拍手からの移動のパラレルファンタジーです。

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拍手御礼「あの森を目指して 37」

薬を飲んで幌つき馬車で寝ていたキョーコは、翌日の夕方になって漸く“毒の森” の外まで出かけられると思える状態になった。

昼過ぎに目を覚ましてから、急場凌ぎで作った薬の効果が出たのだ。


毒を以て毒を制す。キョーコはこれを実行した。

勿論これは、「悪を排除する為に、他の悪を利用する」と言う意味ではない。

その言葉の元となった「毒に当たった人の解毒に別の毒を用いる」という治療の常識を“いつもより過激”に用いたのである。

現在準備段階の新しい薬は身体への刺激が過激になりすぎないように、使用する毒草を様々な方法で加工し、必要な成分だけを使おうとしているが、まだあと数日かかるその作業を短縮し、今直ぐ薬を完成させるのは不可能だ。

だから、キョーコは諦めた。

───とりあえず今動ける様にっ。

目覚めたあと重い身体を引きずりながら、馬車の下に置いた籠の中から既に摘み取ってはあっても加工を施していない毒草を数種選びだしたキョーコは、それを以前から飲んでいた薬と共に口の中に放り込み、念入りに咀嚼した後、ゴクンと飲み込んだ。

───これを飲み続ける訳じゃないし、毒に当ったって今更よ。だから…どうか効いて頂戴。

幸いにも、そのあと数時間また身体を休めたのち、キョーコは絶好調とは言えないまでもどうにか普通に見える程度には動ける様になった。

「よし!今から小屋に顔を出して、村に行こう!」

痛みに耐えている間に汗だくとなった身体を裏の水場で清め、顔色を上手く隠す化粧を施した後、キョーコは小屋に向かい、扉を開けた。

───な、何事っ!

キョーコを出迎えたのは、ぐちゃぐちゃと積まれたゴミの山だった。

ドア付近のその惨状に驚きながら小屋の中に入ってみれば、中も酷かった。

何故か床の真ん中だけは円を描く様に奇麗にスペースが空いていたが、その周囲の床には所狭しと開封した食べかけの食品や空の樽が転がっていたのだ。

そして極めつけには…

───ぎゃーー!な、何なのーー!!

ベッドの上に、おかしな生き物が転がっていた。

ガコン!

《!?…あっ!》

「ひぃっ!!」

驚きのあまり、床の空樽を蹴飛ばしてしまったキョーコは、その音で目覚めたそのおかしな生き物が自分を凝視しながら、にちゃりと笑う姿を見て声にならない悲鳴を上げた。

《やっと来た…》

ノロノロとベッドから起き上がったそのおかしな生き物は、ゆっくりと車椅子の上にその身体を移動させ、部屋の入り口で棒立ちになっていたキョーコの側までやってくると何やらしゃべりだした。

《ドリンクを飲み終わったから、乾燥ギュウギュウしかなくて、でも効果がないから千粒のがほしい》

「は?」

《もっともっと食べないと駄目だから…》

「へっ?」

《もっと食べないと元に戻れなくて嫌だから…うっ!ブワッ!》

「嫌ぁあああーー!!」

腹部だけを異様に膨らませたそのおかしな生き物は、口からおぞましい色をしたドロドロの液体を噴射させ、小屋の惨状を更にレベルアップさせたのであった。

第38話につづく
ガリガリ君やってしまいましたYOー!
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