『sweet time 前編』
「ああ、今年も始まったな、アレが」
「ああ。蓮とブリッジとジンと真田くんと田中さんは確実にトラック単位だし。今年はジャンクもじゃないか?」
「うーん。施設に送るだけなら大した手間じゃないが、中身の確認と、贈り先の確保がなぁ」
「まぁ、食べ物だし、気を遣うよな」
「「今年はバイト何人必要だろうなぁ」」
タレント兼女優の“京子”、こと、最上キョーコは、本日久し振りとなるラブミー部の仕事していた。
これまた久し振りとなるど派手なユニフォームに身を包み、俳優セクションで書類整理をしていたところ、バレンタインという一大イベントの際、芸能人とその事務所に送るチョコや贈り物が喜ばれる「ギフト」ではないというスタッフの会話が耳に入ってきた。
ファンがどんなに一生懸命作った手作りチョコでも、信用できない人間から渡されたものを食べてもらえるわけがないし、どんなに高価なものを贈っても、人気芸能人ともなると様々な契約に縛られ身に着けてもらえることは少ない。
芸能人といってもランクは様々で、自分の好きな「ブランド品がほしい」と、それこそホステスかホストの様にファンに強請るツワモノもいる。また、ファンを大事にしていると公言している者は「ぬいぐるみ」など高価でなく可愛いものを受け取り喜んで見せないといけないので、一部屋犠牲にしてぬいぐるみ部屋を作って「喜んでいます」アピールしていたりもする。
ただ、ぬいぐるみや花などを受け取るにしても、隠しカメラや盗聴器のチェックは外せないので、どちらにしろ事務所のスタッフの手を煩わせる。
───うわぁ、なんか大変そう。そういえばラブミー部でも敦賀さんへのチョコの確認作業を手伝ったことがあったものね。LMEは大手だけあって他にも人気の俳優さんやタレントさんが大勢いるし、全部でトラック何台分になるのかしら。
器用にも、書類整理の仕事を手際よくこなしながら、キョーコは事務所が処理せねばならないバレンタインのチョコやギフトの量を予想し、げんなりしていた。
「もらった奴らもいくつかは自分で引き取るだろうけど、そんなのしれてるしなぁ」
「ああ、人気商売とはいえ、自分じゃチョコを食べない蓮とかになんて贈るだけ無駄だっていうのに」
「そうそう。こっちの手間が増えるだけで、本人の手にも渡らなきゃ、口にも入んないっていうのに、毎年この騒ぎだもんなぁ」
「ああ、ブランド品とかをもらっても、身につけるもんは契約の関係で使えないもんがほとんどだしな。送ってくるファンの子たちも、俺たちの労力もなんか報われねぇよな」
───なるほど。
そうよねぇ。
私も毎年感謝チョコを配っていたけれど。
そんなに迷惑になっているなら、会社関係はやめたほうがいいかしら。
そうよねぇ、みんながみんなほぼ同じ日にプレゼントしてくるんだものねぇ。
ファンからだけじゃなく、仕事仲間にまでもらってたら、幾ら大食いの人でも処理しきれないわよね。
うん、決めた!今年はモー子さんや雨宮さん、マリアちゃんに、大将と女将さんにだけにして、あとはやめておこう!
