拍手からの移動のパラレルファンタジーです。

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拍手御礼「あの森を目指して 50」

男が楽しみにしていた “キョーコとの会話を楽しむ” 筈の昼食タイムは、気に食わない男と食べる量を張り合う「大食い “我慢” 大会」の時間となった。

男の中で秘かに行われていたその大会の参加者にされたタカトウ(貴島)と店内の他の客達にとっては、「食べ放題を満喫」していただけの時間で、ちっとも我慢などしてはいなかったのだが、勝手に挑んだ男だけは1人自滅の道を歩む結果となってしまった。

───うっぷっ!き、気持ち悪いっ!

肉汁タップリのジュシーな肉饅頭は大変旨いと評判な品だったが、限度を越えた量を平らげた彼にとってはそれは「脂っこくしつこい、胃がもたれる」食べ物と言う印象しか残らなかった。




《食事ですよ!馬車を降りてください》

《わかった》

荷台の男と共に馬車を降りたキョーコはタカトウ(貴島)に「行ってきます」と声をかけたあと、店内の席に向かった。

少し昼時を過ぎていたこともあり、タカトウ(貴島)オススメの肉饅頭の店はそう混雑しておらず、すぐにテーブルにつくことができた。

《私は馬の世話をしてきます。貴方はここに座って待っていてください。すぐにタカトウ(貴島)さんが来ますから》

空いている席に男を座らせたあと、キョーコは店員に何事か告げ、店の外に出ていった。

───馬?そんなのあいつにやらせればいいのに。



男を店内のテーブルに残して店の外に出たキョーコは、自分用に購入した肉饅頭と花茶を手に馬車に戻り、タカトウ(貴島)に店内での男の世話を頼んだ。

宿周辺程治安の良くないエリアの安価な食事処では、店の裏にある馬車を停める場所の提供は受けることが出来ても、その荷を守るサービスまでは受けられない。

金持ちなら専任の御者を待たせておけば問題ないし、そうでなくとも訪れる者が複数なら交代で店に入り食事をすればいい。しかし、見張りに割く人員がいない場合には、店先で買ったモノを馬車の中で食べることになる。

キョーコも、護衛に雇ったタカトウ(貴島)と交代でなら店内で食べることも出来たが、彼女はそんなことで時間を無駄にするつもりはなかった。今朝のお茶タイムはある意味特別だったのだ。

「お待たせしました。オススメの肉饅頭食べ放題コースを2人分申し込んできましたので、好きなだけ食べてきてくださいね。支払いはもう済ませてきましたので、お気になさらず」

雇い主であるキョーコからのこの様な気前の良い申し出は、タカトウ(貴島)にとって嬉しいものではある。

しかし、本日ここまで特別に疲れるような仕事は全くしていない上に、既に一般的に見れば高いと言える護衛代金を受け取っている身である。

「え?午前中にケーキを御馳走になってますし、ここは自分の分ぐらい払いますよ?」

大富豪の親父相手ならともかく、そう裕福にも見えない年下の女性にそこまで世話になるのは、女性には優しくするべしと言う彼のポリシーに反することでもあった。

「いえ、護衛契約なのに彼の食事の付き添いまでさせてしまうのですから、これぐらいの負担は当然です。こちらのお店は食べ放題コースでも凄く安いので、お礼にもならないでしょうけど」

しかし食事代が護衛以外の仕事に対しての礼だと言われれば、突っぱねるのも失礼かもしれないと、キョーコが気を遣わない程度の返礼を返すことで食事は有り難く御馳走になることにした。

