いつから放置してるんだかもう記憶にない、ブログ開設3日目に仕掛けた罠への自爆ドボン作。読み直すだけでは書けない気がしてきたので、修正しながら1話から順にアップしていきます。
素敵な獲物さん作でなくて、ほんと申し訳ないです。(´・ω・`)
魔人の駄作なんて、興味ないし!という99パーの方はバックプリーズ。
暇つぶしのために読んでやるぜ!という勇者さんのみ読んでくださいね。(;´▽`A``
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逃げる彼女をつかまえろ!<1><2><3><4><5><6><7><8><9><10><11><12><13><14><15><16>
逃げる彼女をつかまえろ!第17話
「カーット!!セット入れ替えだ!役者は昼休憩入ってくれ。今日は時間が押してるから、45分後にはメイクも衣装替えを終えてスタンバイしておいてくれよ!」
スタジオ中に響き渡る大声で、監督がスタッフと役者に指示を出す。
それを受け、スタッフだけでなく、役者も一応返事はしているのだが、それはセット替えの音にかき消された。
しかし、このスタジオという戦場で、その様なことを気にするものはいない。挨拶や返事は大事だが、撮影が始まってしまえば、その進行がすべてにおいて優先される世界である。指示を受けた役者が今すべきことは、それを実行することのみ。
この現場で、もっとも時間に追われているかもしれないキョーコは、というと……休憩が告げられた途端、足早にスタジオの入り口に向っていた。
それに気づいた蓮が、慌てて大声で呼び止める。
「最上さん!!」
今日も一緒に昼食を食べたりすることは出来ないかもしれない。しかし、朝スタジオ入りした際に挨拶してもらって以来、役としての絡みも、個人的な絡みも皆無で過ごしてきた蓮の中には不満が溜まっていた。
ほんの数分でもいいからキョーコと話したい。
自分を見てほしい。笑いかけてもらいたい。
映像の中にいるキョーコで満足できていた彼の幸せレベルが、実物を目の前にしたことで、上がってしまったのは、当然ではある。
それらは蓮にとって、未知の幸せではないのだから。
過去にはいつでも触れあえるところにあった、小さな幸せ。彼はそれを取り戻したかった。全部は無理でも、ほんの少しだけでも。
蓮の中で募る欲求。
折角の共演。
なのに、視線すら絡まないのはどうしたことか。
少しくらい、自分のことを気にしてくれてもいいのではないのか?
キョーコの方からも、ちょっとくらい、声をかけてくれてもいいのではないか?
膨らんだ不満は蓮を盲目にした。
(ねぇ、俺は君に声をかけているよ?ほとんど会話になっていないけど、俺なりにアピールして、頑張っていると思うんだ。なのに、ほんの10m先の君との距離がとてつもなく遠く感じてしまうのは何故だ?どうして、間に立ちはだかる奴らが、こんなに多い!?)
昼からの撮影では、京子の方が早く、撮りを終えてしまう。捕まえるなら、今が最大のチャンスだと蓮は思っていた。
だから。
「最上さん!」
声をかけた時点で、すでにスタジオの入り口に辿りついていたキョーコだが、蓮の呼びかけに応じ、小走りで戻ってきた。
自分を目がけ、走ってくるその姿に、蓮の頬は緩む。
「は、はい!なにか御用ですか?」
「いや……その……久し振りに最上さんとお昼を一緒に食べたいな?と思って……」
特に用もなく、呼び止めてしまった蓮だったが、この際だから駄目もとで聞いてみる。
「すみません、今から通信で授業を受けるんです。食事はそれを受けながら済ませてしまいますので」
「……それ、見てみたいな……可愛い後輩が勉強してるところ」
「は?」
(一緒に食事が無理なら、せめて同じ部屋にいさせて?勉強してる姿を見てるだけでいいから!)
蓮としては、妥協したつもりのお強請り内容である。が、しかし。
「京子ちゃん、時間なくなっちゃうよ!!早く行って!衣装室に荷物運んでおいたから!」
「は、はーい!ありがとうございます!すみません、敦賀さん、時間がないので!!」
いつもの様に遠くから邪魔な声がかかってしまう。
それに礼をいい、蓮には謝るだけのキョーコ。
謝罪なんかいらないから、行かないでほしかった。
折角近づけた、キョーコとの距離。
それを引き離そうと、間に立ちはだかる者達の余計な言動にイライラが募る。
(一昨日も、昨日も、今日も!どうして、邪魔ばかりするんだ!)