こうしてキョーコは、今年のバレンタインはプライベートの関係だけにしておこうと、心に決めたのだった。
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
「モー子さん、雨宮さん、コレ・・・・・・チョコなんだけど、二人にはいつもお世話になってるから作ってみたの。よかったら食べてもらえる?」
バレンタインデーにはロケが入っていて会えそうにないからと、本日2月10日にテレテレと可愛らしく頬を染めたキョーコからのチョコレートを受け取った2人は、このあとにチョコを貰うハズの某先輩俳優の緩みまくるであろう顔を思い浮かべた。
「「あ、ありがと(うございます)」」
「モー子さん雨宮さんの分は、ブラックチョコとオリーブオイルで作ったサイズ小さめのガトウショコラにしてみたの。ちょうどお茶の時間だし、今食べる?それに合う紅茶も見つけたから持ってきたのよ?」
「ありがと、いただくわ」「私も」
ラブミー部の部室でキョーコが用意したガトウショコラを前に、お互いの近況報告をしたあと、奏江は特になんの意図もなく、キョーコに尋ねてみた。
「あんた、ロケで12日からいないんでしょ?今年のチョコは今日明日で配り終えられるの?」
昨年のキョーコがかなりの数の「お礼チョコ」を用意していたことを知っていたが故の質問だったが、奏江は聞いたことを直ぐさま後悔させられることとなった。
「ああ、あとは大将と女将さんだけだから大丈夫よ。マリアちゃんには今朝渡したし!」
「え?昨日までにほとんど配り終えたってこと?」
「ううん、配ってない。今年はね、モー子さんと、雨宮さんとマリアちゃん、それに大将と女将さんだけにしたから」
「え?・・・・・・共演者とか、会社の人とかは?」
「用意してないわよ?」
聞くのが怖い気がするが一応聞いてみる奏江。
「・・・・つ、敦賀・・・・・・さん・・・・・には?」
「してないわよ?チョコの用意なんて」
ここで奏江と千織の二人は自分達がいかにマズい状況に追い込まれているかを悟ってしまった。
あの男が貰えないチョコを、あろうことか自分達は貰い、しかもすでに食べ終えてしまっている!
だからと言って、幼いマリアから回収する訳にはいかないし、キョーコの下宿先に押し掛けて奪うこともできない。
あの迷惑なヘタレ先輩俳優のことだから、キョーコから贈られるバレンタインチョコを首を長くしながら待っているに違いないのだ。
未だに告白もできずにいるあの男は。
そのチョコがない?
自分たちは食べたのに?
マズイ!!マズすぎる!!二人同時にその発想に至った奏江と千織は、キョーコの説得にとりかかった。
「つ、敦賀さんとか・・・・・・、や、社さんとかにはあげたほうがいいんじゃない?あんたいつも世話になってるんだし!」
「そ、そうですよ、その他大勢はともかく、敦賀さんとか・・・・・社さんには差し上げた方がいいと思いますよ!?」
「なに?どうしたのぉ?二人とも急に!」
奏江と千織の二人に突然真剣な顔で詰め寄られたキョーコはビックリしてしまった。
「チョコはもうないわけ?」
「キョーコさんのことだから、予備とか・・・・・・・」
「ううん。今年はホントに5人分しか作らなかったの。材料も小分けのもので足りたから、余らなかったし。去年はチョコも1キロの袋を2つも買ったから、沢山作れたけど・・・・・・・・・・・」
「今日材料を買えば、明日渡せるんじゃない?」
「そ、そうですよ!キョーコさん、材料を買い行ってください。ここは私たちが引き受けますから!」
「でも、材料があっても、今日から2日間、だるまやの厨房は工事で使えないから無理なのよ・・・・・・・・って、どうしたの?二人とも!」
ある意味絶望した奏江と千織の二人が揃って頭を抱えてしまった様子に、キョーコが焦りの声をあげた。
「もう、一度だけ聞きたいんだけど・・・・・・・・・・・仕事先関係というか・・・・敦賀さんへのチョコはないのね?」
