拍手からの移動のパラレルファンタジーです。

文中の人身売買についてはご不快に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ファンタジーの世界の人が馬で移動していた時代の話ですので、現実とは別と考えてお許しくださいませ。

あの森を目指して 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7

拍手御礼「あの森を目指して 8」

───なんだか、狭いわ。

キョーコが買った2頭引きの幌付き馬車は、小型ではあっても寝泊まりするには十分なサイズであった筈だった。

───それに、なんか遅い…。

基本は2頭引きだが、旅の最中に馬が1頭駄目になったときには残る1頭でもそこそこのスピードで引ける。それが売りのひとつでもあった東の国の古馬車。しかしながら、現在は2頭で引いているにも関わらず、スピードがどうにも上がらない。

───牛やロバよりは早いけどね。(涙)

御者台からチラリと背後を振り返れば、どこに行くにも最小限で他の人間が驚く程コンパクトだったキョーコの荷物が、今は馬車の荷台に山と積まれていた。

───まあ、途中で補給出来なくなった訳だし、これ位は必要だものね。

そして、御者台の一部を切り抜くカタチで作った覗き窓に視線をやれば、キョーコの旅行プランを大きく変える原因となった “荷物”が、馬車の下に設置した台車の上で、モゾモゾと動くのが見えた。

───もーー!あんまり動いたら、落ちちゃうかもでしょーー!ヾ(*`Д´*)ノ”彡☆

“荷物”に意識はない筈だが、痛かったり痒かったりする際に無意識に動くのは止められない。

「ハァ~、今日は暗くなるのが早そうだし、少し早めに野営準備しよう」

野営の準備自体は簡単だ。だが、今足元で蠢いている “荷物”の面倒がとてつもなく大変なのだ。

随分マシになったが、相変わらず臭いし、そして、重い。そして…恥ずかしい。

───今は意識がないからまだマシだけど、もし戻ったらどうしたらいいのかしら。ご自分でどうぞ?…いや、無理デショ…っていうか…

「私ってば、まだ嫁入り前なのにぃ~。うわーーん!破廉恥すぎわよぉっ!責任取ってもらうわよ、もーー!…って…私ってば…馬鹿みたい。お嫁になんか行ける訳がないのに」

脳内に浮かべてしまったモノ…浮かべられるようになるほどじっくり見てしまったモノの持ち主に責任を転嫁する発言をしてみるも、本気である筈がなく、そして万が一本気であったとしても実現不可能なそれに苦笑する。

───今からの私は、商売人でも剣士でもなく、医師もどきで薬師もどきなの!だから、そう!平気よ!

溜め息を吐き出した代わりに決意を飲み込んだキョーコは、“現在”の目的地に向かう為に走っていた細い馬車道から外れ、安全な野営場所を求めて薄暗い森の奥へと入っていったのだった。










次々と現われる、人の身体をなで回したり実験動物の様に甚振ったりする、母親よりも年上な厚化粧と言動が吐き気を催す程気色悪い女達。

到底が我慢できなかった。我慢なぞ出来る筈がなかった。

殺されてもいいから逃れたいと何度も何度も暴れ、やっとそういう場所からは逃れられたが、死ぬことはできず、自由にもなれなかった。

盛られた毒と怪我による熱と痛みで苦しい身体で、今度は鞭と棒で追い回される場所に放り込まれた。

狂ってしまったのか、追いかける人間が鬼にしか見えず、怖くて必死に戦った。

そこからしばらくは記憶がなかったが、次に気がついたときには狭い籠の中に閉じ込められていた。

鋼の籠ではなく、植物を編んで作った籠だったことに安堵し、これならいつでも壊して逃げられると、まずは身体を回復させようと大人しくしていた。

だが、身体は辛さがマシになるどころか、悪化している。

全身に毒がまわったのか耳はよく聞こえないし、目もよく見えない。

こんな状態では鬼から逃げることもできやしない。


意識は朦朧としているのに、何故か痛みと苦しいのはハッキリしている。

辛い。苦しい。

痛い、悲しい。


ダレカタスケテ…

トウサン、カアサン…


第9話につづく


注:一部のお嬢様へ。脳内に浮かべてしまったモノは下半身限定ではございません。妄想大爆発させてしまってごめなさい。それ、フライングです!←あ?


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