の手を取り歩き出した。


「えっ、でも…」


「どうして分かったのか聞かれると面倒な事になる。」


「あ、うん」


佐知は釈然としない気もしたが、
引かれる儘、正史の後を着いていった。


平和公園が夕陽に赤く染まっていた。


つづく