「へんなモー子さん。さっきからナイって言ってるのに。この業界の人達は皆さんバレンタインデーというか、この2週間位の間に山ほどチョコをもらうでしょ?それこそ食べきれない程。その処理に困るほ程あるチョコをよ?私まで配るだなんて出来ないわ。迷惑になるとわかってるのに。去年感謝チョコを配ってしまった自分が恥ずかしいくらいよ!」
その理由でいけば、あの某先輩俳優にキョーコのチョコが渡らなくても当然ではある。が・・・・・・それで納得してもらえるとは思えない。
そこに。今二人が一番会いたくない某先輩の聞きたくもない声がかかった。ノックと共に。
コンコン。「ちょっと時間が空いちゃったんだけど、休憩させてもらってもいいかな?」
続く
余ってたリク罠を消化してみました。
後半は初の限定。(中身は限定って程じゃないけど)
アメンバー申請の際の一言メッセージサービスの終了に伴いまして、
申請方法を変更致しましたので、ご一読下さい。
<アメンバー申請時のお願い>
m(_ _ )m
「ああ、今年も始まったな、アレが」
「ああ。蓮とブリッジとジンと真田くんと田中さんは確実にトラック単位だし。今年はジャンクもじゃないか?」
「うーん。施設に送るだけなら大した手間じゃないが、中身の確認と、贈り先の確保がなぁ」
「まぁ、食べ物だし、気を遣うよな」
「「今年はバイト何人必要だろうなぁ」」
タレント兼女優の“京子”、こと、最上キョーコは、本日久し振りとなるラブミー部の仕事していた。
これまた久し振りとなるど派手なユニフォームに身を包み、俳優セクションで書類整理をしていたところ、バレンタインという一大イベントの際、芸能人とその事務所に送るチョコや贈り物が喜ばれる「ギフト」ではないというスタッフの会話が耳に入ってきた。
ファンがどんなに一生懸命作った手作りチョコでも、信用できない人間から渡されたものを食べてもらえるわけがないし、どんなに高価なものを贈っても、人気芸能人ともなると様々な契約に縛られ身に着けてもらえることは少ない。
芸能人といってもランクは様々で、自分の好きな「ブランド品がほしい」と、それこそホステスかホストの様にファンに強請るツワモノもいる。また、ファンを大事にしていると公言している者は「ぬいぐるみ」など高価でなく可愛いものを受け取り喜んで見せないといけないので、一部屋犠牲にしてぬいぐるみ部屋を作って「喜んでいます」アピールしていたりもする。
ただ、ぬいぐるみや花などを受け取るにしても、隠しカメラや盗聴器のチェックは外せないので、どちらにしろ事務所のスタッフの手を煩わせる。
───うわぁ、なんか大変そう。そういえばラブミー部でも敦賀さんへのチョコの確認作業を手伝ったことがあったものね。LMEは大手だけあって他にも人気の俳優さんやタレントさんが大勢いるし、全部でトラック何台分になるのかしら。
器用にも、書類整理の仕事を手際よくこなしながら、キョーコは事務所が処理せねばならないバレンタインのチョコやギフトの量を予想し、げんなりしていた。
「もらった奴らもいくつかは自分で引き取るだろうけど、そんなのしれてるしなぁ」
「ああ、人気商売とはいえ、自分じゃチョコを食べない蓮とかになんて贈るだけ無駄だっていうのに」
「そうそう。こっちの手間が増えるだけで、本人の手にも渡らなきゃ、口にも入んないっていうのに、毎年この騒ぎだもんなぁ」
「ああ、ブランド品とかをもらっても、身につけるもんは契約の関係で使えないもんがほとんどだしな。送ってくるファンの子たちも、俺たちの労力もなんか報われねぇよな」
───なるほど。
そうよねぇ。
私も毎年感謝チョコを配っていたけれど。
そんなに迷惑になっているなら、会社関係はやめたほうがいいかしら。
そうよねぇ、みんながみんなほぼ同じ日にプレゼントしてくるんだものねぇ。
ファンからだけじゃなく、仕事仲間にまでもらってたら、幾ら大食いの人でも処理しきれないわよね。
うん、決めた!今年はモー子さんや雨宮さん、マリアちゃんに、大将と女将さんにだけにして、あとはやめておこう!
