ACT222妄想 【後編】 | 妄想最終処分場

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お久しぶり・・・の続き妄想です。

3/20発売の本誌、ACT215の続き妄想です。

本誌未読・単行本派のかたはバックプリーズ!!





えっと・・・今回はいつも本誌感想を拝読に伺う2~3人の作家様以外の方の感想・続き妄想はこれが書きあがるまで拝読を我慢しております。

ネタ被り・展開被りのプレッシャーがハンパないです!!

それでも久々に続き妄想書けるかも~な感じなので、どこかで似たような展開のお話があったとしてもご容赦くださいませ。&先方にはまったくいわれのない偶然の産物であることを認識していただき、私にはいくらでも石を投げていただいて構いませんが、他の作家様に失礼のないようにお願いいたします。


・・・なんとか本誌発売前に間に合った・・・?


前編はこちら→ ACT222妄想【前編】

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ACT222妄想 【後編】





春先とはいえ真夜中の外気は冷たい。

その中を走る肌は、すり抜ける空気で冷えていく。


そこに居たくなくて逃げる様に走ったキョーコがたどり着いた先は公園だった。

広くはないが木々を擁し、都会だからこそ緑を求めるかのように植物が多いそこは、時間帯のせいもあってひっそりと静まり返っている。息を切らせたまま入り口に立ったキョーコは茫然と街灯に照らされた公園を見ていた。


生い茂る緑は建物を視界から遮断してくれる。人工の光でうっすらと明るい夜空を見上げなければ、そこが大都会だということを忘れさせてくれる。木々の重なりが、どこか故郷のあの森を思わせた。


「・・・・・・変わってないじゃない・・・」


尚に言われたことは、図星だった。

あの森を思わせる場所にたどり着いた自分。

辛くて、辛くてたまらなくて自然に住まう妖精たちに慰められながら涙を零した幼い日々が思い出された。


「・・・・・・変れて・・・ないじゃない・・・」


尚に裏切られ復讐を誓い飛び込んだ世界で、新しい自分を育てていけると思ったのに。


キョーコは芝や樹木から少し離れたブランコに腰を下ろした。そこからぼんやりと風にざわめく木々を見つめていると、人工の池から引かれた水路があるらしく小さな水音が耳に入った。

がまぐちを握りしめていた手をそっと開くと、右手の拇指球が目に入る。

痕跡程度に残った黒いインクにキョーコの表情が崩れた。


(・・・朝見た時と、こんなに違う気持ちで見るなんて・・・)


自分は不幸だと憐れんだことは一度もない

これまでだって一人ぼっちで生きてきた訳じゃないし

今だって大好きだと思える人がたくさん居る

今の私は子供の頃より・・・・


そう思いながら目に映った手のひらの痕跡は、キョーコの心を明るく弾ませてくれた。


でも、今は――


「・・・敦賀さんには・・・見られたくないな」


頼りたい気持ちが無いわけじゃない

縋りたい気持ちもないわけじゃない

でも、そんなことをして困らせたくない


この気持ちは一生胸の内に留めるから

ただ演技者の後輩として同じ道を歩みたい


「・・・コーン・・・」


パチリと開いたがまぐちを逆さにすると手のひらに碧い石が転がり落ちた。


「・・・・・・1人でだって働いて、学校にも行って生活できるの」


ぽつりと、キョーコの口からは言い訳じみた主張が零れる。


「・・・大将や女将さんや、モー子さんや天宮さんやマリアちゃんや、私によくしてくれる人がいっぱいいるの」


「・・・目標になる様な・・・・・・・尊敬できる先輩もいるの」


「・・・コーンを握りしめて泣いてた頃よりずっと大人になったの」


「・・・あの人が私の事を気にかけないなんて知ってるの」


「・・・悲しくなんかないの。ただちょっと、進歩してない自分に落ち込んだだけ・・・」


一度開いた口元から、ポロポロと漏れ出た言葉たちは手元の石に降り注ぐ。


「・・・だから、大丈夫・・・」


ギュッと手の内に石を握りしめ、キョーコは祈るように拳に額を寄せた。


「・・・大丈夫・・・大丈夫・・・私は大丈夫・・・」


コーンに縋りながら、キョーコは以前と同じように自分を落ち着けようとする。


(前にもこうやってたっけ・・・)