「それじゃあ、衣装室まで送るよ。」
逃がすまいとキョーコに近づき、腰を攫おうとするが、一瞬前にそれも阻止された。
横から走り込んできたスタッフによって、あっと言う間に攫われてしまったキョーコは、再び入り口に向かっていた。腕を掴まれ、引っ張られながら。
「時間ないから!京子ちゃん、走って!」
「はいぃ!あ、敦賀さぁん、すみませぇーーーーーーーーーーん」
蓮は唖然としたまま、スタッフと共に走り去るキョーコを見送るしかなかった。
本日のお弁当は残念ながら、キョーコの手作りではない。そして、マネージャーの社は用事で不在。
楽屋に用意された弁当には見向きもせずに、その横に並べてあったドリンクだけを手に取る蓮。
キョーコや社が知ったら激怒すること間違いなしの本日の蓮の昼食メニューは「缶コーヒー」。
しかし、いかにしてキョーコとの時間を作るか、その作戦を練ることだけに使用されている蓮の脳味噌から、それに異を唱える指令はでない。
(あとは、スタンバイ前と、彼女の撮りを終えたときが、チャンスか……そのときに、今日でも、明日でも、家に来てもらえないか聞いてみよう。毎日勉強ばっかりじゃ、疲れちゃうだろうって、息抜きを勧めてみよう。ああ、でも、彼女に料理してもらうのは悪いから、ハンバーグでも御馳走して……)
「最上さん、着替え終わったんだ。その衣装可愛いね、凄く似合ってる。あ、45分には少しだけ時間あるね。今日だけど……」
「おーい、京子、ちょっときてくれ!丁度いいから、今打ち合わせしとこう、5分あるしな!」
(監督、打ち合わせなんて、俺の話のあとでいいじゃないですか!)
「最上さん、あの、今日、ハンバ……」
「京子ちゃん、加藤さん、リハいくよーーー!ほら、敦賀くん、セットから離れて!」
「最上さ」
「京子ちゃん、お疲れ!移動のタクシーもう来てるから、ダッシュで着替えてねー!」
「も……」
「皆様、お先に失礼しまーーす」
「……がみさ……ん」
キョーコを引き止める為に伸ばした蓮の右腕が、虚しく落ちる。
<18>に続く
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スタジオ中に響き渡る大声で、監督がスタッフと役者に指示を出す。
それを受け、スタッフだけでなく、役者も一応返事はしているのだが、それはセット替えの音にかき消された。
しかし、このスタジオという戦場で、その様なことを気にするものはいない。挨拶や返事は大事だが、撮影が始まってしまえば、その進行がすべてにおいて優先される世界である。指示を受けた役者が今すべきことは、それを実行することのみ。
この現場で、もっとも時間に追われているかもしれないキョーコは、というと……休憩が告げられた途端、足早にスタジオの入り口に向っていた。
それに気づいた蓮が、慌てて大声で呼び止める。
「最上さん!!」
今日も一緒に昼食を食べたりすることは出来ないかもしれない。しかし、朝スタジオ入りした際に挨拶してもらって以来、役としての絡みも、個人的な絡みも皆無で過ごしてきた蓮の中には不満が溜まっていた。
ほんの数分でもいいからキョーコと話したい。
自分を見てほしい。笑いかけてもらいたい。
映像の中にいるキョーコで満足できていた彼の幸せレベルが、実物を目の前にしたことで、上がってしまったのは、当然ではある。
それらは蓮にとって、未知の幸せではないのだから。
過去にはいつでも触れあえるところにあった、小さな幸せ。彼はそれを取り戻したかった。全部は無理でも、ほんの少しだけでも。
蓮の中で募る欲求。
折角の共演。
なのに、視線すら絡まないのはどうしたことか。
少しくらい、自分のことを気にしてくれてもいいのではないのか?
キョーコの方からも、ちょっとくらい、声をかけてくれてもいいのではないか?