こうしてキョーコは、今年のバレンタインはプライベートの関係だけにしておこうと、心に決めたのだった。
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
「モー子さん、雨宮さん、コレ・・・・・・チョコなんだけど、二人にはいつもお世話になってるから作ってみたの。よかったら食べてもらえる?」
バレンタインデーにはロケが入っていて会えそうにないからと、本日2月10日にテレテレと可愛らしく頬を染めたキョーコからのチョコレートを受け取った2人は、このあとにチョコを貰うハズの某先輩俳優の緩みまくるであろう顔を思い浮かべた。
「「あ、ありがと(うございます)」」
「モー子さん雨宮さんの分は、ブラックチョコとオリーブオイルで作ったサイズ小さめのガトウショコラにしてみたの。ちょうどお茶の時間だし、今食べる?それに合う紅茶も見つけたから持ってきたのよ?」
「ありがと、いただくわ」「私も」
ラブミー部の部室でキョーコが用意したガトウショコラを前に、お互いの近況報告をしたあと、奏江は特になんの意図もなく、キョーコに尋ねてみた。
「あんた、ロケで12日からいないんでしょ?今年のチョコは今日明日で配り終えられるの?」
昨年のキョーコがかなりの数の「お礼チョコ」を用意していたことを知っていたが故の質問だったが、奏江は聞いたことを直ぐさま後悔させられることとなった。
「ああ、あとは大将と女将さんだけだから大丈夫よ。マリアちゃんには今朝渡したし!」
「え?昨日までにほとんど配り終えたってこと?」
「ううん、配ってない。今年はね、モー子さんと、雨宮さんとマリアちゃん、それに大将と女将さんだけにしたから」
「え?・・・・・・共演者とか、会社の人とかは?」
「用意してないわよ?」
聞くのが怖い気がするが一応聞いてみる奏江。
「・・・・つ、敦賀・・・・・・さん・・・・・には?」
「してないわよ?チョコの用意なんて」
ここで奏江と千織の二人は自分達がいかにマズい状況に追い込まれているかを悟ってしまった。
あの男が貰えないチョコを、あろうことか自分達は貰い、しかもすでに食べ終えてしまっている!
だからと言って、幼いマリアから回収する訳にはいかないし、キョーコの下宿先に押し掛けて奪うこともできない。
あの迷惑なヘタレ先輩俳優のことだから、キョーコから贈られるバレンタインチョコを首を長くしながら待っているに違いないのだ。
未だに告白もできずにいるあの男は。
そのチョコがない?
自分たちは食べたのに?
マズイ!!マズすぎる!!二人同時にその発想に至った奏江と千織は、キョーコの説得にとりかかった。
「つ、敦賀さんとか・・・・・・、や、社さんとかにはあげたほうがいいんじゃない?あんたいつも世話になってるんだし!」
「そ、そうですよ、その他大勢はともかく、敦賀さんとか・・・・・社さんには差し上げた方がいいと思いますよ!?」
「なに?どうしたのぉ?二人とも急に!」
奏江と千織の二人に突然真剣な顔で詰め寄られたキョーコはビックリしてしまった。
「チョコはもうないわけ?」
「キョーコさんのことだから、予備とか・・・・・・・」
「ううん。今年はホントに5人分しか作らなかったの。材料も小分けのもので足りたから、余らなかったし。去年はチョコも1キロの袋を2つも買ったから、沢山作れたけど・・・・・・・・・・・」
「今日材料を買えば、明日渡せるんじゃない?」
「そ、そうですよ!キョーコさん、材料を買い行ってください。ここは私たちが引き受けますから!」
「でも、材料があっても、今日から2日間、だるまやの厨房は工事で使えないから無理なのよ・・・・・・・・って、どうしたの?二人とも!」
ある意味絶望した奏江と千織の二人が揃って頭を抱えてしまった様子に、キョーコが焦りの声をあげた。
「もう、一度だけ聞きたいんだけど・・・・・・・・・・・仕事先関係というか・・・・敦賀さんへのチョコはないのね?」
「へんなモー子さん。さっきからナイって言ってるのに。この業界の人達は皆さんバレンタインデーというか、この2週間位の間に山ほどチョコをもらうでしょ?それこそ食べきれない程。その処理に困るほ程あるチョコをよ?私まで配るだなんて出来ないわ。迷惑になるとわかってるのに。去年感謝チョコを配ってしまった自分が恥ずかしいくらいよ!」
その理由でいけば、あの某先輩俳優にキョーコのチョコが渡らなくても当然ではある。が・・・・・・それで納得してもらえるとは思えない。
そこに。今二人が一番会いたくない某先輩の聞きたくもない声がかかった。ノックと共に。
コンコン。「ちょっと時間が空いちゃったんだけど、休憩させてもらってもいいかな?」
続く
余ってたリク罠を消化してみました。
後半は初の限定。(中身は限定って程じゃないけど)
アメンバー申請の際の一言メッセージサービスの終了に伴いまして、
申請方法を変更致しましたので、ご一読下さい。
<アメンバー申請時のお願い>
m(_ _ )m