尊敬する先輩にも効力を発揮してくれた魔法の石。

事務所の階段に座り込んで―――



『・・・大丈夫・・・大丈夫・・・私は大丈夫・・・もう大丈夫・・・全然大丈夫』



あの時、吸い取ってもらったのは―――――――



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」







「・・・・・・全然、大丈夫じゃない」


コーンを握りしめたまま止まってしまったキョーコの耳に、聞き覚えのある声が飛び込んできた。




********



日付を跨いでしばらく、店じまいの飲食店からフラフラとおぼつかない足取りで帰路につく人間で都会の夜はこの時刻なのにほどほど人がいる。

蓮は人目を気にする余裕もなく、車で何度か通った道を足早に歩いていた。それでもアルコールを楽しんだ人間は、薄暗さも相俟って街中を歩く長身の美丈夫を特段気に掛ける様子もない。


こんな夜中に馬鹿げてるとは思うがとにかく身体が動いてしまった。

明かりのついたキョーコの自室を伺えれば安心なのか、それとももう眠ってしまって灯りの落ちた窓を見れれば安心なのか。それすらも頭になかった。


(何をどうすれば安心できるかなんて・・・)


分かりもしないのに―――


足だけが見知った角を曲がり、暖簾が下げられただるまやの入口に蓮を運んだ。

入口のドアのガラス越しは薄ぼんやりとした灯りが見て取れて、片付けか翌日の仕込みなのか中に人がいることを伺わせた。


「・・・・・・」


ここまで来て、蓮は躊躇いから動けなかった。

店の中には人のいる気配があるが、こんな夜中に閉店後の店を訪ねるなんて非常識にも程がある。ましてや店の夫婦にはグレートフルパーティで面識もあり、一体何用かと不審がられることだろう。


(・・・ここで、少しでも声が聞ければ)


キョーコの慕うご夫婦と明るく交わす会話の声色でも聞ければ少しは安心できる。

そう思い至り、店先で耳をそばだてた。


しかし、そんな蓮の耳に飛び込んだのは期待した物ではなかった。




「だったらなんだって言うの!?」


「・・・!?」


耳に飛び込んできたのは叫びだった。

聞き間違うはずもない少女の声だが、苛立ちを含み激しい感情を纏っている。


(最上さん!?こんな夜中に一体・・・っ)


声が聞こえた方向に蓮は思わず駆け出した。

そして嫌な予感が突き抜ける。

いつもこんな風に怒りを顕わにしたキョーコの声が向かう先は――


脳裏に浮かんだ人物の姿に思わず舌打しそうになるが、それは目に飛び込んできた金髪の男の後ろ姿と、更なるキョーコの怒鳴り声で呑みこむこととなった。


「私が泣こうがヘコもうが放っておけばいいじゃない!アンタには何にも関係ないっ!」

「・・・っ!でも・・・っ!」


(な――・・・)


思わず物陰に身を隠した蓮は、連想した人物がその場にいることに動揺を隠せなかった。


激しく言い争う2人の会話はまるでいつぞやを彷彿とさせるように割って入る隙間が無い。あの時のように偶然を装って通りかかれるような状況でもない。

蓮はただ拳を握りしめたまま、2人の会話を伺うしかなかった。


「なんなのよ!泣きに行くのがそんなに悪い事なの!?仮にそうだとしてなんでアンタがいる場所で泣かなきゃいけないの!?なんなのよ!アンタは私の何のつもりなのよ!」

「なにって・・・」


ただ燃え上がるような感情を顕わにするキョーコの様子が、ただ復讐を誓う相手と相対しているからだけではないことは見て取れる。


「私があの人の事で泣くのを嘲笑いに来たの!?私が惨めな様がそんなに愉快!?こんな時間に相当の暇人ねっ!!最っ低っ!!」


(・・・やっぱり―――っ!!!)


キョーコの口から飛び出た言葉で、自分が危惧していたことが現実となったことを知る。

一見怒りを含んだキョーコの喚き声は、ともすれば泣いているかのように痛々しい。

握りしめたままだった拳に更に力が入り、爪が手のひらに食い込むがそんな痛みでは足りない気がした。


また何かを言い合う声が聞こえ、その後アスファルトを蹴る足音が耳に入る。その足音は1人分で、その後小さく悪態をつく声が聞こえた。

走り去ったのはキョーコだと分かった蓮は、そのまま身を翻した。





(――どこだっ!?)


