かばぷー様企画 【ぎょっ!?アンタ何したの??】に参加です。
彼は一体、どんな事をやらかしたのか?
どんなシチュエーションだったのか?
とにかく無邪気なキョコさんのせいにして、何かをしでかしてしまう蓮さんを書いてください。
というミッションであります。
お話のベースは、かばぷー様の作品『無邪気な君のせいだから』です。
『彼氏ではないんですけど、』
「ごめんなさい!あの…今夜のお約束なんですが、少し問題がおきちゃいまして…大変申し訳ないんですが、お断りさせていただきたいと…あの、敦賀さんっ、本当にすみません!大先輩に対し、ドタキャンなんてあり得ないとは思うのですが……本当に、本当に、申し訳ございません!」
20時に事務所で落ち合い、食事をしよう。俺としては、やっと取り付けた最上さんとのデートの約束だ。
この2ヶ月、俺は猛烈に忙しかった。
同じく、最上さんもまた、休みが全く無いほどのハードスケジュールだったらしい。
そのせいか、テレビ局やスタジオですれ違った際に、挨拶程度の言葉を交わすことはあっても、自宅に招いたり、一緒に外食したりする機会はゼロだった。
そう。ゼロだ。
最上さんとの「まともな接触」が、ゼロ。
頭を撫でることも、手を握ることも、抱きしめることも出来なかった2ヶ月は、俺にとって辛いとしか言えないものだった。
だから、久しぶりに仕事が早く終わる今日のこの日に会いたいと、社さんに頼み込んで、「京子」のスケジュールを調整してもらった。
俺の我儘な頼みのせいで、明日からの最上さんのスケジュールがキツくなるのは申し訳ないけれど、俺の方は今日のオフを逃したら、敏腕マネージャーの手腕を持ってしても、次の機会は1ヶ月以上先になってしまう。
そんなの耐えられる訳が無い。
「少し問題って何?遅れるってこと?それなら、待つから気にしないで!」
約束をキャンセルなんて、今の俺には無理だ。受け入れられない。これ以上君に会えない時間が増えるなんてこと、耐えられる訳がないのだから。
そうだ。遅刻ぐらいなんてことはない。
まさかのてっぺん越えになることはないだろう?そんな気持ちで、最上さんからのキャンセルを拒否する。
「遅れると申しますか…あの………今、自分がどこにいるのかわからないんです。あ!大丈夫です!タクシーを捕まえますので!!さっきも通ったんですけど、他の方に遅れをとりまして!でも、そのうち乗れる筈ですので、心配しないでください!」
どこにいるかわからない?
それで、心配しない筈がないだろう!?
大丈夫じゃない!
全然大丈夫じゃないんだよ!!
俺が!!
この日、俺と会う前に、何故か最上さんは、不破と会っていたらしい。
どんな用事があったのかは教えてもらっていない。
ただ、別れ際に、「底辺芸能人で貧乏なお前に、俺様が豪華な晩御飯を奢ってやる!」と言ってきかない不破を振り切ろうとした最上さんが「大事な先約があるから!」と告げた途端に、奴がマジギレして、車に押し込まれたとか。
不破には、わかったんだ。
最上さんが、俺と待ち合わせをしているのだと。
車で拉致された最上さんは、郊外での仕事に向かうという不破の嫌がらせのせいで、駅は近くに見えず路線バスも通らないが、危険度は低そうな雰囲気の町にある、学校らしき建物の前に、放置されたらしい。
校名の書かれた正門前ではないので、その場で場所は特定できず。
住宅街の奥に位置してそうな正門まで歩いて校名を調べるより、今いる道路脇に留まりタクシーを捕まえた方が手っ取り早く帰れるだろうと、置き去りにされた場所から俺に電話をかけたという最上さん。
放置できる筈がないだろう!?
幸いにも俺は今、所属事務所にいる。一人で行動することの多い売れっ子の仲間入りをした女優(兼タレント)の安全対策が、利用できる場所に。
俺は最上さんに折り返し電話するので、不審者に気をつけて、安全そうな場所にいてくれと告げて、電話を切った。
そこから、猛ダッシュでタレント部に向かい、椹さんに事情を話す。
不破はもしも最上さんが、犯罪被害にあったらどうする気だったのか。平和そうな街に見えても、最上さんは女性だ。ファンの男に発見されて、襲われる可能性がゼロな訳じゃない。
椹さんに、誘拐まがいなことをした不破へのペナルティーを頼むとともに、携帯のGPSで最上さんの居場所を調べてもらう。
腹の立つことに、最上さんがいる場所は、事務所から結構遠い。この時間帯に渋滞するエリアも挟んでいるから、車で2時間はかかる。迎えに行って帰ってくる。それだけで、もう時間は夜中だ。
彼女も俺も、早朝からではないが、明日も午前中から仕事がある。不破のお陰で、今日のデート計画が台無しだ!
