こちらは、りーちゃん&セーちゃんによる【反撃の乙女と狼狽える破壊神企画】です。
コラボ連載作『純情乙女の危険なあしらい』は、元旦からスタートしています。
まだまだ続きますので、お楽しみ頂けたら嬉しいです♪
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スタート話はこちらです。
→『破破壊神がやって来た』(一葉梨紗作)
1/ 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9・完結
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『純情乙女の危険なあしらい』 1 / 2 / 3 / 4(リー) / 5(リー)
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反撃の乙女と狼狽える破壊神企画
『純情乙女の危険なあしらい 6』
その後日のこと。蓮は盛大に悩んでいた。
……あああ、俺ってやつは!!!!
好きな女性に対し、淡い恋心なんてものを越え、慈しむ愛なんてものを抱くには至らない男の考えることは単純だ。
……そう、俺はシタいよ!シタいに決まってるじゃないか!!だけど、それはまだ無理だ。俺としてはあまり考えたくはないけれど、そんなことはまだまだまだまだ、まだまだ当分出来ないことはわかっている。
……うん、わかってるんだよ、俺だって!!
ちゃんと、わかってはいるのだ。
そう。もしも、将来奇跡が起きて、キョーコが蓮のことを好きになってくれたとして。相思相愛なのだから、キスぐらいはするだろう。キスすら我慢なんて有り得ない。
でも、そこからはきっと長い長い道のりとなる。相手はあの最上ョーコなのだ。キスを交わす恋人という関係になったことに慣れるだけで、数ヶ月ぐらいはかかる筈だ。これがかもしれないレベルの予想ではなく、現実であることを蓮は理解している。
生まれ育った母国での経験や、この日本で日頃受けまくっている女性からの熱烈アピールからすれば、蓮の場合はお付き合い初日に女性の方からシタいと言ってもらえる可能性が結構高い。
蓮から誘えば、ほぼ100パーセント……下手したら、お付き合いしなくても、出来ちゃいそうだ。なんせ敦賀蓮は、抱かれたい男No.1の称号持つ男なのだから。とは言っても、相手が1夜限りの関係で満足してくれる保証はなく、あとあとしつこく付きまとわれたりするであろうことを考えれば、面倒としか言えないそんな関係はお断りだ。
だけど、相手がキョーコなら、話は別だ。
キョーコから誘ってくれたら、どんなに良いか。蓮の誘いに乗ってくれるなら、どんなに嬉しいか。
あの子から「今夜どうですか?」な〜んて誘ってもらったり、今からシタいと言えば簡単にさせてくれたり?告白してお付き合いしなくても、出来ちゃったり?ちょっと喜びそうになる自分にブレーキをかける。
……逆に言えば、シテもお付き合い出来ないってことになるじゃないか!
それは悪夢だ。そして、この妄想の女性は最早最上キョーコではあり得ない。
……なのに、なんで!!あああ、俺ってやつは!!!!
蓮の思考は同じところをグルグル回り続けている。
……いくら何でも純情乙女のあの子のこと。さすがにこれ以上のことは出来るまい。なんて安心してた俺の馬鹿野郎!!
……俺は、あの子を追いかけてて良いのか?そのうち脳内妄想で済まなくなって、無意識に襲っちゃうんじゃないのか?
キョーコにその自覚が無くとも、そのテのことを言われたら頭が勝手に妄想力を高めてしまうと言う自覚はあったが、まさかのあそこまで…と蓮はショックを受け、自分という男が恐ろしくなっていた。
いつもは困らされているキョーコの曲解思考を、この時ほど求めたことはなかった。頼むから、今回だけは…天然記念物的乙女な斜め上思考で処理してほしいと、心から願った。
今日、あの時の蓮を…キョーコはどんな目で、どんな気持ちで見ていたのか。そんなことを考えれば考えるほど、蓮の中で余裕が消えていった。
実は今日の蓮はツイていた。
「 今日のお昼は、もしかしたらキョーコちゃんと一緒に食えるかもしれないぞ。あっちの撮影スケジュール次第だが、同時間帯にTTBでの仕事があるからな。キョーコちゃんの方が移動が早いから、40分ぐらいしか余裕はないけど、局内の施設なら余裕だろ? 」
朝一番にその情報を聞けたせいで、心の準備が出来ていた。今度こそ逃すまいと、心に誓い、実際キョーコを捕まえることにも成功した。
中途半端な脅しでは、相手にしてやられる。逃げられたくなければ、ヤラれる前にヤルしかないと、殺気に近いレベルの怒りを遠慮せずにぶつけた。
「 今度こそ、逃がさないから……ああ、まだ……喋らなくて良いよ。君の話は落ち着いて聞きたいからね 」
