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翌日の新聞で昨日の記念対局について、意外にも酷評をしている記事は少なかった。

歴史に残る「待った」での反則負けについて同情的な記事までチラホラあるくらいである。

【へぇ~・・・やっぱり世間は女に優しいな。これって逆の意味で差別だよな。「待った」だぞ!棋士として有り得んだろ。】

「うぐぅ~・・・もう忘れたい・・・・のにぃ・・・。」

【アハハハ・・・それは絶対に無理だな。棋士を続ける以上永遠に語り継がれる反則なんだぞ。】

「・・・・消えて欲しい・・・ホントに・・・てか、いつの間にか、この状況に慣れて来ている自分が怖いわ・・・。」

【それは・・・そうだな。俺もいつの間にか慣れちまった。ま、馬鹿と話しているのも楽しいかな。】

「ばっ・・馬鹿って・・・やっぱり消えて無くなれ!」

【おい、まだ早いぞ。はぶてるのはその日の最後だろ。】

「最後って何よ。意味が分かんない・・・。」

【ん?そうだな・・・何を口走っているんだろ・・・。ところで、次は本当のデビュー戦だ。勉強の仕方を少し変更しよう。】

「えっ?・・・変更って?」

【ああ・・・今までは俺が奨励会時代にやっていた勉強方法だったんだ。ま、アマチュアの勉強ってわけだ。】

「あ、アマチュアって・・・・こんな勉強をずっとやっていたと言うの?」

【はぁ?ふぅ~・・・これだから・・・良いか?天才というのは才能も人一倍あるが、努力も人一倍やるもんなんだ。それくらい常識だろうが。】

「・・・・なんか・・・そうやって良い話にちょっとだけ自慢を入れるのがムカつくんですけど。」

【ん?自慢?何の事か分からんな。事実しか言わんぞ俺は。】

「もう良いわよ。で、どういう勉強方法に変えるの?」

【ああ・・・それはだ、当然今の時代AIを使う勉強という事だ。それくらいはやっていただろ?】

「あ・・・まあ・・・少しは・・・。」

【あっ!こ、コイツ・・・やってなかったな!!】

「ち、違うわよ。やっていたってば!・・・ゲームとか・・・。」

【げ、ゲーム・・・・はぁ~・・・あの将棋うおーずとか言うゲームか?】

「あ・・・うん・・・。」

【はぁ~・・・あれはAIというより将棋好きの対戦ゲームじゃないかい!勉強とは言わんわ!】

「うぅ・・・・じゃあ・・・どういう勉強をすれば良いのよ・・・。」

【ふぅ~・・・あのな・・・。まあ良い。じゃあ・・・言うとおりにやれ。棋譜を使うのは今までと同じだ。】

「あ、うん。はぁ~・・・また、棋譜かぁ・・・。」

【こ、コイツ・・・マジでやる気があるのか?どうもお前の本当の姿がよく分からん。】

「本当の姿って・・・・私の頭に居るんだから・・・それ以外に何があるのよ。」

【・・・う~ん・・・まあそうなんだが・・・。勉強しろ!って言えばちゃんとやるんだけど、やる気の無さがどうしても垣間見える。が、しかし、棋士への思いは本物の様にも思える・・・そこら辺かな。】

「本物の様にも見えるって・・・本気だってば!良い?小学生で長崎から将棋をやるために上京してきて苦節20年、やっと棋士になったのよ!これが本気じゃなくて何が本気なのよ。」

【棋士になれたのは俺のお陰だけどな。・・・それと自分で苦節何年とか言うか普通?ぷぷぷ・・・。】

「な・・・もう良いわよ。虐めは。早くやりかた教えて。今度は絶対勝つんだから!」

【ほう。その負けん気は棋士として必要だ。そういう所はちゃんと持っているんだな。】

「・・・・あのねぇ~、良いから、教えてよ、勉強方法。」

【・・・教えてもらう立場の発言とは思えんけどな・・・まあ良い・・・じゃあ、教えてやる。良いか・・・】

頭の中の悪魔は流石に天才名人らしく、通常では考えられない方法で勉強していた。

それを細かく噛み砕いて説明していく。

泰葉はそれを必死に書き留めて、質問を繰り返しながらやっとの思いでその勉強方法を理解した。

「・・・難しい・・・こんな事・・・やっぱり天才なんだなぁ・・・」

【・・・何を今更。俺は天才だって言い続けていただろうが。】

「ほら!そういう所。どうしていちいち自慢が入るのよ。せっかく人が見直しているのに・・・台無しじゃない。」

【偉そうに・・・良いから、理解したらさっさと始めろ。次も絶対あの副会長は意地の悪い事を企んで来るはずだ。それまでに少しでも実力を上げてそれに対抗出来るように頑張るんだ。】

「うん・・・。解った・・・でもさ・・・おすぎはどうしてそんなに副会頭が嫌いなの?」

【あ?・・・・そう言われると・・・何故なんだ?う~む・・・て、言うか、また、おすぎって呼んだな!】

「あら?はぶてたかしらん?」

【くっ!はぶてとらんわい!】



続く