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ポン太の一番古い記憶はたらいに乗って河を下っているところだ。
そのうちに川岸に打ち上げられて川魚を猫パンチで取ろうとしていた。
しかし、まだまだ小さかったポン太にその腕前は無かった。
ポン太がたらいに乗って河を下っていた訳は、よくは覚えていない。
捨てられてしまったのか、遊んでいて間違って乗ってしまったのか、そこは不明のママである。
お腹が空き過ぎて猫パンチも繰り出せなくなった所に、シズ婆が通りがかった。
「おやまあ・・・小さいの。お腹が空いているのかい?」
ポン太はなんとか返事を返した。
「ニャァ・・・・。」
「おやおや・・・これは本当にお腹が減って死んじゃいそうだわい。ワハハ・・・・。」
笑いながらもシズ婆は家に連れて帰ってポン太にご飯を食べさてくれた。
それからポン太とシズ婆は一緒に暮らし始めた。
シズ婆の家は農家で広い庭と広い部屋がたくさんあった。
だが、住んでいるのはシズ婆一人だった。
その訳を時々シズ婆はお酒に酔ってポン太に言って聞かせたが、ポン太に言葉が通じるわけもなかった。
数年してポン太が大きくなると、シズ婆が突然厳しくなった。
それまではポン太が「ニャァ~」と鳴けばご飯を用意してくれた。
しかし、ある日からシズ婆の特訓が始まったのだ。
裏山に連れて来られたポン太はシズ婆に「野鳥」や「野ネズミ」を捕るように身振り手振りで教え込まれた。
ポン太がサボるとその日はポン太のご飯は半分にされてしまった。
さすがにポン太もその意味に気がついて、シズ婆の特訓を真面目に受けるようになった。
1年もするとポン太は狩りの名手となった。
そこら辺にいる小動物はポン太の餌食になった。
シズ婆はそれを微笑みながら見ていた。
「そうだ、ポン太。強く生きていかないといけないんだよ。私がいなくなったら誰もポン太の世話をしてくれる人はいないんだ。」
シズ婆の言葉はポン太には分からなかったが、とても大事な話をしていることだけは解った。
「ニャァ!」
ポン太は元気よく返事を返した。
「おお・・・解ったのかい?偉いのう~!お~よしよし。」
ポン太はシズ婆のお~よしよしが大好きだった。
ある日いつものように朝を迎え、ポン太は庭で朝の用を足してソラを見上げた。
その日のソラは「ハロー」が太陽にまとわりついていた。
綺麗だなぁ~とポン太は見とれてしばらく時間を忘れていた。
はっと気がついて家の中を見渡してみたが、いつもの元気なシズ婆の声が聞こえない。
いつもの「ポン太ぁ、ご飯じゃぞぉ」が聞こえないのだ。
どうしたのかとポン太はシズ婆の部屋へとテクテク歩いて向かった。
部屋に入るとシズ婆はまだ寝たままだ。
枕元へ立ってシズ婆を起こすポン太だったが、シズ婆はもう目を覚まさなかった。
ポン太はシズ婆に何が起こったのか理解した。
そう、いつも狩りをした獲物の最後の姿と同じだったのだ。
「ニャァ・・・・ニャァ・・・・。」
ポン太はシズ婆のそばに居てやれなかった事を心から後悔した。
たった一人でお空へと旅立たせてしまった。
ポン太の命の恩人だったのに・・・・。
次の日に雨が降るのは解っていた。
ハローが出ると次の日は雨が降るのだ。
でもポン太は動けなかった。
丸々2日、ポン太はシズ婆の側を離れることが出来なかった。
3日目の朝、天気が良くなり窓から日が射すと、シズ婆がポン太に何か言ったような気がした。
「ニャァ・・・・。」
(ポン太、強く生きなくちゃいけないんだよ。)
そうだ、ポン太はシズ婆から生きる術を教わったのだ。
生きなくてはいけないのだ。
ポン太は近所の人々に家にむかった。
アチコチでポン太は鳴き声を振りまいた。
人々はシズ婆とポン太が暮らしていることは知っていた、
そのポン太が騒いでいる。
何かあったに違いないと人々がシズ婆の家へと向かった。
それを見たポン太はその場を後にした。
シズ婆と過ごした故郷はもう無いのだ。
続く
(日曜日 短期連載)
