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「まあ、とりあえずかけなさい。詳しい話はお茶でも頂きながらしましょう。」

会長がソファーへと導く。

事務方の女性がお茶を出してくれた時に一言。

「おめでとうございます。晴耕志先生。すっごく期待していますので、頑張って下さいね。」

「あ、ありがとうございます。ご期待に沿えるように努力します。」

【ほ~!言ったな。嘘つくなよ。絶対努力しろよ!】

【う・・・解っているわよ。ちゃんと努力するわよ。】

頭の中で悪魔と対戦していると会長が本題に入った。

「いきなりだが、本題に入るね。今日来てもらったのは、初対局に付いてのことなんだよ。」

「あ、はい。」

「それで皆といろいろ相談したんだが、初の女性棋士という事で世間の注目も非常に高い。」

「はあ・・・。」

「それで、普通とはちょっと違う形になるが、記念対局という形を取りたいと思うんだ。」

「はあ・・・。」

「それでね。うおっほん!」

「はい。」

「その対局のお相手だが・・・・。」

【この爺さん、前置きが長いんだよなぁ~。さっさと言えよ。】

【ちょっと、会長に対して爺さんって・・・】

「特別に藪元七冠にお願いした。」

「えぇ?・・・はぁ?・・・藪・・・先生・・・ですか?」

「そうだ。どうかね?嫌かね?」

「いえ、いえ、嫌だとかそんな烏滸がましい・・・・ですが・・・私なんかじゃ相手にならない気が・・・。」

【まあ、当然だな。相手どころか、あ?とかだろうな。】

【うっ・・・・】

「まあ、最初にちょっと厳しい思いをさせてしまうかも知れないが、これも将棋界の事を考えて・・・と、思って承知してもらえんかな?」

「え・・・いえ・・・その・・・承知とか・・・私にそんな権利とかは・・・。」

ここでそれまで黙っていた副会長が口を出してきた。

「会長、この子の言う通りですよ。この子に何の権利があるんですか?決まった事だと伝えれば良いだけです。」

【なるほどなー。コイツの差し金か・・・相当お前が棋士になった事が気に食わんみたいだな。】

【えっ?どういう事なの?】

【まあなんだ、元々この副会長のほうが棋士としても一門としても格が上なんだ。しかし人望が無くて会長職を盗られたと思って、いちいち会長に反発するんだよコイツ。】

「まあ、まあ、副会長。晴耕志さんも棋士になったんですから、棋戦の予選とかじゃなく、特別対局の相手をこちらで命令出来るわけじゃ無いですから。ここはお願いする立場だと・・・。」

「会長がそんな甘い事ばかり言うから最近の若手はつけあがるんですよ!」

【おい、お前が止めろ。会長を困らせるな。この人はいい人なんだ。】

【えっ?でも・・・どうやれば止められるのよ?】

【何言ってるんだ。簡単な事じゃないか。藪先生と対局するって言えば良いんだよ。】

【えっ?いや・・・でも・・・藪先生と対局なんて・・・勝てるはず無いじゃない。】

【はぁ?お前、誰だったら勝てると思っているんだ?プロ相手に誰が相手でもお前が勝つ確率なんて同じだ。精々2~3割だろが。】

【うっ・・・・そんなはっきりと言わなくても・・・・グスン・・・】

【ま、待て。泣くな。今は泣いている場合じゃない。早く会長に対局の了承を伝えるんだ。】

「・・・・会長・・・分かりました。よろしくお願い致します。精一杯頑張ります・・・・。」

「そうかね!いや、有り難い・・・。ホントはもう少し対等なお相手とやらしてあげたかったんだけどねぇ・・・・。」

「いえ。大丈夫です。・・・・今の私だと・・・対等なお相手なんて・・・・。」

【そうそう、居ない、居ない。】

【う、煩い!!グスン・・・・】

【あ、だから泣くな。今は泣くな。】

「じゃあ、藪元七冠との記念対局がデビュー戦となるけど・・・しっかり頑張って。私は応援しているからね。」

「はい・・・ありがとうございます。」


続く