だけど、俺は諦めなかった。
タレント部のスタッフに頼んで、最上さんが最も早く安全に、俺と合流できる方法を探してもらったのだ。
「誰か、最上さんのいる場所の近くで仕事してませんかね?」
焦るあまり、怒鳴るようにして尋ねてみれば、期待のできそうな応えが返ってきた。
「俳優部はわかりませんが、タレント部なら、大木大五郎さんのロケ現場が一番近いですね…20分ぐらいでしょうか?」
「大木さんのマネージャーさんに保護してもらって、事務所までは無理でも、せめて最寄りの鉄道駅まで送ってもらえませんか?」
使えるものなら、何でも使う。大御所タレントのマネージャーだろうが、彼女を安全な場所に送るのは「同じ事務所の人間」の仕事な筈だ。
「いや、それはちょっと」
何がちょっとなのか、理解できない。最上さんの危機をこの人たちはちゃんと理解してくれているのだろうかという疑問と怒りが俺の声をより荒立てる。
「なら、警察に連絡した方が良いんじゃ?」
「いや、ちょっとそこまでは…」
そこまでのことじゃない?
人気若手女優が誘拐され、見知らぬ場所に放置されているのだ。これは危機と言わずして何と言うのだ。
だが、流石は緊急対応に慣れた芸能事務所である。あっという間に迎えの車を手配してくれた。
「それより、こちらでタクシーを手配した方が早いです。今連絡を入れました。このあたりだと、そうですね…少し先にタクシーの通りそうな大通りがあるので、あと5分ぐらいで京子のいる場所に迎えに行けると思います。そのままタクシー移動は時間がかかりすぎますので、電車の駅を目指すとして…一番近いA駅には10分ぐらいですけどローカルですから、電車の本数が1時間に1本と少ないし、主要駅まで50分ぐらいかかりますね、あ、30分かかりますけど地下鉄のB駅までタクシーで行って、そこから20分電車移動したらC駅ですね…」
「C駅なら、ここから45分もあれば着きますよね。俺、そこまで迎えに行きます!」
運転中は携帯が使えない。
椹さんに、最上さんへの連絡を頼み、俺は車に飛び乗った。
1時間後、俺は無事最上さんを捕まえることが出来た。
安堵とともに、事務所に報告とお礼の連絡を入れてみれば、電話に出たのはもう家に帰っていた筈の俺のマネージャー社さんだった。
「そうか、キョーコちゃんが無事でよかったよ。不破の件は、俺からも厳しく対処してもらえるように頼んでおくから、安心しろ。でな…れ〜ん、お前……鬼のような形相で、タレント部に駆け込んだらしいな。京子が不破に攫われて置き去りにされたと大騒ぎしたとか?あの温厚な敦賀蓮が、怒鳴りまくっていたって…………俺に連絡が入った。今も、事務所内は大騒ぎだ。キョーコちゃんが気にするだろうから、何とかしておくけど………はぁ┐(´д`)┌。まあいいや。二人とも明日も仕事なんだから、キョーコちゃん補給はほどほどにな。とりあえず、お疲れ!」
問答無用で、俺のマンションに連れ帰った最上さん。
自宅内に入った瞬間、堪らずに彼女を抱きしめた。
「もう二度とこんなことは、ごめんだ!」
「すみません、ご心配おかけしました。あの、でも、大丈夫だったん」
「俺が大丈夫じゃない!今から会えると思ってた君が、攫われたんだよ?そして、どこだかわからない場所に置き去りにされた!何かあったらどうするんだ!君は女の子なんだよ!?」
「何もないですって」
「いや、あったかもしれないだろう!君は危機感が薄すぎる!」
「いやいや、ご心配おかけして、そして、約束が守れず申し訳なかったですが、私ですので身の危険は…うぐっ!敦賀さん、苦しいです!ほ、骨が砕けます〜〜。うぐぐ、私如きがお手間おかけしちゃたので、お怒りなのはわかります、がっ!く、苦しいです〜」
「ほら、俺がちょっと力を入れて抱きしめただけで、君は死にそうになってるだろう?最上さんは、か弱い女性なの!わかった?」
