先週の金曜日(3月1日)にNHK-Eテレで放送された「バリバラ×摂食障害」を見ての感想です。うろ覚えの部分が多いですがあくまで個人の感想なのでご容赦を。

<放送内容>

・小学校時代のいじめが原因で拒食→過食へ移行した女性(25歳・派遣)。過食に陥ってからはうつ状態になり、5年間の引き籠り生活を送る
・現在でも、「食べても許せる食材」が決まっており、食事の際には罪悪感が付きまとう
・過食の勢いは穏やかになったが、完全に症状が無くなったわけではない

・転機は19歳の時。元々音楽が好きだったこともあり、ジャズバー(?)で歌ってみたところ、歌うことが新たな希望となった
・写真を撮ったり、音楽に打ち込むなど「自分を表現」することでストレスを発散できるようになった

・完全に回復した、とは言えないが、精神的に少し楽になった


・8年間の過食症状に悩み、誰にも相談できず苦しんでいた女性(家庭あり)
・ノートに自分の思いを書くことで自己を客観視
・染みついた偏見(痩せていなければ自分の価値が下がる、など)を表現することで、自分を苦しめる思考に気づき、受け入れていく

・「痩せたい気持ち」が完全になくなったわけではないものの、今では家族と普通に食事を楽しめるようになった

・家族も辛い……「自助会」「家族の会」が全国に存在し、悩みを話し合える場がある
・「子供の力」を信じることが一番大切
・心配するあまりあれやこれやと口出ししたくなる気持ちは当然だが、そこを堪えて「子供のことを信頼出来るようになる」ことが必要

<感想>

・当事者たちのエピソードに、「親」「配偶者」「恋人」など「重要な他者」との関係について言及されていないところが不満

(心配性で過保護な親、「この子はしっかりしている」と放置された子供、無神経で無関心な配偶者、恋人……)

・摂食障害は患者が多い病気であり、対人関係療法などエビデンスに基づいた治療法がある程度確立されているにもかかわらず、本放送では治療法が「患者自身が試行錯誤を繰り返してたどり着いたもの」に限定されており、「患者自身の運と努力に依存」した方法しか紹介されなかったのは残念

・「自分の気持ちをノートに書いて表現する」はとても良い方法だと思うが、これを認知行動療法として捉えるのは少々不安。完璧主義に陥りがちな摂食障害患者には、ストイックに自己の客観視と矯正を強いる認知行動療法はあまり合わない気がする

・自分の感情にそもそも気が付いていない
・辛い時に助けを求めることを知らない、当然助けの求め方もわからない
・他人は冷たく、偏見に満ちており、社会は悪いものだと誤解したままおびえ続ける


・症状によって見た目が大きく変化してしまう摂食障害は、どうしてもセンセーショナルな病気として捉えられる傾向があり、偏見を持って見られることも多い。本放送で名前と顔を出して出演してくれた患者の方々は本当に勇気があり、尊敬する

・しかし、摂食障害は未だ社会からの偏見が大きい病気なので、人前でのカミングアウトは出来る限り避けた方が良い、と私個人は思う。偏見から受ける中傷は百害あって一利なしである


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 さすがNHKの教育番組であるだけあって、こういう番組にありがちな、体型の変化などを晒して煽る手法がほとんどなかったのが良かったです。また、深刻になりすぎず明るいトーンで番組が進行していったのも好感が持てました。

 ただ、前述したように「摂食障害の核」と言える「家族などとの関係の歪み」について一切の言及が無かったのは、片手落ちに感じました。ここは、外部から指摘されないと患者自身は非常に気付きにくい部分であるので、この部分こそこういう番組で扱ってほしかったです。

 放送を見逃した方も、アフタートークや姉妹番組の「バリバラR(ラジオ)」の書き起こしなどで、放送内容を読むことが出来ます。

 「結局、自分との戦い、と思わせてる社会が問題やねん。戦う必要はない。ほんとはそこに気付いて欲しい。その生きづらさは何か?ということを冷静に考えていくことが大切で。自分との戦いはあるんだけど、それは自分だけとの戦いじゃないよ!って。そこで頑張る必要はないよ、って」
―玉木幸則




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