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「不安な夜16」


目撃者の通報により、問題の仮眠室に駆けつけた面々の手で、敦賀蓮の腕の中から保護されたキョーコは、社長室のあるフロアの1室にて、LME芸能プロダクションの常駐女医と、急遽呼ばれた女性のカウンセラーの診察を受けていた。

その場にはキョーコを助ける為に仮眠室に飛び込んだ親友の琴南奏江と、社長に頼まれ、売れっ子タレント兼女優京子の商売道具である身体の被害がメイクで隠せるレベルかどうかの確認にきた、ジュリー・ウッズも同席し、一人は心配げに、もう一人は楽しげに、その診察を見守っていた。


「手首と、上腕と、大腿部、臀部・・・・大分強く掴まれた?これは痣になるわね。骨は大丈夫そうだけど。あとは、頸部、胸郭に吸引性皮下出血が多数。大腿部にも・・・・1?いや、2カ所ね。それと、手首にも1カ所。京子さん、どこか他に痛むところはない?・・・・そう。それじゃあ、皮下出血のところには、軟膏を塗っておくけど、ウチの所属タレント達から聞いたのは蒸しタオルで暖めたり、温水シャワーをあてながら患部をマッサージするのがいいそうよ」

女医による簡単な診察が終わると、下着姿のキョーコにバスローブを着せ、カウンセリングという名の事情聴取が行われた。

「まずは、こちらに座って」

3人掛けのソファーにキョーコを座らせ、その手を握りながらカウンセラーが横に座った。テーブルを挟んだ向かい側のソファーには琴南奏江とジュリー・ウッズが。横の一人掛けのものには女医が座った。


「では、京子さん・・・・いえ、キョーコちゃん、今日あったことを振り返ってみましょうね」
「は、はい」

カウンセラーは少し緊張気味のキョーコを安心させるように、柔らかに微笑みながら、優しい声でカウンセリング(兼事情聴取)を始めた。

「キョーコちゃんはこの事務所の廊下を歩いていたそうだけど、今日は早朝から仕事だったの?」
「いえ・・・・あの、ドラマで私が演じてることを内緒にしてた役があったんですが、それが、その・・・昨日の夜の番宣番組で明かされまして」
「うん、それで?」

「それで、やっとコソコソ隠れなくても良くなったからと、スタッフさんや共演者の方々がドラマの最終回の放映終了と映画の完成のお祝いを兼ねた打ち上げの食事会に呼んでくださいまして」
「うんうん」

「で、そのスタートが26時からだったものですから・・・・」
「うんうん。もしかして朝まであったのかな?その食事会というか飲み会は」
「そうなんです。今まで誰かに見られないようにと、共演者の方々とロケ弁を一緒に食べることすらできずにいましたから、それが解禁になったお祝いも兼ねてるんだよって言ってくださいまして・・・・」

「それじゃあ、自分だけ早くに帰るなんて出来ないわよねぇ」
「そうなんです」

カウンセラーの口調が先程までの、幼い子供に話しかける様なものから、親しい友人同士のような砕けたものに変化していく。それが、キョーコの緊張をほぐし、口を滑らかにさせていった。

「で?」
「それで、6時まで会場となったお店にいたんですけど、ここからちょっと距離のあるホテル内にあるお店だったんです。で、朝の交通渋滞も予想されるから、今日朝から仕事がある人は、自宅に帰るよりも、ホテルのシャワーを借りて、着替えなんかもそこで購入して済ませた方がいいと言われまして・・・・」
「じゃあ、飲み会の会場から、家に帰らず直接出社したのね?」
「はい」

「時間は?」
「7時50分に事務所まで送っていただきました」

「朝から仕事って、そんなに早いの?」
「いえ、今日は新しい仕事の話があるからと、9時30分に呼ばれていたんです。モ・・・・琴南さんと一緒に。それで、琴南さんと、朝いちから会えるなんて珍しいし、折角なら打ち合わせの前に最近オープンしたカフェでモーニングを食べようって話になって」

「ふーん。待ち合わせは何時?」
「もともとは8時の約束だったんですけど、渋滞で間に合わないかもしれないので、朝電話して少し時間をずらしてもらったんです。8時15分に・・・・」

「なるほど。で?敦賀さんとはいつ会ったの?」
「えーと。多分8時頃です」

「どういう状況で?たまたま正面から歩いてきてたとか?」

そんな状況ではなかったことはすでに承知している筈だが、カウンセラーは知らない振りをして質問を投げかけていく。

「いえ、電話しながら歩いていたんですけど、後ろから突然・・・・名前を呼ばれまして」
「誰と電話してたの?」

「今回のドラマと映画での共演者の貴島さんです。ここの事務所の前を通るからと、タクシーに同乗させてくださったんです。貴島さんのマネージャーさんと・・・・途中まで共演者でLME所属の真中優子さんも一緒に。で、廊下を歩いていたら、携帯に貴島さんから電話を頂きまして」
「少し前まで一緒だったのに?」

「はい。ちゃんと待ち合わせの友達と会えたかどうか、心配してくださったみたいで」
「ふーん。他にはどんな話をしたの?」

「打ち上げの時に、酔っぱらってしまった方の行動が面白くて、それを思い出して話したり・・・・?」
「それだけ?名前を出したりは?」

「最後に・・・・貴島さん、今日は送っていただき、有り難うございました?あと、今日はお昼からお仕事だと伺っていたので、それまでしっかり休んでくださいね・・・って」

((((これはもう、どう聞いても、貴島さんと朝まで一緒にいたって思うわよね))))

キョーコの話を聞いていた4人の女は全員そう思った。

しかし、まだ疑問だらけだ。

今では事務所中が知っていると言っても過言ではない敦賀蓮のだだ漏れすぎる京子への恋心。その彼がこれを偶然聞いてしまったら、ショックを受けるだろうことはわかる。

「どう見ても正常には見えない状態の敦賀蓮」が精神的なものを指しているだけなら、通報に至った目撃情報にも頷ける。

でも違うのだ。このショッキングな電話の内容を聞く前まで、彼が正常だったとは思えない。なぜなら、まともな敦賀蓮が、「徹夜明けの仮眠中だから」といって、ボロボロのヨレヨレ、しかも裸足で、オフィスである事務所内を歩きまわる筈がないのだから。

((((これはもしや、彼の有名な「京子センサー」ってやつ?))))

事務所中が知っている京子への恋心。それと同時に、異常に発達している彼の「京子センサー」の噂も同じく事務所限定ではあるが、有名だったのである。目撃者はどん引きという噂も。


心の中での様々なツッコミを、優しい笑みで隠して、カウンセラーの質問は続く。

「敦賀さんとはそのあと会ったの?どういう風に?」
「電話を切った瞬間、後ろから声をかけられました」


「彼はどんな様子だった?いつもどおりの爽やかな紳士って感じだった?」





「・・・・(((( ;°Д°))))」



突然真っ青な顔になり、震えだしたキョーコの様子に、その場の4名の女達は悟った。

((((もしかして、振り向いたら、これまた噂の大魔王が降臨してたって訳!?))))


続く →「不安な夜17」


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