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始まりはひとつ、終わりは幾通りも!!な
パラレルエンディング★リク罠 「不安な夜」
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「不安な夜17」


突然真っ青な顔になり、震えだしたキョーコ。

カウンセラーの女性は、膝の上で握っていた手を離し、キョーコの背中を撫でながら、幼子をあやす様に話しかけた。

「キョーコちゃん、大丈夫よ。それはもう終わったことなんだから、怖いことなんてないのよ」

「は、はい」

「お茶でも飲んで、少し休憩しましょうか・・・・」


コンコン

「はーい」
「失礼します。最上様と琴南様は朝食を召し上がっていらっしゃらないということで、軽食をお持ちしました」

「流石、気が利くわね-w」

話が筒抜けなんじゃないかと思う程、見事なタイミングで、軽食とお茶のセットを運んできた社長秘書からそれらが乗ったワゴンを受け取ったジュリー・ウッズは、ウキウキとそれをテーブルに運びだした。

「実は私も食べてなかったのよ。あら、美味しそう!量もたっぷりあるし、みんなで食べましょ」
「「「「はい」」」」

ジュリー・ウッズを手伝おうとしたキョーコを視線で制止した奏江が手伝い、応接テーブルの上に軽食というより、豪華なアフタヌーンセットの様なメニューが並べられた。

「「「「「美味しそう」」」」」


食べている間には、そのメニューの感想を言い合うなどして、リラックスした雰囲気を作っていたせいか、お腹にものをいれたせいか、その両方かもしれないが、先程までより随分落ち着いた様子を見せるキョーコを相手に、カウンセラーはさりげなく、質問を再開させた。

「さっきの話だけど、振り返ったときの敦賀さんの・・・・あ!!!雰囲気は思い出さなくていいから!!服装とかだけ思い返してみて?ね?」


少し顔色を変えかけたキョーコだが、思い返す必要があるのが「敦賀蓮の姿カタチ」だけと聞いてすぐに立ち直った。彼女は常日頃から、その類希なる才能で、「敦賀蓮の姿カタチ」をキッチリ記憶している女だったから、これには自信満々で答えられた。


「仮眠中だったせいだと思いますけど・・・・髪は全体的にボサボサで、あ、特に右側頭部のハネが酷かったです!あと、右の目元は半分隠れてました。グレーのシャツはなんだかヨレヨレしてる感じで・・・両手のカフスボタンと、胸元のボタン3個も外されてましたし、ダークブルーのパンツにもかなり皺が入ってました。あと、足下は裸足でした!」

((あんなに怯えていたのに、どうしてそこまで詳しく覚えてるの!!))
(キョーコちゃん、流石!どんなときでも蓮ちゃんのことを良く見てるわ~!)
(流石ね、キョーコ。いつもながら怖いわ、その観察眼がっ!)

キョーコから、彼女の脳味噌に(自動的に)記憶されている鮮明すぎる「敦賀蓮の姿カタチ」を聞かされた、女医とカウンセラーは驚きながら、あとの2人は少し呆れ気味に、お互いの顔をみやった。

「え、えーと。キョーコちゃん、そのあとの敦賀さんとキョーコちゃんの言葉のやりとり・・・・思い出せる?」

「敦賀さんと、私のやりとりですか?」

またもや顔色を変えかけたキョーコに、奏江が思いついたばかりの案を提示した。

「ねぇ、キョーコ。あんたよく、人形使って演ってるじゃない。敦賀さんの声色で。あれで演ってみたら?自分のことだと思わず、演じてみるの。どう?それならできるんじゃない?」

「えー!!キョーコちゃん、蓮ちゃんのマネで人形劇できるのー?見たい、見たーい!!やって、やってー!」

大はしゃぎのジュリー・ウッズの横と前に座った女医とカウンセラーも「仕事」を忘れ、キョーコと奏江のやりとりを興味津々な目で見つめていた。

「それなら、できるかも・・・・」
「決まりね。先生、これで最後まで見た方が早いですよ」

「そ、そうね。キョーコさん、できるとこまででいいから、今日あった会話全部見せてくれる?」
「はい、やってみます。それじゃあ、準備しますので、少しお待ちくださいね」



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4人の女性が見つめる中、キョーコの鞄の中から取り出された、怖い程似てる敦賀蓮人形。

そして、必要もないのに、目の前で再現されていくのは、台詞のやりとり・・・・ではなく、ボロボロのヨレヨレ、しかも裸足で、オフィスである事務所内を歩きまわっていたという敦賀蓮の姿だった。

((((そこからなんだ・・・・))))

黙々と「職人の様な目と指で」作業をすすめるキョーコ。

蓮人形の顔に、敦賀蓮っぽくない恐ろしい面がつけられ、髪を先程の証言通りにセットされるまで、心の中では盛大にツッコミをいれながらも黙って待っていた4名の前で、それは始まった。








「貴島さん、今日は送っていただき、有り難うございました。今日はお昼まで、しっかり休んでくださいね。それじゃあ、また明日。失礼します」

キョーコ人形の制作はキョーコのやる気と職人魂を引き出すものではなかったらしく、キョーコの役は感情の欠片も見えない、ハンカチで作った小振りな「てるてる坊主」が演じていた。

それが何故かキョーコに見えてきてしまうのは、本人が声を当てているせいなのか、女優京子の演技力の凄さなのか。

間抜けな顔をした、どこが腰かも判別できない「てるてる坊主」が何故か美しく見える礼をしながら、電話に見立てたシュガーをマジックで描いただけの耳から離す。

そして、その背後からかけられた声。


「最上さん!」

低い、唸るような声が職人技満載な敦賀蓮人形から発せられた。


ギギギギ・・・・


そんな音が聞こえてきそうな動きで背後を振り返るキョーコ(注:てるてる坊主)。

ビクン!!と、身体を刎ねさせたあと、首だけを振り返らせた状態で急速冷凍されたキョーコ(注:てるてる坊主)。


「ツ、ツ、ツ、ツ、ツルガサマ?」



もはや、普通に喋れない、キョーコ(注:てるてる坊主)。


ーーそれは気配から予想した通りの姿だったーー (←ナレーション付き)


(いやぁああああああ!大魔王ーー!!なんでぇぇ?どうして、大魔王なのぉおおおおお?)

「最上さん、どうして貴島くんと電話してたの?今日は送っていただきって、なに?今日っていつのこと?まさか、朝まで一緒に居たとか言わないよね?」

その時点で、キョーコ(注:てるてる坊主)は大魔王の腕の中にいた。


リアルすぎる程に、ボロボロのヨレヨレ。

本物のヒトにしか見えない仕上がりだが、春の日差しのような笑顔を常に浮かべた温厚紳士として有名なあの人気俳優、敦賀蓮とは思えない程恐ろしい顔。

それでもそれは、只の人形の筈だった。

だがしかし。

それは、とても人形とは思えない禍々しい気配を漂わせながら、フラフラと近づき、その長い腕と大きな身体で、キョーコ(注:てるてる坊主)の背後(?)からその身体のすべてを覆い尽くしたのだった。



続く→「不安な夜18」


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