お昼ごはんを食べ終えると、私達は洞窟の奥へと向かって歩いた。
 岩だけに囲まれた景色が続く、洞窟の中。
 冷えた空気が心地よかった。
 それらを楽しみながら、私はエリックの後をついていく。
 しばらく歩くと、緑のじゅうたんが見える。
 そこは、小さな草原。
 その上の天井が吹き抜けていて夕焼けが差し込む。
 夕日に輝く草がとても綺麗だった。
「着いたぞ。ここが俺のお気に入りの場所」
 エリックが言った。私は、とても素敵な場所だと思った。
 天井から差し込む光が幻想的で、草が青々と茂っていて、とても素敵な場所。
 私は、一人草原の中へ入っていく。
 初めて感じる草の感触が、冷たくて気持ちがいい。
 ふと、何か暖かい物が触れる感触と一緒に、目の前が暗くなる。
 エリックの手が、私の両目をおおってる。
 不思議に思い、後ろを見ようと首を上げる。
 すると、
「少し待ってろ。絶対びっくりするから」
 エリックの声が上からした。
 ほんの少し顔が熱くなるのを感じながら、前を向いてエリックが手を離すのを待つ。
 しばらくして、目に入ってくる光の量が減ったのに気がつく。それとほぼ同時に、エリックが手を離す。
 開けた視界の中で、白い花が月に照らされて咲いていた。
 草原が、白い小さな花の花畑になっている。
 月明かりに照らされて、花は綺麗に咲く。
 足元が、白で埋め尽くされる。
「小さい頃、迷子になって歩き回ってた時に見つけたんだ。

 月光草といって、月の光に照らされて咲く夏の花らしい。 この辺じゃこの場所ぐらいでしか咲かない。珍しい花だ。

 綺麗だろ?」
 その光景に見とれる私に後ろでエリックが言った。
 私は、ふりかえり頷いた。
 とても綺麗で素敵な場所だと思う。
 月の明りがとても幻想的で優しくて、その光に咲く花がとても可愛くて美しい。

 部屋に戻り、一人テラスから海を眺めていと、誰かが私を呼んだ。
「アリエル」
 その声に私は聞き覚えがある。
 間違いなく、アリスタ姉ちゃんの声だ。
 テラスの下を見ると、アリスタお姉ちゃんが居た。
「なぁに、勝手に人間になってんのよ。挙句は、人間と暮らしてるし」
 ごめんね。と私は心の中で思う。
「ま、なっちゃったもんはしょうがないわ。で、どうなの? 
元気にやってる? 嫌な思いしてない?」
 私は、大きく頷いた。アリスタお姉様は何故かそれに眉をひそめる。
「あんたの思考回路は昔から理解できないわ。人間なんかのどこがいいのよ。大体あいつらは……」
 何やらぶつぶつ呟いた後、
「まっ、あんたがそれでいいならいいわ。王子と幸せになりなさいよ。間違っても泡になんかなったら承知しないから」
 私は再び大きく頷いた。