一番はじめに気付いたのは、鎖骨の上の謎のしこり。

小さなものが右の鎖骨にちょこっとできた。


小さなものだったし、
その時はたいして気にもせず、

今度皮膚科で聞いてみよう、位にしか思わなかった。

もともとアレルギー体質で、謎のできものは珍しくなかったから。


それよりも月末のスペイン旅行のことが楽しみだった。


東洋医学の先生が言うには、
がんというのは正常細胞が突然変異を起こして

がん化するということで、

遺伝要因よりも、ストレスが引き金になるそうだ。

ストレス…。


自分を殺そうとするストレスってよっぽどだな。

今思うと恋愛にしろ家族にしろ罪悪感でがんじがらめになっていたかもしれない。


夏に全てを断つという決断ができたものの、
罪悪感はそう簡単になくなるものではなかったし、

自分の気持ちとは違う方向にエネルギーを使ってた。


いっそ自分が余命何ヵ月なら、
素直に生きられるのにって思った。
これがいけなかったかな。

想念が形になるのなら私はそれを形にしてしまったのかもしれない。


家族もこじれていて、

母が精神的に参っている様子であることがとにかく負担だった。


母が長年放置してしてる問題は家族を圧迫していて、

誰もどうにもできなかった。


家をなんとかするまでは自分が結婚もできないって思いつめてた。


でもなすこと全て悪い方向に転がっていくばかり。


そしてやっと目が覚めた。

母親の問題も、
家族の問題も
全て当人たちの問題だと。

私は人の人生まで背負う必要はなくて、
自分の人生が豊かになるように
一生懸命いきるしかないんだと。
気づいた。


そして結婚を決めた。
スペインから戻って、
本当の気持ちにやっと向き合えた。


そして長年付き合って、
結婚をきめられなくて、
別れを告げた彼のところに

婚姻届をもって会いに行った。


でもその時、
私の身体には病魔に侵されていたんだ。