拍手からの移動のパラレルファンタジーです。

あの森を目指して 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 11 / 12 / 13 / 14 / 15 / 16 / 17 / 18(アメンバー限定)or18(アメンバー限定を読めない方はこちら) / 19 / 20 / 21 / 22 / 23 / 24 / 25 / 26 / 27 / 28 / 29 / 30 / 31 / 32 / 33 / 34 / 35 / 36 / 37 / 38 / 39 / 40 / 41 / 42 / 43 / 44

拍手で公開した前半部分の続きも加わっています。

拍手御礼「あの森を目指して 45」

《貴方には、タカトウ(貴島)さんと一緒に男性用の大部屋に泊まってもらいます。彼が案内してくれるのでついて行ってください。あとで私もその部屋に伺って、貴方にこの宿に泊まるためのルールなどを説明しますので、それまでは部屋で休憩していてください》

そう言われた男は、キョーコと同じ部屋に泊まれないことにはガッカリしたが、皆で同じ部屋に泊まるということは護衛のタカトウ(貴島)という男も含まれるのかもしれないと、考えを改めた。

───彼女と二人っきりでなら同じ部屋がいいけど、他の男に彼女の寝顔とかを見せるなんて絶対に嫌だ。

そこら中にいる他の男も嫌だったが、タカトウ(貴島)には特に見せたくないと思ってしまう男である。

長身ではあるが、護衛としては細身と言えるタカトウ(貴島)は、女にモテそうな整った顔をしていた。

重量感はないがその動きは身軽で、左右の腰に下げている細身の剣は二刀流のモノに見えた。

キョーコの説明にあった金匠のお墨付きや、彼の自信に溢れた態度からしても、相当腕が立つのだろうと推測できる。

───俺はまだこんななのに、彼奴は彼女の前で格好よく活躍するんだ。ああ、想像するだけで、ムカムカする!(ノ-_-)ノ~┻━┻

ここまで独占欲と嫉妬心を持っているのに、これが恋心だとは未だに自覚していない男の現在の顔は、一見大事な娘を男になぞやるものかと怒りを露にする父親のようだったが、内面はそんな立派なものではない。←小中学生?

───俺だって元の身体に戻れれば、見た目だって、強さだって負けないのに。ಠ_ಠ

だが、いますぐ戻りたくとも、まだそれには時間がかかることは、彼にもわかっていた。

───でも、ゴロツキが複数いたら…俺が座ったまま彼女と荷物を守りきるのは…流石に…無理だよな。彼奴は気に入らないけど、この街にいる間だけなんだろうし、我慢しよう。(●・̆⍛・̆●)

まだまだ自分の攻撃力と防護能力への認識は現実逃避レベルに極甘な男だったが、キョーコを守ってくれるなら我慢してやろうという、タカトウ(貴島)とキョーコが聞いたら呆れ果ててしまう様な結論を出し、嫌々だが現状を受け入れることを決めた。

───それにしても、遅いな。休憩しろってのは、少し寝ていろってことだったのかな?

あとで部屋に行くと言っていたキョーコはまだ姿を現さないし、「少し 外 に 出ます。すぐ 戻り ます」と部屋から消えたタカトウ(貴島)もまだ戻らない。

───彼女は女性だし、野営続きで汚れた身体を清めたり、着替えたりしてるのかも?タカトウ(貴島)は雇い主がいない間に休憩してるに違いない。俺も外で役に立てる様ちょっと休んでおこう。

待ちくたびれた男は、退屈のあまりついつい閉じそうになってしまう己の瞼との戦いをやめ、沸き上がる眠気に身を任すことに決めた。

森を出る前に “貴方用です” とキョーコから手渡された鞄には、着替えとマントが各1着と緊急用だと言う極少量の薬が入っているだけで荷解きする程の物ではない。

財布は持たされておらず、残りの財産はと言えば身につけている服と手の持っていた杖のみな男は、鞄と杖をベッドの下に放り込んだあと、ただの板ともいえるベッドに横になり、そっと目を閉じた。




キョーコは案内された部屋の床に背負っていた旅行鞄をそっと降ろすと、中から荷物を取り出していった。

“毒の森” を出る前に新たに作った薄くて軽い皮製の鞄は細長くはあるが、背負っているキョーコの背中から大きくはみ出すほどのサイズではなかった。←特殊サイズなので手作り