最上さんを抱きしめていた力を緩め、目を合わせて、断言する。
全力で抱きしめたら、壊れちゃうだろう儚い彼女。
俺の宝物を守るのは、俺だ。
「今度何か危ないめに遭いそうになったら、まずは全力で逃げること。遠慮せずに周囲にも助けを求めること!俺にすぐに連絡すること!次に似たようなことがあったら…この家に閉じ込めるからね?」
さっきよりは優しく、最上さんを抱きしめなおす。
猛烈な怒りと、深い安堵。
強く揺れる感情を吐き出さずにはいられない俺は、最上さんの頭に数えきれない程のキスを送った。
その後、押し付けた俺の胸のせいで呼吸困難になった彼女をリビングまで抱いて行き、膝の上に彼女を乗せる形でソファーに座った。
とにかく、最上さんを離したくなかったのだ。
結局、彼女の腹の虫が限界を告げるまで、俺は彼女を抱きしめ続けていた。
運の悪いことに、いや、運の良いことに、我が家の冷蔵庫は空。
食材ストックのある最上さんの家まで徒歩で10分。
俺は泊まる気満々で、最上さんが一人暮らしをしている部屋に押しかけた。
「最上さんご馳走様。美味しいうどんだった。お腹一杯になったから、もう寝たい。炬燵って気持ち良いね。このまま寝ていい?」
俺が、食後にすることは、一つ。自宅に帰らないことだ。
「粗食ですみません。あの、お炬燵で寝たら、風邪を引きますし、身体に悪いです!敦賀さん、明日も朝からお仕事ですよね?お客様用のお布団もありませんし、私のベッドをお譲りするにしてもサイズが!しっかり身体を伸ばして寝ないと、疲れが取れませんから、ちゃんとご自宅に帰って寝てください!ほら、私がお送りしますから〜!」
「君が送ってくれても、その後一人で帰せないだろう?まあ、君が俺の家に泊まってくれるならそれも良いけど、今日は君の家が良い!初めて来たんだし……俺は帰りたくない。って言うか、帰らないっ」
「も〜〜、お炬燵の住民にならないでください!」
俺は帰りたくないのだから、最上さんちの住民になれるなら、炬燵でも、ベッドでも、どこにでも住み着きたい。
「うん、わかった。ベッドに行く」
でも、炬燵よりベッドの方が、最上さんと過ごすには適しているので、選ぶならベッドだ。
「きゃ〜〜、どうして私を抱き上げるんですか!って、無理無理無理!セミダブルにしたとはいえ、所詮庶民サイズのベッドです。敦賀さんには無理です。そして、私と二人なんて、もっとむりです〜!離してください〜!」
「無理じゃない。くっついて寝れば、寝れる。ほら、最上さん、ネンネ〜」
「子供扱いしないでくださいって!!私に巻きついたまま寝ないで〜!」
争うこと、1時間。根負けした君のおでこにお休みのキスをちょっと多めに送った後、俺は久しぶりに穏やかな気持ちで眠りについた。
───明日の朝は、絶対に最上さんより早く起きて…こっそりキスしよう。
最上キョーコに恋する敦賀蓮は、朝から忙しいのだ。
キスして。
朝ごはんを一緒に食べて。
自宅に帰ってシャワーを浴びて。
車で最上さんを迎えにきて、彼女の仕事場まで送る。
その後は、事務所のみんなに口止め工作。
社さんに頼んで、高級チョコでも配るか…
ああ、今日の騒ぎとこのお泊まりを最上さんが「気にしない」ように、なんとか言いくるめないと。
本当は、朝になっても、最上さんを離したくない。
最上さんともっと親しい仲になりたい。
でも、まだ告白はできない。
俺を受け入れてくれるという確証がないと、怖くて動けない。
でも、許されるものなら、せめて…
君を抱きしめることだけは…
俺にだけは、それを許してほしいと思う。
許してもらえないと、俺はおかしくなっちゃうからね?
それもこれも、俺の腕の中で、無邪気に眠っちゃう様な君が悪いだよ?
こ〜んな可愛い顔を俺に見せる君が…
ちゅっ。
おやすみ、俺の最上さん。
fin
自信がないながらも、自動書記スイッチオンでカキカキカキカキ。
なんとか年内納品できました。(‘▽’)ノ♪