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愛の言葉は難しい 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12 / 13 / 14 / 15

「愛の言葉は難しい 16-side Ren-」

「社さん、どうでした?最上さんと今日は会えそうですか?」

車に戻って来た社さんが、ドアを閉める間すら待ちきれず、俺は口を開いた。

最上さんから意味不明な手紙をもらってから、1週間が経過していた。

あの翌日から、社さんになんとか最上さんの予定を掴んでもらおうと、移動途中にほんの少しでも余裕があれば、事務所に寄って、情報収集してもらっている。

今も15分ほどしかない時間を使ってそれをしてきてもらったところだ。

時間がないため、駐車場に車を置いて同行することはできず、俺は社さんが有益な情報を掴んで戻ってくるのを今か今かと首を長くして待ちながら、車の中で待機していた。

これだけ毎日情報収集に励んでいても、彼女と会うチャンスを掴むことができない日が続いている。

そのことに俺は焦りを感じていた。

意味不明な誤解をされた状態が長期間続くことが怖くて仕方が無かった。

携帯電話の留守録やメールでの連絡も考えたが、原因がまったく理解できていない状態で留守録やメールに言葉を残す勇気はでなかった。

最近ではほとんどないが、電話がオンタイムに繋がったとしても……今の俺には墓穴を掘る自信しかない。

危険は犯したくない。

やはり、直接顔を見ながら話をするほかないのだ。

彼女を失わないためには……。

なのに、その直接会える機会がちっとも来やしない。

例え同じ撮影スタジオを使っていても、日付が違えば会える筈もないし、例え同じ日ではあっても、互いの仕事の時間が午前と夕方という具合に離れていれば、すれ違うことすら出来ないのが現実だった。

「今日はテレビ局の移動も多いですから、チャンスはありそうですよね?」

社さんの返事も待たずに、俺は願望を述べる。

無理だったと言われる前に、畳み掛けるようにして、俺の希望を社さんに押し付けることが、彼へのプレッシャーになるとわかっていながら、こういう言動を繰り返すことしか出来なかった。

今の俺には。

「すまん……なんかタレント部がバタバタしてて聞ける感じじゃなかったんだ。……椹主任もいなかったし」

「え?……そう……ですか」

「ごめんな。キョーコちゃんの仕事の仕方はちょっと特殊だから、事前に組まれたスケジュールだけ追っていても捕まえられないし、なんとかいい情報を掴みたかったんだけどなぁ」

そう。最上さんのスケジュールはスケジュール通りであって、スケジュール通りではない。

過密スケジュールの間には、細かな仕事がポンポンと不規則に入りこんでくるのだ。彼女の場合。

行列を作るようにして順番待ちをしているくせに、入り方に規則性はないそれらの仕事。

空き時間や場所に合わせ数多な仕事が数時間毎に組み込まれていくのだから、同事務所とは言え、所属も違う俺たちには彼女の現在地を把握することさえ難しかった。

「そう、ですね。ハァ~~」

今日も駄目なのかと、1日を支える希望を昼間のうちに全て失った俺にはもう、溜め息をつくことぐらいしか余分なことをする気がおきない。

あとはもう淡々と。敦賀蓮としての仕事をするだけ。

その為には、もうそろそろ移動を開始しなけばならない。気持ちを少しだけ入れ替え、車をスタートさせようとした俺の耳に、社さんの驚いたような声が聞こえた。

「おい、あれ、椹主任じゃないか?」

社さんの指し示した方に視線を向けてみれば、俺にも車に乗った椹主任の姿が見えた。

「珍しいですね、外出なんて」

巨大芸能事務所でタレント部の責任者をしている彼は、事務所に常駐するのも仕事のうちである。

故に彼が出かけるのは、責任者である彼が出向く必要がある何かが起こったときだけ。

「何かあったんでしょうかね?」

「そうだな。でも、そんなに焦りまくった顔をしていた訳でもないし、もう処理を終えて帰ってきたってとこじゃないか」

俺たちと入れ替わる様にして事務所に戻ってきた彼は、運転手に何事か告げて、足早にビルの中へと消えていった。

17に続く

次回キョコさんのターンです!


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