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★★★★ ★★★ ★ ★★★★ ★★★★
ポン太の一番古い記憶はたらいに乗って河を下っているところだ。
そのうちに川岸に打ち上げられて川魚を猫パンチで取ろうとしていた。
しかし、まだまだ小さかったポン太にその腕前は無かった。
ポン太がたらいに乗って河を下っていた訳は、よくは覚えていない。
捨てられてしまったのか、遊んでいて間違って乗ってしまったのか、そこは不明のママである。
お腹が空き過ぎて猫パンチも繰り出せなくなった所に、シズ婆が通りがかった。
「おやまあ・・・小さいの。お腹が空いているのかい?」
ポン太はなんとか返事を返した。
「ニャァ・・・・。」
「おやおや・・・これは本当にお腹が減って死んじゃいそうだわい。ワハハ・・・・。」
笑いながらもシズ婆は家に連れて帰ってポン太にご飯を食べさてくれた。
それからポン太とシズ婆は一緒に暮らし始めた。
シズ婆の家は農家で広い庭と広い部屋がたくさんあった。
だが、住んでいるのはシズ婆一人だった。
その訳を時々シズ婆はお酒に酔ってポン太に言って聞かせたが、ポン太に言葉が通じるわけもなかった。
数年してポン太が大きくなると、シズ婆が突然厳しくなった。
それまではポン太が「ニャァ~」と鳴けばご飯を用意してくれた。
しかし、ある日からシズ婆の特訓が始まったのだ。
裏山に連れて来られたポン太はシズ婆に「野鳥」や「野ネズミ」を捕るように身振り手振りで教え込まれた。
ポン太がサボるとその日はポン太のご飯は半分にされてしまった。
さすがにポン太もその意味に気がついて、シズ婆の特訓を真面目に受けるようになった。
1年もするとポン太は狩りの名手となった。
そこら辺にいる小動物はポン太の餌食になった。
シズ婆はそれを微笑みながら見ていた。
「そうだ、ポン太。強く生きていかないといけないんだよ。私がいなくなったら誰もポン太の世話をしてくれる人はいないんだ。」
シズ婆の言葉はポン太には分からなかったが、とても大事な話をしていることだけは解った。
「ニャァ!」
ポン太は元気よく返事を返した。
「おお・・・解ったのかい?偉いのう~!お~よしよし。」
ポン太はシズ婆のお~よしよしが大好きだった。
ある日いつものように朝を迎え、ポン太は庭で朝の用を足してソラを見上げた。
その日のソラは「ハロー」が太陽にまとわりついていた。
綺麗だなぁ~とポン太は見とれてしばらく時間を忘れていた。
はっと気がついて家の中を見渡してみたが、いつもの元気なシズ婆の声が聞こえない。
いつもの「ポン太ぁ、ご飯じゃぞぉ」が聞こえないのだ。
どうしたのかとポン太はシズ婆の部屋へとテクテク歩いて向かった。
部屋に入るとシズ婆はまだ寝たままだ。
枕元へ立ってシズ婆を起こすポン太だったが、シズ婆はもう目を覚まさなかった。
ポン太はシズ婆に何が起こったのか理解した。
そう、いつも狩りをした獲物の最後の姿と同じだったのだ。
「ニャァ・・・・ニャァ・・・・。」
ポン太はシズ婆のそばに居てやれなかった事を心から後悔した。
たった一人でお空へと旅立たせてしまった。
ポン太の命の恩人だったのに・・・・。
次の日に雨が降るのは解っていた。
ハローが出ると次の日は雨が降るのだ。
でもポン太は動けなかった。
丸々2日、ポン太はシズ婆の側を離れることが出来なかった。
3日目の朝、天気が良くなり窓から日が射すと、シズ婆がポン太に何か言ったような気がした。
「ニャァ・・・・。」
(ポン太、強く生きなくちゃいけないんだよ。)
そうだ、ポン太はシズ婆から生きる術を教わったのだ。
生きなくてはいけないのだ。
ポン太は近所の人々に家にむかった。
アチコチでポン太は鳴き声を振りまいた。
人々はシズ婆とポン太が暮らしていることは知っていた、
そのポン太が騒いでいる。
何かあったに違いないと人々がシズ婆の家へと向かった。
それを見たポン太はその場を後にした。
シズ婆と過ごした故郷はもう無いのだ。
続く
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