拍手御礼からの移動です。
かなり加筆修正しています。
ストーリーはあまり進んでいませんが、間がビヨーーーンと伸びました。
この2-1はほぼ書き足し部分で締められています。

臭いと連呼していますが、このドラマの場面設定状そうなるのは仕方がないということで……男性批判で書いて訳ではありませんので、そのあたりはツッコミなしでお願いいたします。



なんとなくな小話
「恐怖の設定~熱帯夜明けの部屋の中~中編2-1」


メイク係の山本は、今回自分が担当している京子の威勢のいい演技に見惚れていた。

(う~ん。いいなぁ、京子ちゃんの演技。元気がよくて、可愛くて。美形揃いだけど家ではヨレヨレボロボロの兄貴や弟を容赦なしに蹴り飛ばして踏んづける姿が堪らないわね!!)

前々日の仕事先で、ドラマ初出演のアイドルが、夕方に終わる筈の仕事を夜中まで引っ張ってくれたせいで、この離島での撮影に間に合う様移動するのが大変だった山本は、京子の担当を他のメイクに譲る羽目にならなかったことを心底喜んでいた。

(デビュー当時からメイク関係者の間では有名だったけど、本当にメイクのし甲斐がある娘よね。バケるっていうのも本当だったし。想像していたのとは全然違ったけど)

京子の変身振りは、地味な顔程別人になれる最近流行の特殊メイクとしか言えない別人メイクを施したせいだと思っていた山本である。

業界には、そういう噂もあるのだ。

しかし、実際に目の前で化けてみせられた今はその噂は100パーセント嘘であると断言できる。

目の前のモニターの中で強く輝いているユキは、素の大人しい京子とは別人の美少女だ。

でもその顔には、実はほとんど化粧品がのっていない、この不思議。

(今なんてほぼノーメイクなのに、メイクが済んだと言った途端ああなったのよね。テカり防止にルースパウダー叩いて、ビューラーでまつげ上げて、リップ塗っただけだもの。あれでメイクで化けたとは言わないわよね、普通。っていうか、素顔同然な筈なのに、どうしてあんなに変わるわけ?)

モニターを見つめがら、変身の瞬間を思い返す。

(ううーーん。役に入るスイッチを入れるためのメイクっていうのかしら?)

自身の出した結論により、己のメイクとしての仕事が特別なモノに変わる。

(京子ちゃんの言う様に、本当に魔法使いになれちゃった気分。明日東京で撮るシーンは少し気合い入れたメイクをしてもいいらしいし、楽しみだわ~!!)

腕が鳴る!!と、翌日に控えている別のシーンの撮影に向けての、脳内シュミレーションを始めようとしたところで、監督による「カット」の声が聞こえた。

この朝のシーンはまだ続く。

汗で崩れる程のメイクはしていないが、浮いた汗を拭き取り、パウダーで押さえ、髪の乱れを直さないといけない。

汗が酷ければ、ドライヤーで髪を乾かす必要もでる。

時間との戦いでもある撮影現場。早足で自身が担当する役者に近づいた。

その目の前で、京子が崩れ落ちた。

慌てて駆け寄り、その蒼白な顔を覗き込んで驚いたが、気分が悪いものを介抱するには蒸し暑すぎるこの廊下に寝かせる訳にはいかない。

ひとまず、自分が先程までいた涼しい部屋に移動しようとしたそのとき。

背後からうめき声が聞こえた。

振り返れば、イケメン率100パーセントの別名パラダイス部屋の襖の前で京子同様踞っている女性が3人。

リハを見学しながら「こんな部屋に住みたい!」とその名前をつけた自称イケメン専任メイク達である。

「あ、貴方達まで、どうしたの?」

京子を介抱しながら、背後の同僚に声をかけると、うなり声と共に返答が帰ってきた。

「信じられないぐらい……臭いっ…うっ!!」

「は?」

(臭い?何が?)

よくわからないまま、無意識に鼻を「そっち」に向けて動かしてしまった山本は、次の瞬間それを後悔することになった。

(なっ!!!臭ぁああい!!!)

臭いの元は明白。

原因も明白。

(あの部屋には絶対に入らない!!)

そう誓って京子と同僚の救出活動を急ぎだした山本の耳に、すべてを悟っている確信犯な監督の声が聞こえた。


中編2-2に続く


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非常に反応の少ない魔人駄作。
ここんとこ優しい方々が、コメントを入れてくださる様になりました。
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