「なんだか申し訳ないな。うーん。じゃあ、午後のお茶菓子は俺がプレゼントします。てなことで、ここは御馳走になりますね。それじゃ、行ってきます」

「クスクス。有難うございます、いってらっしゃい」

その返礼案を可愛らしい笑顔で受け入れたキョーコに、タカトウ(貴島)もまた笑顔を返し、彼は店内に入っていった。



タカトウ(貴島)を見送ったキョーコは、馬車の荷台に積んでいた水と飼葉を馬に与えたあと、御者台に戻って肉饅頭を頬張った。

ちなみに、持ち馬の管理と世話は護衛任務に含まれる筈もなく、キョーコにとっての大事な仕事のひとつとなっていた。

タカトウ(貴島)が馬を構うのは、護衛任務をする上で相棒となる馬に機嫌よく乗せてもらう為であり、キョーコのそれとは目的が違うのである。

───うわっ、ジュシーで美味しい。

少し小振りな肉饅頭を5つペロッと平らげたキョーコは、花の香りのするお茶を楽しみながら、男達の帰りを待った。




「彼女 は?」

キョーコが言っていた様にタカトウ(貴島)が店に入ってきたが、その後ろには待ち望んだ人ではなく、大量の肉饅頭を積んだ大皿を抱えた店員の姿しかなかった。

「彼女、は、忙しい、です。俺、と、貴方、ここ、で、これ、食べる」

───忙しい??馬がどうとか言ってたけど、昼飯は食べる筈だし、また戻ってくるんじゃないのか?

「彼女、食べる?」

「彼女、は、馬車、で、食べ、ます」

そう思ってもう一度キョーコのことを聞いてみたが、タカトウ(貴島)の返事は期待したものではなかった。

しかし、いつまでもゆっくりとしゃべってはいられない。

彼等のテーブルに置かれていた空の皿に、さぁ食えとばかりに肉饅頭を山盛りにした店員は、「おかわりをほしいときは合図してください」と早口で言い残してから、忙し気に別のテーブルに向かった。

「肉饅頭、好き、な、だけ、食べ、て、ください」

そう男に告げたタカトウ(貴島)は各テーブルに設置されている花茶入り茶瓶から、2人分の茶を茶碗に注ぎ、自分達の前に置いた。

そして、横に座る男に「どうぞ」と声をかけたあと、肉饅頭を次々と頬張り始めた。

───どうして、コイツと二人で飯を食わなきゃいけないんだっ!

そうは思っても、食事をしろと連れてこられた店を勝手に出る訳には行かないし、男には朝誓った目標がある。

───くそっ!もういい!こいつのことは気にせず、モリモリとしっかり食べて、太るんだ!

タカトウ(貴島)や周囲の席の男達は、大皿を抱えた店員が側を通る度に肉饅頭をおかわりしていた。

1人出遅れた気がした男は、周囲の男達に負けじとおかわりを繰り返し、結局50個もの肉饅頭を平らげたのだった。

───うぷっ!しまった食べ過ぎたっ!いやでもっ、吐かなければいいんだっ!

馬車に戻った男達を、キョーコは御者台でお茶を飲みながら笑顔で迎えてくれたが、荷台に向かった男の肉饅頭と花茶でパンパンにした腹に目をやったあとは、それは苦笑いに変わった。

《食べ過ぎで気分は悪ければ、寝ててもいいですよ。これから荷が増えますから、あまり長い時間は寝ていられないかもしれませんが》

《…少しだけ…寝る》

結局男はその日の午後どんどん増えていく荷物の隙間で寝るだけの時間を過ごすこととなってしまった。

第51話に続く。
遂にあの森が50話到達!
まだ設定メモも作ってないのに恐ろしやー!←作ってないことが恐ろしいでしょ
またもや食べ過ぎた男。懲りないですねー!
明日はキョコさんに頑張ってもらいます?
そこまで行ければですけど。

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「あの森を目指して」では、まずダーーッと勢いで書いたものを拍手御礼として出し、一晩おいて頭を冷やしたあと(?)、加筆と修正をした上でアメバ記事で公開し直しています。加筆時に設定が変更になることも多々あります。拍手のみを読んでくださっている方は内容が繋がらない場合があるかもです。もしお時間が許す様でしたら、外に移動後もまた読んでいただけると嬉しいです。m(_ _ )m ←またというところが欲張りですみません。