膨らんだ不満は蓮を盲目にした。
(ねぇ、俺は君に声をかけているよ?ほとんど会話になっていないけど、俺なりにアピールして、頑張っていると思うんだ。なのに、ほんの10m先の君との距離がとてつもなく遠く感じてしまうのは何故だ?どうして、間に立ちはだかる奴らが、こんなに多い!?)
昼からの撮影では、京子の方が早く、撮りを終えてしまう。捕まえるなら、今が最大のチャンスだと蓮は思っていた。
だから。
「最上さん!」
声をかけた時点で、すでにスタジオの入り口に辿りついていたキョーコだが、蓮の呼びかけに応じ、小走りで戻ってきた。
自分を目がけ、走ってくるその姿に、蓮の頬は緩む。
「は、はい!なにか御用ですか?」
「いや……その……久し振りに最上さんとお昼を一緒に食べたいな?と思って……」
特に用もなく、呼び止めてしまった蓮だったが、この際だから駄目もとで聞いてみる。
「すみません、今から通信で授業を受けるんです。食事はそれを受けながら済ませてしまいますので」
「……それ、見てみたいな……可愛い後輩が勉強してるところ」
「は?」
(一緒に食事が無理なら、せめて同じ部屋にいさせて?勉強してる姿を見てるだけでいいから!)
蓮としては、妥協したつもりのお強請り内容である。が、しかし。
「京子ちゃん、時間なくなっちゃうよ!!早く行って!衣装室に荷物運んでおいたから!」
「は、はーい!ありがとうございます!すみません、敦賀さん、時間がないので!!」
いつもの様に遠くから邪魔な声がかかってしまう。
それに礼をいい、蓮には謝るだけのキョーコ。
謝罪なんかいらないから、行かないでほしかった。
折角近づけた、キョーコとの距離。
それを引き離そうと、間に立ちはだかる者達の余計な言動にイライラが募る。
(一昨日も、昨日も、今日も!どうして、邪魔ばかりするんだ!)
「それじゃあ、衣装室まで送るよ。」
逃がすまいとキョーコに近づき、腰を攫おうとするが、一瞬前にそれも阻止された。
横から走り込んできたスタッフによって、あっと言う間に攫われてしまったキョーコは、再び入り口に向かっていた。腕を掴まれ、引っ張られながら。
「時間ないから!京子ちゃん、走って!」
「はいぃ!あ、敦賀さぁん、すみませぇーーーーーーーーーーん」
蓮は唖然としたまま、スタッフと共に走り去るキョーコを見送るしかなかった。
本日のお弁当は残念ながら、キョーコの手作りではない。そして、マネージャーの社は用事で不在。
楽屋に用意された弁当には見向きもせずに、その横に並べてあったドリンクだけを手に取る蓮。
キョーコや社が知ったら激怒すること間違いなしの本日の蓮の昼食メニューは「缶コーヒー」。
しかし、いかにしてキョーコとの時間を作るか、その作戦を練ることだけに使用されている蓮の脳味噌から、それに異を唱える指令はでない。
(あとは、スタンバイ前と、彼女の撮りを終えたときが、チャンスか……そのときに、今日でも、明日でも、家に来てもらえないか聞いてみよう。毎日勉強ばっかりじゃ、疲れちゃうだろうって、息抜きを勧めてみよう。ああ、でも、彼女に料理してもらうのは悪いから、ハンバーグでも御馳走して……)
「最上さん、着替え終わったんだ。その衣装可愛いね、凄く似合ってる。あ、45分には少しだけ時間あるね。今日だけど……」
「おーい、京子、ちょっときてくれ!丁度いいから、今打ち合わせしとこう、5分あるしな!」
(監督、打ち合わせなんて、俺の話のあとでいいじゃないですか!)
「最上さん、あの、今日、ハンバ……」
「京子ちゃん、加藤さん、リハいくよーーー!ほら、敦賀くん、セットから離れて!」
「最上さ」
「京子ちゃん、お疲れ!移動のタクシーもう来てるから、ダッシュで着替えてねー!」
「も……」
「皆様、お先に失礼しまーーす」
「……がみさ……ん」
キョーコを引き止める為に伸ばした蓮の右腕が、虚しく落ちる。
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