「最強のライバル」

「最上さん、おはよう」
「敦賀さん、社さん、おはようございます」

朝からキョーコに会えてご機嫌な蓮はその気持ちを隠す事無く言葉にする。

「今回の現場でもよろしくね。しばらくは毎朝君と会えるなんて嬉しいよ」

早朝ロケがしばらく続くことで転がり込んだ幸運に蓮の頬は緩みっぱなしである。

「ふふ、私もしばらく敦賀さんにしっかり朝ご飯を召し上がっていただけそうで、嬉しいです。朝ご飯まだですよね?社さんも。今日は朝とお昼の分のお弁当を持ってきたんです。よろしかったらどうぞ?」

「ほんとに?最上さん、有り難う、嬉しいよ」
「ありがとーー!キョーコちゃん!でも、俺の分までなんて悪いなぁ」

「いえいえ、お二人にはいつもお世話になっておりますから」

キューティーハニスマイルを炸裂させたキョーコを前に、蓮の顔は固まるが、いつもならそこで「私何かした?」と不安になる筈の敦賀蓮感情センサー搭載乙女が今日はそれに反応しない。

そして、更に威力を増したキューティーハニスマイルと共に、差し出されたのは・・・・

「この袋に入ってますので、どうぞ。上の包みが朝の分です。では、私はモ、琴南さんと食べる約束をしてますので、失礼しますね」

朝も昼も、あなた方とは食べれません!という宣言が含まれたお弁当入りの紙袋だった。

しばらくは、キョーコの手作りの朝ご飯とお昼ご飯を、キョーコと一緒に食べられる!とウキウキと弾む気持ちで現場に到着した男はその肩をガクンと落とし、捨てられた仔犬のような顔でそれを受け取った。

しかし、残念ながら、蓮の無意識ワンコ攻撃も、この日は効力を発揮できずに終わった。

よりキュンキュンする朝ご飯デート(&お昼ご飯)の相手の下にスキップで去っていった乙女の視界にはそれは入りきらなかったから・・・・。

彼女の脳内は、琴南奏江との初めてのドラマ共演(しかも親友役)を果たせる喜びと、それにより朝も昼も一緒に過ごせる幸せにより、お花畑と化していた。いや、花で埋もれていた。

そんなわけで普段のキョーコならキュンとしてしまう筈な蓮のわんこ顔も縋るような視線もオールスルーで、親友にキョーコを取られ凹みまくりな男と、それによって大慌てしてる敏腕マネージャーをその場に置き去りにして、周囲に花を飛ばしながら琴南奏江の待つ場所に向っていったのだった。

社によって提案された“琴南奏江も一緒に朝昼プラン”は、「他の共演女優がウザいので、やっぱり無理です」と、面倒ごとを嫌う奏江に言われ、実現前にアッサリぽしゃった。更にその後「今回の共演者はネチこいので、キョーコにも私にも撮影時以外は話しかけないでくださいね?(迷惑ですから!)」と黒い微笑みと共に告げられ・・・・

ドラマのクランクアップ時には「こうなったらもう、告白して特別扱いしてもらうしかない!」と腹をくくった俳優がいたとかいなかったとか。


fin


軽すぎる内容・・・・すみませんw
没罠加工品でした。


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