「あなただけに意地悪ー元ラブミー部員達からの鉄槌17ー」



「紅子・・・・・・・・・・・・忘れないで。例え遠く離れてしまっても、僕が愛しているのは紅子だけ。生涯君だけを愛すると誓うよ」


すでに湯を使い、浴衣に着替えた紅子に、同じく衣服を整えたダグラスが、最後の愛を囁く。

この、今生の別れを迎える瞬間でさえも、燃えるような熱い目で。狂おしく愛に餓えた瞳で。



今すぐにでも去らなくては、帰国の船に乗り遅れてしまう。
しかし、この国に来てから溺れるように愛した女から離れることが辛かった。


湯上りの肌を匂おわせ、ーー・裸身を晒し男に抱かれていたとき以上のーー極上の色香を漂わせる、紅子から目が離せない男。



そんな男に寂しげな微笑みをみせたあと、紅子は奥の間へと向った。


その表情とは裏腹なしっかりとした優雅な足取りで。


そして。


最後に背を伸ばした美しい立ち姿で少し振り返ると艶やかに微笑み、その姿を永遠にダグラスの目から隠し去ったのだった。







丘の上から遠ざかる船が見えた。

彼の国へと旅立つ船が。

ホロホロと流れ落ちる涙で滲む視界にも構わず、それを見つめ続ける紅子。





やがて、船は見えなくなり。


紅子は目を閉じて呟いた。



「さよなら、愛しかった貴方」



「貴方との今生は今終わりました」












丘を降りながら、幼い頃母が歌ってくれた子守り歌をくちづさむ。


新しく生まれ変わった自分をあやすように。


今生は幸せに生きられますように、と。




先ほどの寂しげな微笑みでも、いつもの妖艶な笑みでもない・・・・・・

無邪気で、美しい笑みをたたえながら。

紅子の口元からは、子守唄が流れ続けた。






その輝く瞳から、美しい宝石のような涙を落としながら。



そしてその最後の一滴が頬をすべり落ちた瞬間。

画面が変化した。




すべり落ちたその宝石はボトルから注がれる白ワインとなり、グラスの中に注がれた。

そして、女がそれを飲み干す瞬間、それは血のような赤へと姿を変えた。



艶やかな姿で微笑みながらグラスに口をつけた女は一瞬瞳を揺らしたが

次の瞬間には、今まで以上に美しい微笑を浮かべていた。







fin




シーンとなった場内のあちらこちらで啜り泣く声が聞こえる。

そして、エンドロールが流れ終えた頃、場内で拍手の渦が巻き起こった。

関係者席で観ていた業界関係者達も涙ぐみがら、必死に拍手を送っている。



蓮は与えられた座席で只々スクリーンを眺めていた。
場内の照明が灯された後も、ずっと。

「蓮・・・・・・」

社から差し出されたハンカチを見て、自分が泣いていたのだとわかった。


続く



あと1~2話で終わり・・・たい!終われればいいな!



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