※基本的に水曜更新。今日木曜だけど。


 気がつくと、白い何かが広がっている。
 しばらくして、それが天井だとわかる。
 ここは何処だろう。
 確か私は、ローレライから貰った薬を海から城へとつながる階段で飲んだ。
 それから気を失ってしまって、あれからどうしたんだろう。
 足元に微かな違和感を感じる。
 起き上がって、布団をめくってみると、ひれが足になっていて、ヒラヒラした白い布が足をおおっている。
 いつの間にか、服を着せられている。
 ちゃんと人間になれたんだ。
 起き上がり、部屋全体を見渡すと、シンプルだけどお洒落なタンスと小物が乗った棚、私の身長ぐらいある鏡などがあった。

 話で聞いた事がある物が沢山あったけど、同じくらい話に聞いた事すらない物も沢山ある。
 部屋にある一つ一つの物を触って感触を確かめて、使ってみる。
 見るもの、触る物すべてが真新しくて楽しい。
 視線を感じた気がして、ドアの方に目をやると、あの人が、王子様が居た。
「その……具合はどうだ?」
 鼓動が速くなるのと顔が熱くなるのを感じながら、私は頷く。
「俺は、エリック。この国の王子だ。どうしてあんなところに? 海で溺れたのか?」
 貴方に会いに人間になりました。と言おうとしたけど、声が出ない。
 私は、ローレライに声を渡してしまったのを思い出した。
 私は、仕方なく首を振った。
 彼は、不思議そうな顔をしながら訊く。
「名前は? どこから来たんだ?」
 私は、何も答えられなかった。
 王子が一瞬はっとしたような表情をして、それから訊く。
「もしかして……喋れないのか?」
 私は頷く。
「家へは帰れるか?」
 その問いに私は首を振った。
 もう人間となった私は、海へと帰ることが出来ないし、帰る気など無い。
「とりあえず、お前の身元はこっちで調べてみる。
 その間、この城で自由に過ごしてもらっていい。何か呼び方を決めたほうがいいな。ええっと……」
 しばらく考えてから王子様は、
「……アクアで、いいか?」
 そう言った。
 私は、アクアって綺麗な響きの名前だと思い、喜んで頷いた