しかし、そこから出るわ出るわ。

衣類や化粧品に、薬や財布を含む貴重品。

大事な物を包むのに重宝する丈夫な油紙を畳んだものや、これまた何にでも使えて便利な数種の紐と裁縫道具。

お気に入りの石鹸と、色々役立つ香油類。

ここまでは沢山ではあるけれど、収納されていたことに誰もが納得できる範囲の量の荷物であった。

しかし、そのあと取り出されたコンパクトに畳んではあるが分厚いマントや大量の投剣や針剣は、どう見ても容量オーバーな荷物であった。

最後に出て来た、長剣と短剣、そしてキョーコによって役に立たない大荷物であると認定済みな大剣に至っては、異次元から取り出したとしか思えない物であった。

ドラ◯もんもビックリである。←この世界には猫型ロ◯ットはいません。


ほぼ尽きている水を含む保存食の収納容器や、野営用の布やロープ類、ランタンやオイル類いは馬車に積んだままである。

それら野営用の細かな装備も盗まれる筈の無い物とは言えなかったが、盗まれるとしたら馬車ごとである。高価な馬と馬車を守ってくれるこの宿の管理下でなら、多少の荷を積んだままにするぐらいのことは、気にするに値しないことであった。


荷物を出し終え、旅装を解いたキョーコは、宿の者に運んでもらった湯を使い身体を清めたあと、市場などを回るときに重宝しているお手製の服に着替えた。

───今日は調子の良い口車になんて乗らない “やり手の商人風”じゃなくて、絡まれにくい “旅慣れた剣士の装い” にするとして…

この街では護衛を1人雇ってはいるが、ゴロツキの威嚇には剣士が1人よりも2人いる方が有効である。

まだしっかり歩けもしない男は、勿論戦力外である。

しっかりと面倒を避ける為には自らも威嚇の役割を果たせるだけの見た目を作っておいた方が良い。

そう考えたキョーコは、なるべく強そうに見せようと、馬車での移動中に身につけている小振りな“護身”用の剣を剣帯から外し、威嚇に最適な大小の剣を身に付ける。

───この剣は威嚇には有効だけど、これでどこまでも撃退出来るかって言われると自信ないのよねぇ。

剣術でも「筋は良いし、傭兵や護衛任務も十分出来る」と、故郷の街の師匠にはお墨付きを貰っているが、攻撃に関してはそれに特化した訓練を受けた期間が短いだけに不安がある。

───ま、長い剣は威嚇と防御用道具だとして。体力使って汗だくになるのも嫌だし飛び道具を多めにもって行こう!←うら若き乙女ですから汗だくなんてノンノン!

「キョーコの剣技が確かなことを歩きながらアピールしてくれる便利な剣」だけでは、相手の人数が多いときに不便(←)だと、大量の投剣や針剣を服に潜ませるのも忘れない。

旅の最中に治安の悪い道を通る際には、多勢に無勢となることも多いので限界まで身につける飛び道具だったが、街中では買物の邪魔になるので最低限しか持ち歩かないのが常である。

しかし、1人旅ならともかく、大人一人を怪我なく守り切るには、それなりの道具が必要であった。


───あとは、彼に武器を渡しておくべきかよね。うーん。余ってる長剣と短剣は、持ってるとコレを目当てに斬りつけられちゃいそうね。でもまあ、どうせ剣を振り回す体力もないし…、剣は小さいのでいいわよね。

戦えない男に “いざとなれば売ることもできる” 剣を所持させるのは危険だと判断し、腰から外していた愛用の小振りな護身用の剣を貸すことに決めた。

その後、床に広げた荷物をしばらく見つめたあと、あの男に渡さずにいる大剣とそのおまけについていた服を油紙に包み、紐でしっかりと留めたあと、空になった鞄の中に戻した。

衣類や化粧品、分厚いマントや石鹸や香油類は、部屋にある棚の上に置き、分厚いマントはドアの側の壁掛けにひっかけた。

痛み止めの薬は服の隠しに仕舞い、そこに入り切らない薬とと余っている長剣と短剣は、部屋に設置されていた鍵付きの貴重品入れに入れた。

───これで、よしっと。あ!お化粧!!

身を清めた際に落とした化粧を、今度は少し大人びたキツい印象になることを意識してもう一度施した。

剣を帯びていても、気の弱そうな若い娘では威嚇にはならない。女王然とした笑顔で鏡の中の自分を見返したキョーコは満足げに頷くと、男性用の大部屋に向かったのであった。


第46話につづく

キョコさん、戦う気満々?
*拍手はこちら ✧˖˚⁺\( ̄▽ ̄)/⁺˚˖✧*
↑ ↑ ↑
クリックで拍手できます。
拍手やコメ欄に、感想コメントをいただくと魔人がやる気を出します。←単純


「あの森を目指して」では、まずダーーッと勢いで書いたものを拍手御礼として出し、一晩おいて頭を冷やしたあと(?)、加筆と修正をした上でアメバ記事で公開し直しています。加筆時に設定が変更になることも多々あります。拍手のみを読んでくださっている方は内容が繋がらない場合があるかもです。もしお時間が許す様でしたら、外に移動後もまた読んでいただけると嬉しいです。m(_ _ )m ←またというところが欲張りですみません。