キョーコに喋らせなければ、蓮が脳内妄想の旅にでてしまう危険は少ない。徹底的に、二度と逃げられないように!全面降伏させ、そのあとじっくりと尋問する。これが蓮の作戦だ。
壁際に追い詰めたキョーコが、真っ青な顔でガタガタ震えだしたのをみて、成功を確信した。
「 こんなに震えて……寒いのかな?大丈夫、俺が温めてあげるから 」
やっと捕まえたのだ。嬉しすぎて、抱きしめずにはいられない。それでも、完全に油断はできない。今回は自爆行為とも言える己の妄想スイッチを絶対に入れてはならないと、腕の中にいるのは、好きな女性ではなく、逃亡癖のあるペットだと、自分に言い聞かせていた。
蓮によって、壁際に追い詰められていたキョーコは、ひと昔前の女学生の定番登場シーンのように、両手でカバンの持ち手をギュッと握った状態で固まっていた。
蓮の発する尋常じゃないレベルの怒気に晒されては、反撃に移る余裕もなくなる。キョーコは、ただただ恐怖で固まっていた。そんな硬直状態で、蓮に強く抱きしめられ……というより拘束されたのだから、苦しくて仕方がなかった。
なんとか逃げ出したくて、蓮との間に隙間を作ろうにも、腕が自由にならない。
それでも、どうにかカバンを握りこんでいた片手を動かし、密着している身体との狭い隙間を必死に移動させた。
……あっ、当たってる。
蓮は気づいた。キョーコは身体の前に揃える様にした両手でカバンを握りしめている。二人の身体それぞれの中央に位置するキョーコのそのカバンを持つ手が、己の足の付け根より下にあることに、ついウッカリ気づいてしまった。
手の甲が微妙な位置にあることに気づいてしまえば、幾ら腕の中にいるのが「好きな女性ではない」と思い込もうとしても、無理というモノ。
一度意識してしまえば、それはもう囚われたも同然だった。
キョーコは、逃げたくて、少しでも隙間を作りたくて、必死に片手を上にあげ、蓮との間でつっぱろうとしていた。カバンを握りこんでいた片方の手を離し、徐々に上に引き上げつつ、回転させながら、手のひらを開ける。
キョーコはただ、腕を引き上げたいだけだ。でもそれは、男のソコを刺激しているも同然な危険な行為だったのだ。
本人には動かす気の無い、カバンを握る手やカバンそのものも、男を刺激する危険な道具となっていた。
「…んっ!」
その時、キョーコの頭上から、おかしな声が聞こえた。しかし、吐息のようなそれに疑問を抱く間もなく、キョーコはもっと大きな不思議に遭遇していた。
「え?なんか動いて?」
カバンを握っている手の甲に感じた異変。無意識にではあるが、上にあげようと頑張っている手の平で、その異変を確認する。
「んっ、はっ!」
意識しまくっていた股間を撫で上げられた蓮は堪らず、声をあげた。
二人の間に沈黙が訪れた。自然と合わさった視線だったが、キョーコからの視線は「何?今のは何なの?」という疑問を抱えたもので、蓮のソレには野生動物の……雄の本能が滲み出ていた。
次の瞬間、先程までの怖さとは種類が違う「頭から食べられてしまう!」という生物としての恐怖が、キョーコを襲った。
……今すぐ逃げないと、やられる!!
自分が置かれた状況をちゃんと把握できていなくとも、とにかく逃げようと、キョーコはセンセイに叩き込まれた数々の教えを走馬燈のように順番に思い返した。どれを選べば正解なのかはわからないが、逃げ出す隙ができれば何でも良いと、頭に浮かんだ台詞を口にした。
「 ツルガサン、もしかして……あの……………………ちゃったんですか? 」
これは、センセイが色々と話してくれた中の…そう!確か最初の方。
2番目だか3番目だか4番目あたりに言ってくれたことだったと記憶している。
台詞のポイントは何を言ってるのかわからないように、しかし、意味深に呟くこと。
次に、腕でも胸でもどこでも良いので、相手の身体のどこかを手のひらで、下から上に、もしくは上から下に撫で上げる。
キョーコの腕の可動範囲は狭い。自然と蓮のデンジャラスゾーンを下から上に撫でることになった。
勿論、そんなことをされた蓮が無事なわけがない。
「 んはっ!も、最上さん、最上さん…! 」
蓮の様子がどうにもおかしいのは、キョーコにもわかった。だけど、今はおかしいぐらいの方が有難いのだ。
動かした手の中で何かが跳ねたが、速やかに作戦を実行し、速攻で逃げなければならないキョーコは、深く考えることを拒否し、用意された大事なセリフを口にする。
「 イヤダ、ツルガサン…シンジラレナイ…ドウシテ…ヤダ、ナンデ、ナニ……? 」
「 ご、ごめん!」
そう蓮が叫んだ瞬間、キョーコは自由の身となった。
そして、蓮は何故か、キョーコに背中を向けた。
それを合図に、キョーコはその場から逃げ去ったのだった。
第7話に続く。