拍手からの移動のパラレルファンタジーです。

文中の人身売買についてはご不快に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ファンタジーの世界の人が馬で移動していた時代の話ですので、現実とは別と考えてお許しくださいませ。

あの森を目指して 1 / 2 / 3 / 4

拍手御礼「あの森を目指して 5」

夕食を済ませ、古馬車屋に馬が到着するのを待つ間に市場の露店を冷やかしながら歩いていたキョーコは、市場の外れで人買い屋が店を出していると聞き、そこに足を運んだ。

人買い屋があれば覗くというのは、異国まで足を運んで大きな商いをする者の常識である。自国出身の人間がそこの含まれていないか、その中に尋ね人が含まれていないかを確かめに行くのである。

裕福な家の子弟が遊学と称して出かけた先の異国で博打などに手を出してあげくということもあれば、盗賊に襲われた者がそのまま攫われ売られるということもある。

若かったり容姿が良かったりすれば下働きや娼婦として売られたり期間限定の奉公に出されたりするが、その値打ちがないと判断さえた者は家畜の様にこんな市で叩き売りされることが多いのだ。

特別な芸もなく、身体を売ることも下働きや力仕事も出来ない中高年の男女であれば、例え大店の跡取り息子であろうと貴族の子弟であろうとこの様な市で見つかることも多い。

商人は毎回国内を出る前に“尋ね人”の情報を入手し、旅先でその該当者が見つかれば買い取りというカタチで秘かに保護し、自国に連れ帰ってからは国を通して僅かばかりの報奨金をもらう。

この段階で大きなお金が動かないのは、身代金目当ての商売を防ぐ為である。しかし、大きな商いをする俗にいう大店の商人達は礼金や報奨金で儲けが出なくとも、熱心にこの人助けを行なう。

商売というのは人を相手にするものであるから、例えその時点で礼金が貰えなくとも「以後お見知り置きを」と伝えることが出来れば上々なのである。

良い行いをし、“高貴だったり金持ちだったりする相手” に信用されることや感謝をされることは、後々商売にも良い影響を与えるのだ。

同国の人間が家畜の様に売られている姿は、商売抜きにしても見ていて愉快なものではない。買い取り代金が高くはないこともあり、少なくともキョーコの国の商人は報奨金や将来の利益がなくとも自国の人間を見つければ、大抵は“自由だけは”与えていた。

今のキョーコは商人ではないが、国を出る前にはその一員として情報を入手していたこともあって、行かねばという義務の様なものを感じていた。

該当者を見つけても自分で国に連れ帰ることは出来ないが、買い取りを済ませた人間を国に送り返すノウハウは持っていることもあって、その足は迷うことなく人買い屋のある場所を目指した。



人買い屋は市場の外れに結構大きな店を構えていた。普通の露店の4倍はあるそこに、20人程の人間が身動きしづらそうなサイズの籠に一人づつ入れられ、商品として並べられていた。

売られている人間の半数は祖末な服を着せられた中年と呼べる時期を過ぎてそうな男女で、皆一様に疲れた顔に怯えた様な表情を浮かべていた。

残りの半数はこの辺りの国の人間ではないと一目でわかる若い男である。

怪我をして身体が不自由になっている者が多いのは、若いので身体を売ることも下働きも力仕事も出来る筈だったが、売られる前か売られた先で反抗して暴れたり逃げ出したりした際に怪我をした人間であると見て取れた。

前者は売り物らしく事前に身体を洗った形跡があるが、扱いが難しい後者はキツくはないが仄かに異臭を漂わせている者が多かった。

その中でダントツの臭いを放っていたのが再奥に並べられた男である。

───何この臭い!くっさーーーーいっ!


第6話につづく


皆様の予想とは違うと思いますが、あの方の登場です。
こんな扱いでごめんなさいー!(。-人-。)

「俺が、くさい?」

ヒイィィ(゜ロ゜;三;゜ロ゜)ヒイィィ


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