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対局を終えて控室に戻った泰葉は歓声に出迎えられてビックリ仰天。

マスコミも大勢がつめかけて泰葉へコメントを求める。

もみくちゃにされながら何とか奥へ戻れたのは30分ほどしてからだった。

【おい!そう言えば感謝の言葉を貰ってないぞ!】

【何よ・・・もう・・・ちょっと静かにしてよ。クタクタなんだから。】

【ふん、瀬戸際でプロ入り出来たくらいで偉そうにすんな。それと会長にちゃんと挨拶しとけよ。】

【えっ?会長?・・・そう言えば・・・あなた見えるの?それに聞こえるの?】

【ああ、どうやらお前が見ているもの、聞いている音、そのままみたいだけどな。ただ・・なんで喋れないんだろ。】

【意味が分かんない・・・。本当に幻聴じゃないの?何なのよあなた。幽霊とか?】

【ば、馬鹿野郎!幽霊と一緒にすんな。おれはちゃんと生きている!・・・実感はあるんだ。】

【・・・その生きている実感って何よ?意味が分かんないわよ。幽霊に取り憑かれている気がすわ。】

【くっ!だから幽霊じゃねぇ!幽霊が取り憑いたのならお前どうして普通にしていられるんだよ。】

【それは・・・】

【まあ、とりあえず、この状況が何なのか解るまで、しばらくはよろしく頼むわ。】

【・・・そんなぁ~・・・やだよ。何処の誰かも分かんないヤツが頭に入ったままなんて・・・。】

【俺だって好き好んでココにいるんじゃねぇよ。こっちも訳がわかんなくて・・・・】

そこへ里見会長が戻って来た。

「やあ・・・晴耕志さん。おめでとう!本当に良かった。連盟念願の女性棋士の誕生だ。私の念願だったんだよ。」

「あ、ありがとうございます。今まで諦めなくて本当に良かったです。会長がずっと励ましてくれたおかげです。心から感謝します。」

泰葉は深々と頭を下げた。

【おい!俺にも感謝しろよ。だいたい負けてた将棋だろうがよ。】

【ちょっと、人と話している時は邪魔しないでよ。私は聖徳太子じゃないんだから混乱しちゃうじゃない。】

【チッ。解ったよ。黙っててやるよ。】

「ん?どうした晴耕志さん。ぼうっとして。」

「あ、すいません。まだ実感が湧かなくて・・・・。」

「そうか、そうか・・・うん、うん。そうかも知れないな。今日は帰ってゆっくり休みなさい。今後の予定はまた後で連絡させるから。」

「あ、はい。ありがとうございます。」

「じゃあね。いや~、本当に良かった、良かった。」

機嫌よく里見会長が出ていく。

【あの人いい人なんだけど、ちょっと抜けてるんだよなぁ。】

【えっ?会長を知っているの?・・・そうよ、どうして将棋を・・・あ、それにあの時本当のプロとか・・】

【ああ、だから・・・そうなんだよ、おれは天才棋士だと云う事は解っているんだ。ただ・・・誰なのかが分からん・・・。】

「ちょっと待って・・・今PCで調べてみるから。」

【ん?何を調べるんだ?】

「だって・・・もしかしたら、今日誰か事故か何かに遭って死んじゃった先生がいるかも知れないじゃない。」

【だから!俺は幽霊じゃねぇ!】

「そんなの分かんないじゃない。とりあえず調べてみれば何か解るかも知れないし・・・。」

そう言いながら泰葉はネットで検索して回った。

しかしそれらしき記事は一つもない。

【だから言ってるじゃねぇか。おれは幽霊じゃねぇって・・・】

「だって、ホントに意味が分かんないんだもん。頭の中に天才棋士だって云う無礼なやつがいるんだもん。」

【ぶ、無礼!おい、それはこっちのセリフだ。夢を叶えてやったのに邪魔者扱いしやがって。それといちいち口に出してしゃべるな。変に思われるぞ。】

「だって・・・【】って書く時ちょっと面倒くさいのよ。」

【あ?なんの話だ?】

「ん?何?何だっけ?ああ、邪魔者扱いね・・・。仕方ないでしょ。私の頭勝手に占領してるんだもん。嫌に決まってるじゃん。偉そうに色々言うなら出てってよ!!!」

【だから・・・はぶてるなって!】

「はぶてとらんもん!」


続く