年の瀬ショート前編 | 妄想最終処分場

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(うーん、どうしようかなぁ…、ビジネスホテルも一杯だし)

キョーコは困っていた。
年の瀬も差し迫る大晦日。奏江の所でお泊まり年越しの予定だったのだが、急に仕事が入りキャンセルとなったのだ。

(代役とはいえ1月スタートのドラマだもの。番宣にもちょうどいいものね)

体調不良のゲストの代打に急遽ラブミー部に依頼がきたのだ。奏江がちょうどこれから始まるドラマに出演しているため、今回の依頼は奏江が受けることになったのだ。しかも仕事は年越しを跨いだ生番組。

「楽しみにしてたのに…な…」

下宿先のだるまや夫妻には奏江のところに泊まることを前もって伝えていたし、ちょうど夫婦で年越し旅行を計画していたため、キョーコは自分も不在だし是非楽しんできてと背中を押したのだ。
それはもう張り切って、奏江と二人で過ごす年の瀬のため、おせちの仕込みまでするほどだったのだけど。

(私が一人で家にいることがバレたら、大将とおかみさんに気を使わせちゃう…)

事務所も愛を大切にする社長の『年の瀬は家族との時間を大切にすべし』をモットーに緊急の対応のみで基本的には社員全て休み。
仕事に逃げようにも、ラブミー部への仕事もなく、基本は電話での緊急対応のみであった。

一度親友と年末を過ごすと満面の笑みで報告したキョーコはポッカリ空いた予定に途方にくれていた。

(どうにかして時間を潰さなきゃ。ネカフェでもカラオケでもどこでもいいや)
諦めの境地に達し、キョーコは今年最後のご挨拶にタレント部の事務室に向かった。

※※※

「キョーコちゃん、どーしたの?」
椹さんに挨拶すべく廊下を歩いていると、知っている声にキョーコは足を止めた。

「社さん、お疲れさまです」

振り返り、ペコリと頭を下げてキョーコは頭を下げた。


(社さん一人かぁ)

振り返ってみていつも一緒にいる先輩の姿がなく、キョーコはなぜだかほっと息をついた。

「椹さんのところにご挨拶に行くところです。社さん、今年はいろいろとお世話になりました。今日はお一人ですか?」

「蓮はいま社内で仕事中なんだ。合間で事務所によるとこなんだけど…。キョーコちゃんには仕事納めの挨拶?」

当然のような仕事に関する雑談をかわす二人で、キョーコは思わず身構えたことを苦笑いしていた。

(そうよね、売れっ子だか敦賀さんだって仕事よね)

ワイドショーではハワイなどリゾート地に正月に遊びに行く芸能人の姿を放送しているイメージがあるキョーコはいかに自分がこの業界のことを一般人と同様のイメージしか持ってないかを認識していた。

「社さんはお正月休みとかあるんですか?」

(芸能人はともかく、マネージャーさんは一般人よね?実家に帰ったりしないのかしら?)

純粋な疑問からキョーコは自然と社に問いかけた。

「今年はね、蓮も正月特番の生放送の仕事がひとつしかなくてゆったりなんだ。その仕事だって一人で行けるから休んでこいって…。久しぶりに一般人と同じ三が日休みをもらうことになってね」

「そうですか。社さんもたまにはしっかり休んでくださいね!」

「キョーコはちゃんは…」
当然の流れで社は聞き返していたが、はたとキョーコの過去を思い起こし言葉を飲み込んだ。
社長のことだから緊急以外休みになること、キョーコが帰るべき実家は恐らくないだろうこと、などなど。
「…キョーコちゃんはお休みなの?」

「……」

(そうだった。今夜どうするか決めてなかった…)

キョーコの沈黙に社が地雷を踏んだかと慌てる様子にキョーコのほうが先に気がついた。

「いえ、私もオフなんですが、年越しをモー子さんと過ごすはずが残念ながら仕事でキャンセルになりまして」

ありのまま、本当のことを話してしまっていたが、キョーコは本当のことだしやましいことはないと別段気にはしなかった。

「じゃあさ、ラブミー部の仕事は?」

「いまのところないんですが、一応緊急に供え電話対応の予定なんです」

キョーコの言葉を聞いた社は、何か思い付いたようにはっとし、キョーコに向き直った。

「ならいっこ依頼だしていい?受けてくれるだけで百点あげるからさ!」

「私で対応できることならお受けします」

(一人で行く当てなくすごすなら仕事のほうがいいわ)

なぜだか嬉しそうな社の笑顔にひっかかりを感じつつキョーコは社の依頼内容を確認する前に返事をしていた。

(さみしいって思うくらいなら忙しい方が・・・)

社の依頼は殆ど担当する先輩俳優に関することであることをキョーコは珍しく失念していた。


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…………

むりくりケータイでアップしてみました。
やっぱり打つのが遅い!

しかも先が容易に読める内容だし!

あんまりすっきりした落ちには繋がりませんが一応今年最後のアップになります!