真っ直ぐキョーコの背を追った訳ではないため、蓮はあたりを見回しながらだるまやの裏路地から通じる道路を駆ける。いくらリーチの差はあれど、人影を探しながら走るのではロスが大きい。

足の速いキョーコが通りを曲がっていたのならば見つけるのは難しかった。近くを闇雲に探し回ってみたが、それらしき影を見つけることができない。


「最上さん・・・っ」


痛々しいキョーコの叫び声が耳から離れない。


辛さを押し殺して、それを怒りにすり替えたような声だった。

尚との会話から、幼い頃のように一人で泣ける場所を求めて飛び出したのだろう。母親の事で一人で泣いていた幼い頃のキョーコの様子が目に浮かぶ。あの時、偶然出会った少女はいつもああして1人で泣いていたんだろう。

自然に囲まれて、森の妖精に慰めてもらえる様な、そんなところで―――


(もしかして・・・)


蓮は闇雲に駆け回っていた足を止めた。

成長しても思わず行動した時は、習慣や癖が出るもの。以前見かけたある場所が思い浮かび、蓮は記憶を頼りに歩を進めた。


幼い日に過ごした森を彷彿とさせる場所。

以前キョーコを送った時に、植えてある草木の種類が子供の頃過ごした場所に似ていると彼女が窓の外を眺めて零したことがあった。


きっと、そこにいる―――


記憶と一致する道をたどる足が、自然とまた走り出した。

人工物の建物の森を抜け、頬を撫でる風に草木の香りが交ざる。果てが無いように感じたアスファルトの足元に切れ目が見え、土と芝が目に入る。目指した公園の入り口まで走り、蓮は静かなそこで視線を泳がせた。

街灯が少なく、黒々と繁る草木が風に葉をこすり合わせてざわめいている。

入口から求める姿は見えないが、根拠もなく確信を持った蓮が公園に足を踏み入れ土に変わった地面がじゃりっと音を立てた。


(あの頃と同じなら・・・きっと木のそばか、小川のそばか・・・)


そよぐ程度の風はビル風なのか、時折強く吹き付けてその度に木々のざわめきが大きくなる。車のクラクションや電車の音も響いているが、公園の植物に遮断されているせいか人工的な音は遠くで響いているかのようだった。

風に揺れる葉の音の他にキィ・・・と金属音も耳に入る。公園の遊具も風で揺れているのだろう。より自然に近いところと薄暗い茂みに目を凝らす蓮の耳はその音を聞き流していたが、不規則に吹き付ける強風とは一致せず、繰り返される金属音にふと視線を茂みから逸らした。


(・・・いた)


金属音の元をたどった視線が探していた姿を捉えた。

ブランコに腰掛け小さくその身を揺らしているキョーコは、自分の手元に視線を落としている。


「も――」

「・・・敦賀さんには・・・見られたくないな」


呼びかけようとした蓮の声は、耳に飛び込んできたキョーコの呟きによって止まってしまった。


こんな夜中に、こんな場所で、キョーコに会いに行く理由すら定まらずにいた癖に、胸騒ぎに追い立てられてここに来てしまった。

事実、母親のあの発言を目にしただろう彼女が平静な状態ではないことを知ることができたが、だからと言ってここで何ができるのだろう?

一人で辛い思いをしていないか

心配で

一人にさせたくなくて


この思いに偽りはないが、それをキョーコが求めているとは限らない。

先ほどの言葉が本心なら、律義なキョーコはきっと偶然を装って現れた自分に即座に後輩の仮面を被ってしまうだろう。


(どうしたら・・・)


幼馴染の追及に思わず泣き場所を探しに飛び出したことを吐露していたが、目の前のキョーコはその言葉通りに悲しみを人知れず表に出すことをしているわけじゃない。

先ほどまでの感情だってそうだ。辛さや悲しみを怒りにすり替えて・・・

そして今は痛みに耐える様に身を固くしている。


自分を見つめる蓮の存在に気付かないキョーコは、手のひらに何かを取り出した。それは過去、涙が減るようにと手渡した碧い石。


「・・・コーン・・・」

弱々しく響いた石への呼びかけに、凍り付いていた蓮の足は一歩を踏み出した。

悲しみを吸い取ってくれるとキョーコ自身が語ったあの石。それをまだ頼りにしていることに感じてしまった少しの喜びを押し殺す。


(・・・あれを手にして、ここにいるということは)


やっぱり、心は泣きだしたいほど辛いのだろう


吹き抜ける風が木の葉を揺らし、石に向かって何かを呟くキョーコの声をかき消していく。同時に、蓮が地面を踏みしめる音もキョーコの耳に届くことはなかった。蓮はそっと、背後からキョーコに近づいた。

石に祈りをささげる様に背を丸めたキョーコの後ろ姿は、とても小さく見えた。


「・・・・・・悲しくなんかないの。ただちょっと、進歩してない自分に落ち込んだだけ・・・・・・だから、大丈夫・・・」


あと少し、手を伸ばせば触れられる位置まで近づくと、零していた言葉が音となって蓮の耳にも届く。

自分に言い聞かせる様なキョーコの声は、頼りなく痛々しい。


「・・・大丈夫・・・大丈夫・・・私は大丈夫・・・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・全然、大丈夫じゃない」


零れた蓮の本音に、びくりとキョーコの肩が跳ねた。


「な・・・っ、つ、つ・・・る・・・」


声だけで自分を認識してくれている事実に少し心が浮かれてしまうが、今はそこに喜びを見出している場合じゃない。

後ろを振り返る前に、キョーコの手が慌てて目元を拭うように動く。それを目にした蓮は思わずその手ごと目隠しをするように背後からキョーコの目元を覆った。


(先輩敦賀蓮にするように、取り繕って欲しいわけじゃない)


「・・・キョーコちゃん」


視界を塞ぎ、呼びかける。

南国で一緒に過ごしたキョーコなら、それだけで相手が誰なのかを悟ってくれるだろう。


「・・・こ、・・・コーン・・・?」


「・・・うん」


「・・・ど・・・ど、して・・・」


「俺の事、呼んだだろう?」


目隠しされたキョーコは戸惑ったように身を固くしていた。


「・・・辛い時は、泣いていいんだよ」


キョーコの目隠しをした左手はそのままに、蓮は冷えた心と体を温めたくて右手でキョーコの腰元を捉えるとそのまま腕の中に囲い込んだ。


「・・・つらく、なんか・・・」

「悲しみを吸い取ってくれる石は頼ってくれるのに、俺は頼ってくれないの?」

「・・・・そ・・・ん、な・・・・」


蓮の体温で緩むかのように、言葉の虚勢とは裏腹にキョーコの身体から緊張が抜けてゆく。


「・・・見られたくなければ、見ないから」


蓮の掌越しにあったキョーコの拳がすとんと下がり、握っていた碧い石が膝の上に転がった。


「・・・・・・泣いて」


直に触れたキョーコの瞼が熱い。





「・・・・・・う・・・――――っ・・・!!!」


その熱は雫となって蓮の掌と滑らかな頬を濡らし、子供のように泣きじゃくる声はその身を抱きしめる男と二人を包む緑が覆い隠した。



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えっと・・・蛇足的にごにょごにょ。

蓮さん、実はてんさんの猛反対にあって今回はズラで地毛は金髪のままで、コーンスタイルで登場!とか、

後日談でグアムに戻る時に髪が傷むからあの短時間にカラーチェンジしなくてよかったでしょ?と言われて「そうですね」とてんさんに頭が上がらなくなるとか

泣いても良いよと慰めてる合間に、「今いろんな人に支えられてて一人じゃないよ」みたいなことを言われたキョコさんが、留守録に入ってる蓮さんの『声が聞きたくて・・・』に喜んじゃったりとか、いろんな妄想がうまくまとまらずとっちらかってしまったのでここで終わりとしました。

妙な部分で終わりで申し訳ありません~~!


だって、コーンの前なら素直に泣ける、泣いていい!ってところが私の妄想だったので、その後に余計なチャチャを入れることができず・・・・

うううっ、精進します~~~